繁盛店の扉 サッポロビール 飲食店サポートサイト

[an error occurred while processing this directive]

注目トレンド更新日:2019年9月19日

一風変わった店名

「食べログ」や「ぐるなび」などネットを使っての店探しが広く定着したいま、画面に映る文字や写真の羅列のなかで、いかにして消費者の目に留まり、脳に訴えるかは、店をアピールするうえで重要なテーマだろう。仕掛けのポイントはさまざまだが、文字情報においては、店を知らしめる入口として「店名」の果たす役割は大きい。たとえば、インパクトのあるユニークな店名は、目を引くという点において優位性が高い。また、店の中身(売りものや売り方、高い・安い、フォーマル・カジュアルなど)を暗示させるキーワードを店名に盛り込むことも、消費者とのマッチングを成立させるカギとなる。今回は、一風変わった店名も話題の繁盛事例を紹介しよう。

想像力をかき立てるネーミング

とんかつは飲み物。

 2017年7月の開業直後から抜群の集客力を発揮し、客単価850円、8.1坪14席の規模で月商500万円を売り上げているとんかつ専門店「とんかつは飲み物」(東京・池袋)。経営母体は「カレーは飲み物。」を主力に飲食店を展開する日本カレーライフ協会㈱で、まず目を引くのが「カレーは飲み物。」譲りの特異な屋号。とんかつを「飲み物。」と表現するが、その「あえて」の違和感が大きなインパクトをもたらしている。また不思議な屋号から、味、お値打ち感、ボリューム感などについて想像を膨らませる人もいるだろう。メニューのネーミングも見どころだ。使用する部位をそのままメニュー名とするとんかつ専門店が多いなか、同店では肩ロース肉のとんかつは「濃厚」(定食890円~)、ヒレ下ロースを用いたものは「淡麗」(同790円~)と名付けて販売。味わいをイメージしやすいワードを使い、価格だけではなく、味の違いも商品の選択基準としてもらおうという試みだ。なお、とんかつはポーションを130gに揃え、部位によって厚さを変えて揚げ時間を4分に調整し、品質の標準化と調理負担の軽減も図っている。

東京都豊島区池袋2-53-11
●なし
営業時間/11時~16時(L.O.15時30分)、17時~22時30分(L.O.22時) 無休
店舗規模/8.1坪14席

とんかつ定食はフード注文数の7割を占め、濃厚と淡麗の注文比率は6対4。定食は10品から選べる小鉢3品が付き、このサービスも好評だ。このほか、かつ丼や牛かつなども用意。牛かつを濃厚とんかつと淡麗とんかつで挟むようにして盛り付けた「漢のミルフィーユとんかつ」も、圧倒的なボリューム感でSNSなどで話題に。

フツウニフルウツ 鎌倉駅前販売所

 「フツウニフルウツ」は、「パンとエスプレッソと」などを展開する㈱日と々とが手がけるフルーツサンド専門店。2018年6月にオープンした鎌倉駅前販売所は、客単価800円、5坪8席の規模で月商230万円を売り上げている。フルーツサンドは350~400円のワンコインをきる価格で値ごろ感を訴求。果物を主役にした商品づくりも特徴で、売れ筋1位のフツウニフルウツにはバナナやキウイなど4種類のフレッシュフルーツを1人前で計65g使い、それぞれ大ぶりにカットして味と見た目で果物の存在感を強くアピールする。フルーツサンド用に開発したパンは果物の味を引き立てるために甘さを抑え、生クリームは糖分を低くしてマスカルポーネチーズとブレンド。おやつとしてはもちろん、軽食ニーズにもマッチする商品設計だ。一方、ユニークな形状のボトルで販売する「コーヒーギュウニュウ」や「ミックスフルーツ」などのフレーバー牛乳も人気。レトロな雰囲気を醸し出すフルーツサンドやフレーバー牛乳、リーズナブルに果物を楽しめる手軽さ――そうした業態のコンセプトをユニークな屋号が見事に言い表している。

神奈川県鎌倉市小町1-3-4 丸七商店内
●0467-81-5022
営業時間/10時~18時 不定休
店舗規模/5坪8席

フルーツサンドとボトルドリンクはともにショーケースに並べて販売し、セット購入を促す。いずれも見た目にも楽しめる仕立てで、そうした商品設計がSNS拡散にもつながっている。ボトルドリンクは店内で製造。フルーツサンドに用いる果物を使って品質を高めつつ、端材を無駄なく活用して食材のロス削減にも努めている。

立ち呑み ジャックとマチルダ

 大阪市内でアルコール業態を展開する㈱クラマ計画が2016年6月にオープンした「立ち呑み ジャックとマチルダ」(大阪・福島)。一風変わった店名はスタッフのあだ名をヒントに命名したものだそう。「業態を社員全員で考え、商品構成などを現場に一任する」という経営方針のもと、店名からイメージする内外装のアイデアを出し合い、業態を具現化。「抽象的だが、それゆえに生まれるいびつさや不統一感、属人性も集客の磁力になる」というのが同社の考えだ。古民家を改装した8坪の店舗は、トタンや古木の板が継ぎ接ぎ状に貼られた独特な内装デザインで、料理長を含む社員3人で運営にあたる。フードはすべて店内調理で、地鶏や野菜などの炭火焼きを主力に約50品を用意。2人客がシェアすることを想定したポーションとしているが、一方でひとり客用の盛合せメニューも置いて使い勝手のよさを訴求する。アルコールは30種類を揃える日本酒が主力で、アルコールの売上げ比率は60%を確保している。スタンディングで最大30人収容可能な店内は1日3.5回転し、客単価1900円で月商600万円を叩き出している。

大阪府大阪市福島区福島5-6-8
●非公開
営業時間/15時~翌0時(フードL.O.23時、ドリンクL.O.23時45分) 無休
店舗規模/8坪(スタンディング最大30人収容)

大通りから一本入った細い路地に店を構える。お客の大半が目的客で、主客層は20代~50代男女。福島エリアは大衆酒場の激戦区で、飲み歩きをするお客も多いため2軒め利用もあり、平均滞席時間は60分と居酒屋業態としては比較的短い。フードの中心価格帯は290~490円、日本酒は90ml390円を基本プライスとしている。

ターゲット層の気を引くワードチョイス

ひねりのきいた独特な店名は高い集客効果を発揮する場合もあれば、新珍奇なものとして敬遠されるケースもあり、一方でオーソドックスな表現を用いた店名は「わかりやすい」と評価される場合もあれば、通り一遍なものとして情報の渦に飲み込まれてしまうこともある。大切なのは、いかにターゲット層に「気になる」「行きたい」と思わせるか、ということ。競合激化そして情報社会の現代において、店名は店のブランディングにおける重要なテーマなのだ。

過去の記事はこちら