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注目トレンド更新日:2018年12月5日

地方で発見、“尖った店”の強さ

情報化社会の進展で、かつて大都市圏と地方の間で存在していたさまざまな格差がなくなってきている。外食のトレンドもそのひとつで、東京でヒットした業態がそれほど時間をおかずにローカル都市にも登場するようになってきた。いわゆる“尖った店”が地方でもめずらしくなくなっているわけだが、今回紹介するのはその中でも異色な事例。というより、大都市でもあまりお目にかかれないユニークなスタイルを打ち出しているのだ。地方にあって、外食トレンドをリードしていきそうな気鋭の店。その強さに迫ってみよう。

新たなニーズを摑む独特のスタイル

パフェ、珈琲、酒、佐藤

 そもそも店名からしてユニーク、かつ店のスタイルをそのまま表しているのが北海道・札幌の「パフェ、珈琲、酒、佐藤」だ。同地では、飲んだ後にパフェを食べる「シメパフェ」のブームで、専門店も多く登場しているが、その中でも抜群の集客力を誇るのがこの店。2016年3月のオープン以来、21坪23席が平日6回転、週末には12回転もする繁盛ぶりで、月商680万円を売り上げている。パフェは920~1480円で5品をラインアップ。定番3品、季節メニュー1品、月替りの限定パフェ1品で構成する。さらに、パフェに次ぐ柱としてコーヒーとアルコールドリンクを提供。コーヒーは市内の自家焙煎店の豆を使用してクオリティを追求。アルコールはビールをはじめワイン、ウィスキーなど7カテゴリー26種を揃える。客単価1500円、ドリンクの売上げ比率15%という数字からも、そのスタイルのユニークさがわかるだろう。経営母体の㈲アリカデザインは同店の他に札幌でカフェ「Dining&Sweets sinner」、「パフェ、珈琲、酒、佐々木」を運営し、いずれも好調な売上げをあげている。

北海道札幌市中央区南2条西1-6-1 第3広和ビル1F ℡011-233-3007
営業時間/18時~翌0時(金曜~翌2時、土曜13時~翌2時、日曜~翌3時) 月曜定休
店舗規模/21坪23席

2018年1月オープンの最新店「パフェ、珈琲、酒、佐々木」にはセントラルキッチンを併設しており、パフェに使用するアイスクリームやムースを2店分一括して仕込む。店では盛りつけるだけのため注文から提供までは5分と速い。原価率と人件費率を合わせて41%に収まる高収益体質にも注目。

広島赤焼 えん 駅西本店

 広島といえば「お好み焼き」の本場。大きな鉄板を設置し、カウンター席に座るお客の目の前でダイナミックに焼きあげる店が多いが、その進化系と呼べるスタイルを打ち出しているのが鉄板居酒屋「広島赤焼 えん」である。経営母体は㈱Ens Companyで、2011年に市内草津新町に1号店をオープン。15年10月には3号店となる駅西本店をオープンし、14坪32席で月商300万円を売り上げている。主力メニューの「おっこん」(お好み焼きの意)は、旨辛ダレをたっぷり塗った「赤おこ」990円が看板商品。真っ赤な見た目も味わいもインパクト十分なメニューだ。定番の焼きそばカテゴリーでも、汁なし坦々麺を鉄板焼きスタイルにアレンジした「てっぱん坦坦麺」780円などユニークなメニューが並ぶ。さらにもうひとつの柱に据えているのが店名にもある「広島赤焼」880円で、ブランド鶏の廣島赤鶏のモモ肉を鉄板で焼きあげたもの。これも特製の旨辛ダレで味わうスタイルだ。ドリンクの主力は広島の地酒を中心に揃えた日本酒で、アルコール売上げ比率50%、客単価3000円を確保している。

広島県広島市南区大須賀町3-19 ℡092-569-8873
営業時間/17 時~23時 日曜定休
店舗規模/14坪32席

駅西本店ではL字型の鉄板カウンターが店のシンボル。ライブ感十分なスタイルが主客層の若い女性客に受けている。壁一面に設置した棚には酒のボトルをずらりと並べ、店のインテリアとしても活用。メニューは単品の他、広島の名物料理8品で構成する「広島満喫コース」4000円も用意している。

いっかく食堂 六本松店

 定食とカクテルのペアリングという斬新なスタイルを打ち出し、「定食プラス一杯」のニーズを掘り起こしているのが福岡の「いっかく食堂 六本松店」だ。オリジナルカクテルは一律700円で4種あるが、メニューブックにはノンアルコールカクテル8種を打ち出し、アルコールはプラス100円で変更できる旨を説明している。客層の8割を占める女性向けに、まずは酒を飲まないお客にアピールし、そこからアルコールに注文を誘導しようという戦略だ。またメニューブックでは、おすすめの定食とカクテルのペアリングを提案し、セットで注文すると200円引きになることを明示。フードメニュー300~1980円の価格レンジで、「ハンバーグ定食」1080円、「鶏の唐揚げ定食」980円など70品前後の定食をラインアップするが、すべて100円引きでおかずのみの注文にも対応する。これによって料理単品にプラス一杯というニーズも吸収。夜の客単価は1800円で、アルコール売上げ比率は15%を確保している。アルコールの内訳はカクテル4割、ビール3割、日本酒2割、その他のドリンクが1割となっている。

福岡県福岡市中央区六本松4-2-1 ℡092-791-5121
営業時間/11時~22時(L.O.21時30分) 無休
店舗規模/20坪20席

福岡中心部の大濠公園に近い商業施設「六本松421」の1階にテナント出店。平日は近隣住民、週末はファミリー客を集めている。1日平均客数は160人で、時間帯別に見ると11時~14時が35人、14時~17時が35人、17時~20時が45人、20時~22時が45人。1日を通して安定して集客している。

“提案力”でマーケットを掘り起こす

 外食では「提案力」が重要と言われる。新しい商品の価値や店のスタイルを提案することがマーケット開拓に不可欠であり、また新しいニーズの掘り起こしにもつながるということだ。今回紹介した事例はその好例と言えよう。さらに、そうした新しい提案に地方都市という小さなマーケットで挑んでいる点に注目したい。大都市圏と比べて人口集積が少ない地方都市では、お客の来店頻度を高めることが重要。店の価値がシビアに問われるマーケットでの成功事例は、商品開発や業態づくりのうえで多くの示唆を含んでいる。

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