meets TAITTINGER

Ăn Đi × Yuri Nomura

野村 友里が体験する「食べるシャンパン。」
ペアリングによって生まれるマッチングの“妙”と余韻への意識。

[NEW PAIRING OF CHAMPAGNE・Ăn Đi/東京都渋谷区]

ワイン&フードシーンの第一線に立つトップランナーを迎えて。

「最高級クラスのブラン・ド・ブランの中でも、このシャンパーニュは香りの開きが秀逸です。抜栓後はカフェモカのようなコーヒー系のフレーバーがわずかに感じられ、ミルキーな香りも持ち合わせる。何よりハイクオリティなシャンパーニュには必ず感じられる、なめらかできめ細やかな泡も兼ね備えています」と饒舌に語る、大越 基裕氏。東京・外苑前『Ăn Đi』のオーナーであり、ワインテイスター・ソムリエとして活躍する大越氏が「このシャンパーニュ」と讃えるのは、大手シャンパーニュ・メゾン『テタンジェ』が誇るトップキュベ「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」。オーナー兼経営者であるテタンジェ・ファミリーの精神を継承し、シャンパーニュ地方の中でも最上クラスの土壌を誇る約288haもの自社畑で栽培され、テロワールを限りなく引き出したシャルドネ種100%。口当たりは極めてスムースで、生き生きとしたアロマ、グレープフルーツやスパイスのニュアンスを感じさせる洗練を極めた味わいは、料理とペアリングすることにより「食べるシャンパン。」として新たな可能性をもたらしてくれます。

この「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」に合わせて、大越氏が提案した料理をシェフの内藤 千博氏がアレンジ。テイスターにお迎えしたのは、料理人でありフードディレクターの野村 友里さん。豊富な種類のワインとベトナム料理が評判のレストランで体験した新発想のペアリングが何をもたらすのか。美味しさの感動を呼び起こすアプローチに迫ります。

  • 味わいのバランスが完成されたひとつの料理として、ライスペーパーを巻き込む。
  • ココナッツミルクと焼きナスのソースを。スモーキーなニュアンスもシャンパーニュを意識したもの。
  • アジア料理好きという内藤 千博シェフ。フレンチの名店で磨き上げた経験と感性を注ぐ。

ペアリングの新たなジャンルを拓いた、モダンベトナミーズの可能性。

東京・外苑前『Ăn Đi』は、ワインとヘルシーな東南アジア料理のペアリングが堪能できるモダンベトナミーズレストラン。長年フレンチをバックグラウンドにしてきた大越氏がなぜベトナム料理だったのか、その理由を明かします。
「最初からやりたかったというよりも、ペアリングの世界観をもっとたくさんの方々に楽しんで欲しかったのが理由です。世界的に料理がライト化し、オーガニックへの意識も高く、素材感を伝えるスタイルにシフトしています。料理も軽くモダンになっている中、何か新しいジャンルが提案出来ないかと考えた時、アジアが見えてきた。ベトナム料理は辛さも控えめで、野菜もたくさん使用するので、レストランレベルの料理に高めたら面白いと思ったのです」。

大越氏のビジョンや思いを料理で具現化するのが、西麻布のフレンチレストラン『レフェルヴェソンス』の元スーシェフで、アジア料理にも精通する内藤 千博氏。使用する食材や調味料の9割が国内産。和の素材をメインに、洗練された料理と選りすぐりのワインで本国ベトナムに先駆ける現代的なスタイルを実現しています。
今回、大越氏と内藤シェフに「ひらめき」を与えたのは、プレステージ・シャンパーニュ「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」。料理はベトナム料理の定番「生春巻き」を『Ăn Đi』流にアレンジ。レタス、ニンジン、オクラ、ミョウガのピクルスにマンゴー、ディルとミントといったハーブに、秋田県で作られる魚醤「しょっつる」と真空調理したアワビ、卵とオイルとで乳化させた肝のソースをライスペーパーで巻き込んだひと品。ココナッツミルクとナスのペーストもソースに添えました。

料理の意図について内藤シェフは「ライスペーパーで葉物を包む生春巻きは、水分が多く、味が繊細すぎてもぼやけてしまいます。主素材には味や香りがある程度強いものを加え、何を食べたかわかるようにしています」と話す。
「例えば、カニのように海の幸のフレーバーが強すぎても難しい。シャンパーニュはとても繊細なので、存在感はありながらフレーバーは強すぎないアワビのような食材がベストです。私たちは素材をただ巻いてソースで食べさせるのではなく、味のバランスを先に完成させてしまう。ひとつの料理を巻いているという感覚です」と、大越氏。「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」だからこそ結実したアプローチ。料理と合わせることで美味しさが倍増する「食べるシャンパン。」が、クリエイションを掻き立てるようです。

