ニュースリリース

「酵母の醸造特性・物質変換に着目した ビールテイスト飲料の品質向上と商品開発」が
日本農芸化学会から「2024年度農芸化学技術賞」を受賞

2024.03.27

  • facebook
  • X
  • line

サッポロビール(株)は、(公社)日本農芸化学会から「酵母の醸造特性・物質変換に着目したビールテイスト飲料の品質向上と商品開発」において「2024年度農芸化学技術賞」(注1)を受賞しました。授賞式は2024年3月24日に日本農芸化学会2024年度大会(注2)で行われました。
この受賞は、ビール工場における酵母活用技術において、遺伝子分析や成分分析を駆使した研究や消費者の嗜好の多様化への対応とより良いビール品質を追求してきた当社の総合的な実績が評価されたことによるものです。
当社は、基礎研究から応用技術の工場への実装まで一気通貫した酵母への取り組みを通じて、香味・品質の安定した、且つお客様の嗜好の多様化に対応したおいしいビールをこれからも提供していきます。


受賞テーマ表題:「酵母の醸造特性・物質変換に着目したビールテイスト飲料の品質向上と商品開発」

<研究概要>
酵母はビール製造工程で中心的な役割を果たし、ビールの香味に大きな影響を与えると考えられています。醸造技術者は安定した品質のビールを造るために、長年の経験に基づいて慎重に発酵管理を行っています。また、望ましい性質を持つ酵母を選抜し、それを常に最良の状態に維持していくことが求められています。当社は、従来からある解析技術に加えて、飛躍的に発展してきた遺伝子解析や成分分析技術を駆使して下面ビール酵母の醸造特性を解明し、ビールテイスト飲料の品質や工程の改善に繋げ、また、発泡酒等における香味改善などにも継続的に取り組んできました。


「下面ビール酵母の凝集性に関する知見の活用」
 下面ビール酵母には、発酵が終わりに近づくとお互いに集まる「凝集性」という特性があります。世界的に主流のビール醸造(下面発酵)では、この酵母の「凝集性」を利用しています。大半の酵母は、発酵が終わると凝集して発酵タンクの底部に沈むため、効率的に回収され、その酵母を次の発酵に使うことができます。しかし、この「凝集性」は使い続けると弱まっていく傾向があり、不安定な性質でしたが、その原因は十分に解明されていませんでした。

 当社は、遺伝子解析などの技術を駆使して酵母の「凝集性」が変化する理由を明らかにし、その知見をもとに、工場で使う酵母の「凝集性」を安定的に維持できる技術を実装することに成功しました。


「低栄養下で生成するオフフレーバーの抑制」
 1990年代から現在に至るまで、麦芽の使用比率がビールより少ない発泡酒や、「サッポロ ドラフトワン」に代表される麦を使わない新ジャンル(酒税法改正により現在の品目は「発泡酒②」)などが新たな市場を開拓してきました。このようなビールテイスト飲料は、麦芽の持つアミノ酸やビタミンなどの酵母にとっての栄養分が不足し、発酵が弱まる、また不快なにおい(オフフレーバー)が発生するなどの懸念がありました。
 当社では酵母のゲノム解析などの先端技術を駆使してその原因を遺伝子レベルで解明し、継続的な改善を行うことで、工場での工程管理の見直しや、香味品質の高いビールテイスト飲料の新商品開発につなげてきました。



「酵母による香気成分の変換と商品開発への応用」 
 2000年代以降に世界的にも注目されているクラフトビールには、特長的な香り成分を持つホップやハーブ、スパイスなどが使われています。2017年の酒税法改正では、そういったハーブやスパイス、果汁等がビールの副原料として認められました。当社は、それらの香り成分が醸造中に酵母の作用によって変換され、ホップの品種、スパイスやハーブの種類、さらにはその組み合わせによって特長的な香りのビールになることを解明しました。2024年2月20日に発売した「ヱビス シトラスブラン」(注3)では、よりレモンのような香りを引き立たせるため、この研究を応用して商品開発につなげました。
 
 
当社は、さまざまな解析・分析技術を駆使して、ビール酵母を安定的に使いこなし、市場を開拓する新たなジャンルへの取り組みを続け、さらに、素材の香り成分が酵母の発酵でより良いものとなるような工夫を重ね、新しい商品の開発も実現してきました。ビールテイスト飲料の市場の変化が進んできている中、今後もより良い品質、多様化するお客様の嗜好に合わせた香味のビールを提供するために、酵母の活用技術を追求していきます。


(注1)(公社)日本農芸化学会は、1924年に設立されたバイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成される学術団体であり、国内の大学・研究所・企業などに所属する多くの研究者によって構成・運営されています。
 農芸化学技術賞は1968年から設置された歴史ある賞で、農芸化学分野において注目すべき技術的業績をあげた会員に授与される極めて権威ある賞です。(公社)日本農芸化学会は、1924年に設立されたバイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成される学術団体であり、国内の大学・研究所・企業などに所属する多くの研究者によって構成・運営されています。
日本農芸化学会ホームページ:https://www.jsbba.or.jp/
(注2)日本農芸化学会2024年度大会の会期は3月24日~27日(会場:世田谷区・東京農業大学)。日本農芸化学会2024年度大会ホームページ:https://www.jsbba.or.jp/2024/ 
(注3)https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000016385/

このページの情報に関するマスコミの方からのお問い合わせはこちらまでお願いいたします。