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注目トレンド更新日:2019年11月27日

都市部で台頭! 天ぷら酒場の業態力

大衆酒場やスタンド酒場(立ち飲み屋)などのヒットの流れを受け、低価格の居酒屋業態の開発が勢いを増している。このフィールドで顕著なのは、“何でもある”幅広いメニュー構成で勝負する「総合型」と、明確な売りものをもつ「専門型」の二極化だ。いまや専門型の顔ぶれはじつに多彩。そのなかで大注目なのが、都市部でじわじわと存在感を増している「天ぷら酒場」だ。「すし」と並んでリッチなイメージのある「天ぷら」を、低価格の居酒屋という形に上手に落とし込み、コンセプトの独自性や新鮮味で差別化を図るのはもちろん、一部の店はイノベーションによる「職人不要」「高効率」の仕組みづくりで多店化も推し進めている。今回は、高いポテンシャルを秘めた「天ぷら酒場」の好事例を紹介しよう。

天ぷらの調理に集中できるメニュー構成

喜久や 恵比寿店

 揚げたての天ぷらをスタンディングで提供する新鮮味のあるコンセプトでヒットをとばしている「喜久や」。主力の天ぷらは、「人気五品」「旬の食材」「変わりダネ」「野菜天」「海鮮天」など7つのカテゴリーで計35品前後(価格レンジ150~500円)をそろえ、年6回のメニュー改定で旬を打ち出している。天ぷらの売れ筋は「海老」1尾300円と「大根」200円で、天ぷら以外には箸休めとなるつまみメニュー17品などをそろえる。天ぷらはすべてツーオーダーで揚げて提供するが、高い品質を維持するためのポイントがエバートン社製の分子調理器「Dr.Fry」だ。これは油の中に電波振動を起こして食材の水分を逃さずに揚げることができる装置で、この機器の導入と徹底した温度&時間管理の合わせ技により、職人技に頼ることなくハイクオリティな天ぷらを提供している。また、“職人レス”のオペレーションなどによって人件費率を25%に抑え、F/Lコスト50%という高収益モデルを確立。この仕組みを武器に多店化を図り、2015年10月の1号店(恵比寿店)の開業以降、店数は5店まで伸長。客単価3500円で月商1000万円を弾き出す恵比寿店をはじめ、各店ともに売上げも好調だ。

東京都渋谷区恵比寿4-6-1 恵比寿MFビル 1F
●03-5422-9077
営業時間/月曜:16時~23時(フードL.O.22時、ドリンクL.O.22時30分)、火曜~金曜:16時~翌0時(同23時、同23時30分)、土曜:13時~翌0時(同23時、同23時30分)、日曜・祝日:13時~23時(同22時、同22時30分)
年末年始休み
店舗規模/13坪(スタンディング最大40人収容)

スタイリッシュな空間と、天ぷら店とは思えないクレンリネスの高さも人気の秘訣。写真の恵比寿店は白木のカウンターを配したデザインで、カウンターの高さは女性に合わせて105cmとやや低めに設定している。そうした工夫も相まって、来店客の男女比は3.5対6.5と女性客の獲得に成功。なお、アルコールの売上げ比率は40%を確保している。

天ぷら さいとう

 2016年1月にオープンした東京・神田の「天ぷら さいとう」は、昼は天ぷら定食、夜は天ぷら酒場という二毛作の業態づくりが特徴。経営母体のHandS㈱は、「揚げものは生地や揚げ油の配合、仕込みや調理方法などをマニュアル化しておければ料理人でなくても安定した品質の商品が提供できる」との考えから、この業態の開発に着手した。昼は「海鮮定食」950円や「肉天定食」850円など定食7品を680~1100円の価格レンジでそろえる。いずれの定食も5~7種類の天ダネを揚げたてで提供するが、その提供方法がユニークだ。まず野菜天などの“サブの天ぷら”を皿盛りで提供し、頃合いを見計らって魚介や肉を使った“メインの天ぷら”をサーブ。天ぷらを2回に分けて提供することで、お客は熱々の状態で味わうことができるのだ。また、サブの天ぷらはほとんどの定食で共通の内容とし、作業の効率化にもつなげている。一方、夜の天ぷらメニューは約30品。単品注文が主体で、サイドメニュー23品を含めて290円の均一価格で提供。アルコールも計25種類を30分500円の飲み放題とするなど、値ごろ感をアピール。客単価は昼920円、夜2800円で推移しており、12坪23席で月商300万円を記録している。