味のバランスを図り、後味にシャンパーニュをいかに寄り添わせるか。

「シャンパーニュは香りが素晴らしいです。とても華やか。ふわっと気持ちが上がります。生春巻きは意外な組み合わせですが、すごく美味しい。ソースがなくても肝の苦みやアワビのテクスチャーが後味に感じられるし、素材感が増しますね」と言葉を紡ぐ、野村 友里さん。

「あくまで、シャンパーニュに寄せるためのソース。ソースはソースで世界観を作っておくことで一体感が楽しめます。フレンチの場合、アミューズにテクスチャーのあるムースがあったり、酸のあるジュレ系があったり、チーズを混ぜたシュー皮・グージェールのようにクリスピーな食感だったり、シャンパーニュを意識した小料理が最初にサーブされます。今回の私たちもそういうアプローチ。"コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン"には少し塩気を感じさせるので、海の幸との相性がいいと感じています。焼きナスのピューレもスモーキー感が出ていて、イースティなシャンパーニュの風味を引き立てる。そういう部分でもシャンパーニュの雰囲気が作れれば」と語る、大越氏。

ペアリングの意図を聞き、納得の様子の野村さん。さらに言葉を続けます。
「この生春巻きのように包んで食べるのが好き。完結した料理がひと口で食べられる手軽さに、飲み物とも相性が抜群。それでいて、それぞれパーツをバラしても成立する。贅沢ですよね。今回改めて、面白いと感じました」。

「ペアリングは、料理を食べた後に何を合わせるか。後味のフレーバーにアプローチするのが基本ですね。例えば酸味に酸味を合わせる、逆に塩気に甘みを当てる、あるいは五味を揃える考え方もある。テクスチャーにしてもなめらかなもの、あるいは温かい料理には凝縮感のあるものやアルコールを感じさせるものに寄せるなど、ハーモニーが楽しめるようバランスを図ります。組み合わせはそれこそ無限に広がる」と、大越氏。最終的には違いを尊重するように仕上がっていればベスト。柔軟でありながら、確固たるフィロソフィがそこにはあるのです。

五味を超えた感動をも生み出す、プレステージ・シャンパーニュ。

上質なシャンパーニュは気分を高揚させ、人を饒舌にさせる効果もあるようです。
「大体、ひと口目で美味しいと感じるけれど、食べ終えた後がすごく大事。酸味なのか、鉄分なのか、あるいは油脂なのか。口の中に何が残るのか。意外なフレーバーが強みとなって残ることもある。料理の味だけで完結させるのではなく、後味に何を合わせるかでまた違う美味しさが開く。そこがペアリングの楽しさであり、面白さ。意外な感動があるので、どこに連れていってくれるのか、乗っかっていきたい(笑)」と微笑む、野村さん。

より深く、より広く、ペアリングの魅力を感じ取った野村さんの反応に、大越氏もレスポンスします。
「その通りです。後味に残る余韻は、必ずしも主食材とは限らない。料理の形態や食べ方によっても変わります。だからこそサービスも“ソースをたっぷりつけてお召し上がりください”という言葉が必要な時もある。楽しんでもらいたいのは、ペアリングの“妙”。料理だけでもワインだけでも築けない世界観を堪能することも、レストランにおける別の楽しみだと思っています」と、大越氏。

料理人として、見た目や食材の組み合わせだけでなく、後味にも重点を置くという野村さん。五感以外の部分を引き出し、食べ手がどう感じてくれるのか、料理とお酒を介したコミュニケーションも魅力であり「感性のやりとり」と言います。「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」によってもたらされた、マッチングの妙と後味への意識。ペアリングの新たな境地を拓く、充足した時間となりました。

  • オーナー大越氏のアイデアを再現性の高い料理で表現するシェフの内藤氏。これ以上ないペアリングはこのタッグがあってこそ。
  • 「香りが素晴らしい。大越さんのように解説してくれると、より深く味わえます」と、野村さん。
  • 料理とシャンパーニュ、それぞれの方向からペアリングについて闊達に語る3人。