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注目トレンド更新日:2018年7月19日

牛タンは“古くて新しい”食材の筆頭

古くはホルモン、最近では赤身肉やジビエなど、昨今の肉ブームの中でさまざまな食材が注目されてきたが、いま“古くて新しい”アイテムとして急浮上しているのが牛タンだ。これまでは牛タンの塩焼き+麦飯の組合せが定番で、牛タンといえば定食というイメージが浸透していたが、ここにきて多彩な商品開発や業態開発のアプローチが目立ってきた。こうした新タイプの牛タン料理の店では客層と利用動機の拡大が顕著。市場縮小に悩む居酒屋マーケットの救世主となりそうな動きもあり、目が離せない。

固定概念にとらわれない牛タン料理の数々

牛タン いろ葉

 定食のイメージが強い牛タン料理をメニューの主役に据えて大ヒットを飛ばす大衆酒場が東京・大井町の「牛タン いろ葉」である。経営母体の㈱ストーブスマーケットと、外食プロデュースも手がける㈱スパイスワークスの下遠野亘社長が共同で業態開発を手がけたいろ葉は、料理のクオリティに加えて巧みなメニュー設計が集客のエンジン。看板商品の「厚切り牛タン」999円は単品原価率40%を投じてインパクトを打ち出す一方、メインの脇を固める一品料理のクオリティが高く、199円~999円というプライスレンジも絶妙だ。牛タンは丸のまま仕入れて店で下処理するため、看板商品には最良の部位を使い、端材を煮込みなどに活用してメニューラインアップの幅を広げることに成功している。また店づくりにも注目。2フロアの物件だが、1階は店頭に焼き台を配しカウンター席を主体にして賑やかな雰囲気を演出。一方で2階は全席を座敷とし、ちょい飲みから宴会需要まで幅広い利用動機を吸収している。客単価は3200円でアルコールの売上げ比率は50%。21坪57席の規模で月商1500万円を売り上げる超繁盛店である。

東京都品川区東大井5-3-13 ℡03-6712-8366
営業時間/16時~翌0時(日曜、祝日~23時) 不定休
店舗規模/21坪57席

2フロアで異なる利用動機を吸収しているのが同店の特徴。1階の客単価は2500円だが、グループ客の宴会ニーズを吸収する2階は4000円を確保する。主客層は30~40代の男性客だが、20代の女性客の姿も多い。多様な客層と利用動機を吸収する業態の強みで、すでに首都圏を中心に多店化にも成功している。

ベクタービア

 クラフトビールと牛タン料理を二枚看板にしたユニークなビアバーが東京・新宿の「ベクタービア」。30坪60席で客単価3800円、売上げはシーズンによって変動があるが、月商750万~1000万円を売り上げる繁盛店だ。同店で注目したいのは、牛タンを活用したユニークな一品料理の数々である。冬の限定商品として2016年に打ち出したのが「牛タン塩スープ鍋」(コース料理の一品)。コラーゲンを含んだ牛タンの煮こごりをスープに溶かしながら野菜などの具材を味わうという趣向だ。煮こごりという意外性とプレゼンテーションのおもしろさが女性客に好評。2017年はスープの味にさらにバリエーションを持たせて冬のメイン商品として定着させる意向だ。他にも、牛タンの端材を使ったメニュー開発に積極的。牛タンのチリコンカンとパクチーをフライドポテトに盛りつけた「フライドポテト~牛タンチリビーンズ&パクチー!!~」680円は、テーブル注文率がほぼ100%に達している。ビアバーの定番であるポテトと牛タンをうまく組み合わせることで、専門店としての個性をアピールすることに成功した。

東京都新宿区新宿1-36-5 ℡03-6380-0742
営業時間/17 時~翌0時(フードL.O.23時、ドリンクL.O.23時30分)、日曜15時~23時(フードL.O.22時、ドリンクL.O.22時30分) 無休
店舗規模/30坪60席

東京都内で多彩なバル業態を展開する㈱ライナが2013年11月にオープン。ドリンクのメインであるクラフトビールは日替りでラインアップを変更し常時10品目を揃える。グラス450円・パイント750円の均一価格というわかりやすさも人気の要因だ。牛タン料理では自家製ドミグラスソースを使ったシチューも好評。

仙台牛タン 松阪鶏焼肉 福島 西屋

昼は牛タンと麦飯の定食、夜は牛タンを活用した一品料理を揃えて人気を集めているのが大阪・福島の「仙台牛タン 松阪鶏焼肉 福島 西屋」である。店名にある通り、夜のメニューに三重・松阪で親しまれている鶏の焼肉を加えているのが特徴。看板メニューの牛タン炭火焼きでは、カットしてから5日間冷蔵熟成させるなどクオリティに徹底してこだわっている。看板商品の「極 熟成厚切り牛タン焼き」1730円は、牛タンの中でもっとも柔らかい芯の部分を使用し、2㎝の厚切りにしたものを100gつけて提供。テーブルオーダー率は95%にのぼっている。タンを処理する際に出た端材は「牛タンと白ネギのナムル」580円などに活用しており、こうしたタンを使った一品料理は10品をラインアップ。定食では100gの牛タン焼きと麦飯、とろろ、テールスープがセットになった「西屋定食」1400円(夜は1550円)が看板で、定食の注文の8割を占める。定食は他に、塩焼きと味噌漬けの牛タンを盛り合わせたり、芯の部分を使った厚切り牛タンをつけるなどでバリエーションを広げ、全部で7品を用意。主客層は30~40代のサラリーマンだが、1人客からグループ客までを集め幅広い利用動機を摑んでいる。

大阪府大阪市福島区福島2-9-10 ℡06-6453-2480
営業時間/11 時30分~14時30分、18時~23時(土・日曜・祝日17時~23時) 火曜休
店舗規模/25坪46席

経営母体は大阪市内で11店の飲食店を展開する㈱総合サービス。同社の西山兼司社長が仙台で味わった牛タン料理のおいしさを大阪でも、との思いでオープンした。牛タンは海外産の中でも脂ののりがよいオーストラリア産を使用。松阪鶏焼肉との二枚看板で利用動機の幅を広げ、週末は1日客数が50人に達している。

いま求められる「高付加価値化」のモデル

 牛タンが注目される理由は第一に食材としてのヘルシーさ。昨今の肉ブームの中で、赤身肉と同様の「ヘルシーな肉」というイメージが注目を集めている。この食材としての強みを生かしつつ、多彩なメニュー開発を進めてきたことが客層拡大につながった。定番の炭火焼きにしても、食べごたえのある厚切りにしたり多彩な部位を揃えるなどで消費者に「新しい価値」を提供している。業態づくりについても同様で、牛タンバルなどの新しい業態は従来にない利用動機を吸収。牛タンをめぐる動きは、いま消費者に受ける「高付加価値化」のポイントを理解するうえでも見逃せない。

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