東京都千代田区神田富山町28 田澤神田ビル1F
●03-5207-2789
営業時間/11時30分~14時30分、17時30分~23時(土曜はディナーのみ) 日曜定休
店舗規模/12坪25席

マニュアルの整備とオペレーションの工夫によって、原価率、人件費率ともに28%の高収益モデルを構築。夜はフードの均一価格やアルコールの飲み放題などの施策を打ち出し、昼夜の売上げ比率3対7、夜のアルコール売上げ比率は53%と、酒場的なニーズもがっちりとキャッチ。神田店は30代~50代が主客層で、来店客の男女比は昼6対4、夜8対2。

串天ぷらスタンド ソル兵衛

 都市部で新規開業が増えている「天ぷら酒場」の流れをいち早くキャッチし、石川・金沢に2018年11月にオープンしたのが「串天ぷらスタンド ソル兵衛」だ。特徴的なのは、天ぷらを“串スタイル”で提供すること。串に刺すことで気軽さをわかりやすく表現するとともに、1品あたりの単価を抑えるというのがその狙いだ。天ぷらは30品をそろえ、「野菜天」は100円~、売れ筋の「海老天」は280円とリーズナブルな価格に設定。1日60本を売る「びのびチーズ天」4種類100円~や「トマトとチーズのカプレーゼ」230円、「漬けマグロの海苔包み」280円、「ポルチーニ茸とゴルゴンゾーラ」480円など創作性の高い天ぷらメニューも豊富で、また「鶏から天~プレーン~」3個300円はあえて串に刺さず、鶏の唐揚げを彷彿とさせる商品に仕立てるなど、柔軟な姿勢で商品開発に取り組んでいる。一方でサイドメニューは、クイック提供可能な「おつまみ」と、天ぷら丼や天そばなどの「〆めし」に絞り、天ぷら専門店というコンセプトを明確に打ち出すとともに、キッチンの調理作業を天ぷらに集中。20代~30代前半の若い世代を中心に集客し、客単価3200円で月商320万円を売り上げている。

石川県金沢市木倉町1-1
●076-224-1120
営業時間/17時~23時(L.O.) 月曜定休(月曜が祝日の場合は翌火曜休)
店舗規模/10坪24席

ポップなデザインのタイルを貼ったカウンター席を中心に客席をレイアウト。来店客の6~7割を女性客が占める。ドリンクは樽生サワーにソルベをのせた「ソルベサワー」が看板商品で、ジンジャーエールにソルベをのせたノンアル版も導入。SNS映えするビジュアルも相まって、ソルベシリーズは月間600杯を売るヒット商品になっている。

天ぷらの敷居を下げる“酒場目線”の発想

天ぷらを高級なイメージから脱却させるには、低価格を実現するための仕組みづくりがマストだが、第二、第三の施策も必要だ。紹介した事例では、スタンディング(立ち飲み)や串スタイル、また均一価格などを取り入れ、気軽さをより強調している。つまり、“酒場目線”の発想で、天ぷらの敷居をとことん下げているわけだ。洋のテイストを感じさせる創作天ぷらも、気軽さや楽しさを訴求する酒場らしいアイデアだろう。熟練の職人なしに良質な天ぷらを提供するための工夫とともに、酒場の機能も十分に意識した店づくりが、業態としての新鮮味を生み出しているのだ。

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