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注目トレンド更新日:2018年5月23日

「アルコール売上げ比率30%」が強い

業態とは売り方の違いや利用動機の違いで分けた商売の分類のことだが、近年の外食業界ではこの業態の垣根がなくなりつつある。たとえばファミリーレストランがアルコールニーズを取り込むなど。一つの店で多様な利用動機に対応するというわけだが、それを強く意識した店づくりを行なうことで成功を収める新タイプ店が登場し注目を集めている。これらに共通しているのが「アルコール売上げ比率30%」という数字だ。食事もちょい飲みもでき、しっかり飲むこともできる店。その人気の秘密を探ってみよう。

多彩な客層と幅広い利用動機を摑む

大衆食堂スタンド そのだ

 古くからの商店や住宅が集まる大阪・谷町六丁目で2016年5月にオープン。11時~23時の通し営業で幅広い客層とニーズを吸収し、17坪30席で月商1000万円を売り上げる超繁盛店が「大衆食堂スタンド そのだ」である。大衆酒場でありながら魚料理を置かないユニークな品揃えだが、それが業態としての個性を際立たせている。フードメニューは約60品を揃え、一品料理の売れ筋は「パクチーヨダレやっこ」500円、「牛ハラミタタキ」550円、「メンチカツ」250円など。食事メニューも豊富で、「中華そば」700円や「牛すじカレー」700円、さらに牛ステーキ定食といった定食メニューも揃えるという幅広いラインアップだ。オープン当初は夜のみの営業だったが、17年4月に通し営業に変更し、昼飲み需要も吸収。客単価は1日トータルで2500円、アルコールの売上げ比率は30%を確保している。ロスが出やすい鮮魚を扱わないことで原価率を30%に抑え、F/L値で55%を実現。家賃比率は2.7%で、営業利益率30%という高収益体質を確立している点も見逃せない。

大阪府大阪市中央区谷町6-3-7 ℡なし
営業時間/11時~23時 無休
店舗規模/17坪30 席

経営母体の㈱FAMILY EXOTIC RESTAURANTは「大衆食堂スタンド そのだ」の他に大阪を中心にラーメン店やエスニック酒場を展開。そのだは店頭に掲げられた大きな暖簾が目印だが、試行錯誤を繰り返し「店内が見えそうで見えない、お客の期待感を高めるこの大きさ」(園田崇匡社長)に落ち着いた。

酒と魚とオトコマエ食堂

 2017年5月に京都市のJR京都駅前にオープンした「酒と魚とオトコマエ食堂」は、22坪45席で月商900万円を売り上げる繁盛店。30~40代の男性会社員を中心に、学生や女性グループ、さらに訪日外国人客まで幅広い客層を摑んでいる。フードは全国9ヵ所の漁港から直接仕入れる鮮魚料理35品をメインに、70品前後を390~1500円の価格でラインアップ。そのうち52品を590円としてお値打ち感を高めている。売れ筋は「オトコマエ刺身盛5点盛」850円と同10点盛1500円。5点盛は魚種9種、10点盛は同15種を盛って提供時のサプライズを誘う。さらに生麩を使ったものなど京都ならではの料理を揃える他、「つけ饂飩」650円をはじめ食事メニュー5品を投入し、客層と利用動機の幅を広げている。アルコールの売れ筋はグラス90mlを390円の均一価格で提供する日本酒16種で、アルコールの売上げ比率は30%。平日17時までハッピーアワーとしてフード5品とドリンク全種を390円で提供しており、17時までの客単価は2200円。17時以降は3700円を確保し、1日トータルでは3200円となっている。

京都府京都市下京区東塩小路538-2 ℡075-353-1555
営業時間/14 時30 分~翌0時(L.O.23時30分) 不定休
店舗規模/22坪45 席

コンセプトは「フリ客を中心とした日常使いができる酒場」(経営母体の㈱すぎうら・杉浦茂樹社長)。同社が経営する個室居酒屋「四季の味 すぎうら」が宴会ニーズに偏っていることから、新マーケット開拓を狙って開発した。17年10月には京都・西院に2号店をオープンし、多店化も想定している。

GYOZA MANIA

 注文を受けてから皮を延ばし、あんを包んで茹であげる水餃子。この看板商品をフックにした餃子バルが東京・西荻窪の「GYOZA MANIA」だ。2017年4月にオープンし、客単価1900円、8.5坪17席の規模で月商300万円を売り上げる。フード売上げの6~7割を占める餃子は水餃子5品、焼き餃子2品、揚げ餃子1品をラインアップ。そこに月替わりの水餃子1~2品が加わる・サイドメニューは280~580円で15品を用意。中国の食材や調味料を使ったメニューで個性を打ち出す一方、餃子までのつなぎとなるよう、切ったり盛るだけで提供できるクイックメニューを中心に構成する。また、アルコールの品揃えは6カテゴリー18種を揃えるが、ビールやサワーに加え、紹興酒などを揃えた中国酒カテゴリーを設けて個性を強調。メインとなる2人客のオーダーパターンは餃子4品にサイドメニュー2品、ドリンク3杯で、客単価1900円、アルコール売上げ比率は30%となっている。餃子のカテゴリー原価率が22%と低いこともあり、F/Lコストで49%、営業利益率20%の収益モデルを確立している。

東京都杉並区西荻北3-20-12 ℡03-3711-9296
営業時間/17時~23時30分(L.O.23時) 不定休
店舗規模/8.5坪17席

同店のオーナーは㈱エー・ピーカンパニーで執行役員を務めた天野裕人氏。「老舗の大衆酒場が多い中央線沿線で成功すれば、都内のターミナル駅周辺でも勝負できる」と考えたというが、その言葉通り17年8月には東京・品川に2号店を出店。こちらも客単価3100円、24坪64席で月商850万円を売る。

何でもあって、「売り」もしっかりある

 「間口の広い店」という表現がある。いろんな動機で利用できる、使い勝手のよい店という意味だが、今回紹介した事例がまさにそれだ。しかし間口の広い店は「何でもあるが、売りのない店」になってしまいがち。それを回避するには、商品のクオリティの高さと個性ある品揃え、サービスや店づくりを含めた店の「売り」がしっかりしていなければならない。この点もまた、今回紹介した事例に共通しているところ。気軽に行けて、しかもハイクオリティな店であることが人気の秘訣であり、成功のポイントなのだ。

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