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注目トレンド更新日:2018年6月20日

いま「サワー」が売れまくる理由

いま、居酒屋のトレンドアイテムとして絶対に外せないアイテムになっているのが「サワー」である。まさしく“定番ドリンクの代表格”というべき存在だが、大衆居酒屋ブームの後押しもあり、これを売りまくる繁盛店が次々に生まれている。粗利益率が高い「割りもの」が売れることは居酒屋業界にとって絶好の追い風。さらに、サワーに特化した業態づくりでヒットを収める事例も生まれ、これまでとは違った形でマーケットが拡大する兆しも出てきている。過熱する“サワーブーム”の現場を追ってみよう。

メニューづくり、提供法は多様化の一途

ウナギ&ジビエ+レモンサワー 新宿寅箱

 お客がセルフサービスでつくるサワーを売り物に、ユニークな大衆酒場業態を確立して成功しているのが東京・新宿の「ウナギ&ジビエ+セルフサワー 新宿寅箱」である。店舗規模は11坪25席。店内奥には、100円を入れると焼酎で60ml、ウィスキーで30mlが出る酒販機を設置。隣には割材を入れたショーケースを置き、お客が自らグラスにアルコールを注ぎ、割材を選ぶスタイルをとる。これによってエンタテインメント性を打ち出しつつ、スタッフの作業負担を軽減。割材は280円均一で、13種類という豊富なラインアップだ。セルフが面倒なお客には、プラス50円でスタッフがつくるサービスも導入している。一方のフードメニューは店名にある通りウナギとジビエが2枚看板。うな串が3本で700円、3種類のジビエの焼き物を盛り合わせた「限定ジビエの皿」が950円と、低価格を打ち出している。これら高原価率のメニューでお値打ちを訴求する一方で、サワーのセルフサービスを導入することで人件費を抑えた。現在、客単価3500円で月商350万~400万円を売り上げており、営業利益率は20%を確保している。

東京都新宿区新宿5-10-6 宮崎ビル1F ℡03-5357-7727
営業時間/11時30分~14 時、17時~翌0時(土・日曜16時~) 無休
店舗規模/11坪25 席

経営母体は㈱IBUQLOで、東京・池袋のジビエバル「和ガリコ 寅」に次ぐ2号店として2017年5月にオープン。フードメニューではウナギとジビエの他に「おばんざいのセルフサービス」を導入しているのが特徴。3種盛りが950円、全種盛りは1350円で好きな量をとることができ、女性客から好評を得ている。

大衆酒場 コグマヤ

 JR中野駅南口からすぐの、人気の外食店が集まるスポットであるレンガ坂に2016年8月にオープンした「大衆酒場 コグマヤ」は、7坪20席で月商240万円を売り上げる大衆酒場の繁盛店。12~13品を揃える串煮込み(120円~)をはじめ、手づくり感がありながらリーズナブルな価格のメニューが好評だが、アルコールの看板メニューに据えているのが「シャリキンサワー」(420円~)だ。甲類焼酎を凍らせてシャーベット状にし、そこに割材を加えたもので、アルコール売上げの10~15%を占める売れ筋アイテムとなっている。シャリキンサワーはレモン、ザクロ、ピングレ、モヒートと4種類をラインアップ。他にも、カシスやバナナをドリンクタイプのヨーグルトで割った「乳酸酎ハイ」などオリジナルドリンクを提供している。フードの看板メニューである串煮込みは見た目のインパクトがあり、SNSで口コミが拡散することで女性客が増えているが、女性好みのサワーが揃っていることが人気をさらに後押しした。現在の客単価は2600円で、アルコールの売上げ比率は50%を確保している。

東京都中野区中野3-36-4 深野ビル2F ℡03-6304-8655
営業時間/17時~翌0時(L.O.23時) 無休
店舗規模/7坪20 席

経営母体の㈱月兎は東京・東中野で2007年からバーを経営しており、コグマヤは2号店となる。居抜き店舗の内壁ボードをはがしたままのコンクリート打ちっぱなしの内装だが、それがかえってクールな印象を醸し出す。お客の年齢層は男性が20~40代、女性は20~30代が中心で、女性客比率は45%。

Sour(サワー)

京都きっての繁華街である河原町の裏通りに2016年9月、ユニークな立ち飲み店がオープンした。15時のオープンと同時に女性客が訪れ、キャッシュオンデリバリー方式のカウンターで次々に商品を購入。これがチューハイ専門の立ち飲み店「sour(サワー)」である。8.3坪で最大35人収容の店内はあっという間に満杯となるが、その原動力がチューハイのオリジナリティと商品力だ。常時25~30品という豊富な品揃えで、中心価格は500~700円。いずれもフレッシュなフルーツをふんだんに使い、キラーアイテムの「スーパーいちご」(1300円)は1杯にイチゴ1パックを使用。グラスに詰めたイチゴの隙間を液体で満たしたようなビジュアルはインパクト抜群だ。他にフルーツやハーブを漬け込んだ焼酎を炭酸で割ったものもあり、「柿クローブ」や「山椒と木の芽」など、センスのある組合せが若い世代のお客を掴んでいる。フードメニューはカウンター前に設置した自動販売機で販売する缶詰のみで、このスタイルも気軽な利用動機を掴むうえで効果を発揮している。

京都府京都市中京区裏寺町通四条上ル裏寺町607-19 ヴァントワビル1F ℡075-231-0778
営業時間/15時~翌0時 無休
店舗規模/8.3坪・最大35人収容

チューハイに使用するフルーツは店主の鈴木弘二氏自ら市場で買いつけており、四国産の「柑橘じゃぽん」などのめずらしいものも揃える。店内には作家が手掛けたネオンサインやフラワーアレンジメントを飾り、スタイリッシュな空間が女性客をひきつける。女性客比率は70%で、年齢は20代前半~30代後半が中心。

いまや“高付加価値”ドリンクの代表に

 サワーというと「安っぽいドリンク」というイメージがあったが、いまマーケットを賑わせているサワーはさまざまな工夫を凝らした“高付加価値型”のメニューづくりに特徴がある。こうした“インスタ映え”するメニューはSNSで評判が拡散し、さらに話題を呼ぶ効果をもたらしている。また、新宿寅箱のようなセルフサービスの導入も、それがかえって外食ならではの楽しさにつながっている。定番中の定番であるレモンサワーでも、ここにきて多彩なバリエーションを売りにする例が目立ってきた。サワーはまさに、現代の消費者ニーズを的確に捉えた商品なのだ。

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