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注目トレンド更新日:2019年5月22日

見せる(魅せる)空間のつくりかた

店舗造作や内装は外食のコンセプトづくりにおける重要な要素のひとつ。そこで求められるのが「外食ならでは」をいかに表現するかということだ。消費者の立場になってみれば、せっかく外で食事をするのに無味乾燥な空間ではつまらない、ワクワクするような楽しさが欲しい、と考えるのは当然の心理。そういう店づくりを実現することは、激化する競争を勝ち抜くためにも重要だ。今回は、お客に店の個性を強く印象づける「見せる(=魅せる)空間のつくりかた」にスポットをあてよう。

装置による多彩な演出とパフォーマンス

岩瀬串店

 コの字型のカウンターと一体化したショーケースにはピンチョスをイメージした串焼きや調理加工済みのフードが彩り豊かに並び、デパ地下のそうざい売場を思わせる。店内は照明を落とし、その中でスポット照明をあてたショーケースがひときわ存在感を主張。このユニークな演出で人気を集めるスタンドバルが、福岡・大名の「岩瀬串店」である。ショーケースは三方をガラス張りにして、どの角度からでも料理が見えるように工夫。その彩りが映えるよう、店内の色彩は白、黒、ステンレスで統一し、いっさいの装飾を排している。串焼きをはじめ、どの商品も8割がた調理を済ませてショーケースに並べるが、これは作業効率を高めるため。「串焼きは生のままより焼き色がついたほうが食欲をそそる」(岩瀬尚也店長)という考えもある。会計はキャッシュオンデリバリー方式で客単価は1500円。ショーケースの集客効果もあって12坪で1日平均130人を集客、月商500万円を売り上げる。

福岡県福岡市中央区大名1-4-22 1F  ℡092-732-7676
営業時間/18時~翌1時 水曜定休
店舗規模/12 坪スタンディング最大24人収容

陳列する商品次第で店をさまざまな姿に変えられるのがショーケースの強み。フードの柱である串焼きはオーダー後にグリラーで再加熱するが、売れ筋の「レタス巻き」250円は焼きあげ後カットしてドレッシングをかけ、シーザーサラダ仕立てにするなど陳列時と提供時で変化をつけている。

BUTAMAJIN 池袋店

 豚の塊肉を並べた高さ2m以上の特注カート。「ミートディスプレー」と称するこのインパクト抜群の装置を客席に運び、お客の目の前で塊肉をカットして鉄板で焼くというパフォーマンスを売り物にしているのが、東京・池袋の豚焼肉専門店「BUTAMAJIN」である。経営母体の㈱ベジタリアンブッチャージャパン代表取締役の村谷幸彦氏が、米国のステーキハウスで見たワゴンサービスをヒントにこの演出法を考案。独自に開発したミートディスプレーには、着席したお客から見えやすいように角度を調整した肉のディスプレイ容器と、塊肉をカットする作業台を備えつけている。サービスはテーブル担当制で、スタッフはテーブルごとに調理までを一括して担当。この作業負荷を軽減するため、お通しはセルフメイクのサラダとし、サイドメニューの前菜は提供時間3~5分のスピードメニューを中心に揃えている。客単価は5000円、17.5坪36席で月商520万円を売り上げる繁盛店だ。

東京都豊島区西池袋3-29-9 C3ビルB1F ℡03-5904-8791
営業時間/18時~23時30分(L.O.23時、土・日曜17時~) 無休
店舗規模/17.5坪36席

看板商品の「日本初! 名物のミートディスプレー」3500円~は、6種の部位の豚肉と、大豆でつくるプラントベースミートなどをセットにしたもの。豚肉は原価調整しやすい食材ということもあり原価率は23%と低い。また、バルメニューを揃えることでアルコール売上げ比率は35%を確保する。

芋蔵 栄店

 ㈱ジェイプロジェクトが展開する「芋蔵」は、約250種という膨大な焼酎の品揃えを売り物とする居酒屋。これだけの一升瓶をどう収納するかが店づくりにおけるネックとなるが、それを逆手にとって“見せる収納”としてアイコン化したのが、店のシンボルとなっている「焼酎セラー」である。エントランスから店内に通じるアプローチを挟むようにセラーを設置し、入店客に店の売りを強く訴求。ボトルは3段に並べ、認知度の高い銘柄は視認性の高い上から2段め、プレミアム商品は目線が行きやすい上段の両端に、など陳列にも工夫する。傾斜角50°で下向きに並べたボトルの注ぎ口には特注のサーバーを装着し、ワンプッシュで一定量を注げるようにするなど作業効率も高い。また、セラーを客席の間仕切りに活用している点も内装設計上の工夫のひとつ。ここで紹介した愛知・名古屋の栄店では「セラー個室席」を設置し、焼酎のボトルに囲まれた空間が人気を博している。

愛知県名古屋市中区錦3-6-35 名古屋郵船ビルB1F ℡052-950-3737
営業時間/17時~翌1時(日曜・祝日は翌0時) 無休
店舗規模/115坪130席

フードメニューはモツ鍋や馬刺しなど九州郷土料理が中心で客単価は4000円。栄店は115坪130席で月商1230万円、アルコールの売上げ比率は50%となっている。同じ名古屋市内の名古屋ルーセントタワー店や東京都内の新宿店などでは、お客が自らセラーで焼酎を注ぐセルフ式を導入している。

店づくりと「売り物」の連動がポイント

 今回紹介した事例に共通しているのは、店舗造作や内装が商品と密接に連動していることだ。これまでも、テーマレストランやエンタテインメントレストランといった業態の多くは凝りに凝った内装を売り物としてきた。しかし内装だけを差別化要素にした店は、時間の経過とともに陳腐化し飽きられる。そうではなく、店づくりがその店の売り物と連動している、言い換えれば「必然性のあるもの」であれば古びることはない。そして、それは同時に商品の付加価値を高めることにもつながるのだ。

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