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注目トレンド更新日:2019年4月17日

鶏業態の新たなアプローチ

外食ビジネスはいま、さまざまなコストの上昇に見舞われている。その最たるものが人手不足による人件費高騰だが、それをカバーするうえで重要になっているのが商品開発だ。具体的には、粗利益をしっかり確保できるメニューを開発することである。そこで浮上してくる食材が鶏だ。肉類の中では原価が低いことに加え、幅広い客層に好まれ、味つけなどアレンジの幅も広いのが鶏の強み。この食材のポテンシャルを生かし、強い経営体質を実現している事例を紹介しよう。

注目店の共通点は収益性の高さ

とり専門店 鳥さく THE OUTLETS 広島店

 しっかり食事ができるテナントが増えているショッピングセンターのフードコート内を主力立地に、鶏料理の新たな切り口で躍進しているのがビッグクリエイト㈱が展開する「とり専門店 鳥さく」である。2017年3月に1号店のイオンモールりんくう泉南店をオープンし、直営とフランチャイズで多店化。18年4月に広島県広島市にオープンしたTHE OUTLETS 広島店は10坪で月商1200万円を超える大ヒットを飛ばしている。人気の要因は徹底したボリューム志向の商品群。売上げ比率が50%にのぼる看板商品の「から揚げマウンテン定食」899円は、1個約40gの唐揚げを1人前に10~11個つける。5品を揃えるマウンテン定食シリーズはいずれも1人では食べきれないほどのボリュームで、残りを持ち帰るお客も多い。メイン食材の鶏モモ肉は店でカットするが、仕込みで出た端材を親子丼の具材などに活用。原価率は32%、人件費率25%で、営業利益率は20%をクリアするなど良好な収益体質を構築している。店の間口を広くとり、フライヤーやコンロでの調理のライブ感を訴求する店づくりも秀逸だ。

広島県広島市佐伯区石内東4-1-1 THE OUTLETS HIROSHIMA 1F  ℡082-942-3353
営業時間/10時~21時 不定休
店舗規模/10 坪

ショッピングセンターの外食テナント36店のうち2位にランクする売上げを叩き出す繁盛店。時間帯別の売上げ構成比をみると、11時~14時が57.1%、17時~20時が23.1%となっており、ランチ&ディナーに特化した業態だ。展開母体のビッグクリエイト㈱は、将来的に鳥さく100店構想を掲げている。

若鶏焼肉 とりいち

 鶏肉を味噌ダレで味つけして焼きあげる、三重・松阪の郷土料理である鶏焼肉。これをメイン商品に人気を集めているのが「若鶏焼肉 とりいち」だ。2007年11月に松阪市の郊外で1号店をオープン。地元の固定客を着実に増やし、40坪58席の規模で月商500万円を売り上げている。メイン商品の鶏みそ焼きは「若鶏」450円や「ヒネ」450円、「クビ」480円など8品を330~450円でラインアップ。このうち若鶏は三重県産ブロイラーのムネ肉とモモ肉を計150g盛りつけたもので、注文率100%と文字通りの看板商品だ。ヒネは老鶏のモモ肉、クビはセセリ肉をそれぞれ100g盛りつけるなどメニューはボリューム十分。それでいて客単価1500円というリーズナブルさが受け、ファミリーや若者グループなど幅広い客層を集めている。鶏肉はカット後にオリジナルのタレをかけるだけ。サイドメニューは若鶏の唐揚げやご飯、キムチなど12品に絞り込んでいるため、オペレーション負担は低い。原価率と人件費率を合わせて45%、営業利益率30%と収益性はきわめて高く、これを生かしてフランチャイズ展開にも着手している。

三重県松阪市伊勢寺町2640-1 ℡0598-58-4780
営業時間/11時~14時、17~20時(日曜11時~20時) 月曜
店舗規模/40坪58席

地元客に加え、週末は他府県からの目的客を吸引し、月間客数は3300人にのぼる。2017年3月には三重・名張にフランチャイズ1号店をオープン。家賃が低い郊外ロードサイドの居抜き物件が主力で、必要な設備も卓上コンロや冷蔵庫、炊飯器と限定されているため、初期投資額は約300万円ときわめて低い。

さばきたて地鶏と和酒 とりのほまれ

 東京・神田小川町に2017年3月にオープンした「さばきたて地鶏と和酒 とりのほまれ」は、17坪43席の規模で月商700万円を売り上げる繁盛店。人気の要因は店名にもある、店で丸鶏を解体して提供する丹波地鶏を使ったハイクオリティなメニューだ。目玉商品は特注の溶岩グリラーで焼きあげる丹波地鶏の焼き物。「名物! 丹波地鶏胸肉の酒粕焼き」880円は、日本酒の「醸し人九平次」の酒粕をベースにした漬け床に漬けたムネ肉を焼きあげたもの。モモ肉1枚280gを使った「丹波地鶏 もも一枚山椒焼き」980円は1日平均14食が出る売れ筋メニューだ。フードメニューは焼き物11品、一品料理13品、丹波地鶏の鍋3品など43品を200~1200円で揃えるが、王道アイテムの焼とりは置いていない。その理由を同店オーナーの日賀野俊雄氏は「串打ち作業は人手も時間もかかる。また、串に刺さずに皿に盛りつけたほうが商品の単価も上げやすい」と語るが、店で鶏をさばくという商品の付加価値の高さもあって客単価は4300円を確保する。またこのことが収益性向上にもつながり、原価率は26%に抑えられている。

東京都千代田区神田小川町3-16-3 杉野ビル1F ℡03-5577-3079
営業時間/16時~23時30分(土日・祝日は~23時) 無休
店舗規模/17坪43席

30代~40代の女性客を吸引すべく、店舗設備や什器に投資をかけて高級感を訴求。それが奏功し来店客に占める女性客の比率は5割におよぶ。アルコールでは日本酒の品揃えを充実させており、アルコール比率は55%を確保。F/Lコストは51%に抑えられ、営業利益率32%と収益性はきわめて高い。

鶏でこそ実現できる強い経営体質

 今回紹介した事例のうち「鳥さく」と「とりいち」は原価の低さを生かして商品のボリュームを訴求、「とりのほまれ」は店舗作業重視による高付加価値化と、メニュー開発のアプローチは異なっている。しかし鶏という食材の強みを十分に生かしている点は共通だ。結果として3店ともきわめて高い収益性を実現している。今年10月の消費税アップを控えて景気の冷え込みが予想されるなか、こうした強い経営体質を持つことのメリットは大きい。この点にこそ、いま鶏という食材を活用する意義があるのだ。

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