ヱビスブランド×東京藝術大学デザイン科による「福ヱビス共創プロジェクト」。2025年の「福ヱビス」は、「たのしんでるから、世界は変えられる。」というブランドテーマを実現する舞台として、夢に向かう東京藝術大学デザイン科の学生9名とともに創り上げられました。
ヱビスと同じく135年以上の歴史を持ち、多くの優れた芸術家を育成・輩出してきた東京藝術大学の現役学生アーティストが「ヱビスとは」「祝いの形」について考え、たのしみながら構想・表現しました。
思い思いに、アートを完成させた学生たち。選考会には、慧眼の審査員たちを唸らせるような素晴らしい作品ばかりが出そろいました。今回は、選考会で「福ヱビス」のデザインに選ばれた「泡糸 -泡がほどく、こころの糸、つながる祝い-」を制作した川鍋桃奈さんにインタビュー。神秘的な世界観に思わず引き込まれるような美しいテキスタイルはどのように生まれたのか。コンセプトや制作の過程、作品作りを通して感じたことを伺いました。
川鍋桃奈(かわなべもな)
東京藝術大学ではグラフィックやプロダクトなどのデザインを学びながら、デザインとアートの境目を探るようなさまざまな表現の形を探っている。
人と人とのつながり=糸に、ヱビスのイメージを融合。特別なヱビスビールをテキスタイルで表現
- まずは、「福ヱビス」にデザインされることが決まった川鍋さんのアートについて教えてください。今回はテキスタイル作品を制作されましたが、テーマである“祝いの形”をどのように表現したのでしょうか?
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このアートは、さまざまな糸によるテキスタイルと、そのテキスタイルを自身がまとった写真を用いたグラフィックによって成り立っています。“ヱビスらしさ”をヱビスビールがもつ王道感を黄金の色で表現しながら、そこに少し新しい風を吹かせたいなと思い、象徴的なパッケージの線対称の感じを少し崩してあえて左右アシンメトリーな要素を加えてみたんです。“糸の結びとほぐし”のようなイメージで少し左右に差をつけて。王道感を保ちつつも、“いつものヱビスビールとちょっと違う特別なヱビスビール”をデザインで表現できたらいいなと思って制作しました。
*テキスタイル‥糸や繊維を織ったり編んだりすることによって作られた布や染織、刺繍などの技法を駆使して表現する手法
- 美しいグラデーションや刺繍など、1つの作品の中に多くの見どころがありますが、どのように制作されたのでしょうか?
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パソコンで作ったデータを布にプリントをして、その上からアクリル絵の具などで加筆したり、ミシンで刺繍をしたり、布を切ったりという加工をしています。いろいろな種類の布を試したなかで、今回は少し硬めのポリエステルの布を選びました。その結果、特にグラデーションが綺麗に出せ、布を切って加工する作業もイメージ通りにできたので、実験がうまくいったなと満足しています。試行錯誤しながら作業を進める時間はとてもたのしかったです。
- 完成した衣装を川鍋さん自らがモデルとなって着用していますが、撮影のスタイルやポージングなどもとても新鮮で神秘的です。
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“ヱビスビールの新しい祝いの装い”にはどんな姿勢がふさわしいか、伝統的な日本の着物では絶対にしないような姿勢をしてみたらどんな面白い服の形になるのか、など考えながらとてもたのしい実験ができました。カメラマンさんにイメージを伝えて、技術的なアドバイスもいただきながら、3時間くらいかけてじっくり撮影しています。
たのしみながら“実験”を繰り返し、今までにないデザインや見せ方を生み出す
- 今回のプロジェクトへの参加が決まった時の心境はいかがでしたか?
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このようなプロジェクトに参加できる機会はなかなかないので、貴重な経験ができることがうれしく、同時にワクワクしました。ヱビスビールに対しては高級感やどっしりとした風格を感じていましたが、ヱビスビールについて学ぶなかで、パッケージデザインはその歴史や威厳、王道感を保ちながらも少しずつ変化していることを知りとても興味を惹かれました。
- 今回は、テキスタイルという形で制作し、それを自身で身にまとった写真も作品として発表され、その意外性などから審査員の興味を多く集めていたかと思います。テキスタイルという形式を選択したのはなぜでしょうか?
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今回“自分の好きな表現を作品として最終提出する”という形式でしたので、なにか自分らしさを発信できればいいなと思っていました。どのような作品にするのか考えるなかで、インスピレーションを受けたのは、YEBISU BREWERY TOKYOで手にしたヱビスビールです。グラスに残った泡のかたちが美しく、他のビールにはないような滑らかな感じから着想を得ました。
他の学生とともにYEBISU BREWERY TOKYOにてヱビスについて学ぶ そのヱビスビールのなめらかな泡、黄金の美しさといった要素に、テーマである“祝いの形”の表現を掛け合わせました。自分自身が体験してきた祝いの場は、人の声が混ざり合う環境や笑顔が絶えない環境。そういう人と人のつながりが“糸”に例えられるなと感じて、テキスタイルとそれを自分自身がまとった形で表現したんです。サッポロビールの方たちとお話した際にも、人と人のつながりをとても大切にしているのを強く感じたので、そこもリンクさせています。テキスタイル自体は大学の課題で挑戦したことがあり、自分としては身近な手法でした。
それぞれの想いを形にする難しさとたのしさがこれからのクリエイションにつながる
- プロジェクトを通して、新しい発見はありましたか?
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普段は基本的に自分の中にある引き出しだけで制作しているのですが、今回はヱビスビールやサッポロビールさんのことをリサーチしたうえで自分自身の作風と重ねていく必要があり、それがとても新鮮でたのしかったです。自分だけで制作しているときでは絶対に出ないような表現ができたと感じています。
それと同時に、自分だけでは完結できないことの難しさを実感しました。関わる人とコミュニケーションをとりながら制作を進めて、自分の考えを人に説明できないといけない。今回は作品のテーマやインスピレーションを受けた物事について言語化して、テキストやプレゼンテーションで人に伝えながら進めていく流れだったので特にそう感じます。これまでの制作よりも言葉や説明を考える時間が多く、そこに苦労しましたし、とてもいい学びになりました。
実際の2025年の「福ヱビス」デザイン
アート完成後もヱビスのデザイナーと試行錯誤して色味の調整などを行なった
人と人との懸け橋となるような、笑顔を届けられるデザインをこれからも作り続けたい
- 今回のプロジェクトを通して、将来に向けて見えてきたものはありますか?
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今はまだ自分のデザインが世の中に出るということに実感が湧いていないのが正直なところ(笑)。でも、自分が発信したものが、いろいろな家庭や人と人とのつながりの一貫になるというのはすごく素敵だし、よろこばしいことですよね。将来もデザインを通して人と人とをつないだり、笑顔を届けたりできるような仕事に携われたらいいなと、プロジェクトが終わった今すごく感じています。
- 川鍋さんがデザインした「福ヱビス」を手にとった方へメッセージをお願いします。
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私自身、今回のプロジェクトを通して、ヱビスビールはたくさんのこだわりと様々な人の想いが詰まったとても素敵なビールだと改めて感じていて。今回のデザインを手に取った方にも、そのヱビスらしさを感じていただきつつ、今までにない特別な“祝いの形”として新鮮な目で見ていただけたらうれしいです。たくさんの人に自分のデザインが届いたらいいなと思っています。

