CULTURE

ワイン用のブドウと生食用のブドウの違いって?ブドウの種類についても知ろう

「ワイン用に栽培されているブドウと、そのままフルーツとして食べられているブドウと何が違うの?」と聞かれて、サラッと答えられたら、ちょっとカッコイイですよね。

ワイン用のブドウと、普段デザートなどでお世話になっている生食用ブドウ。それぞれ何が違うのか、こちらで詳しくご紹介します。

ワイン用のブドウの品種をひととおり知っておきたい!という方も、ぜひチェックしてみてくださいね。

ワイン用のブドウと生食用のブドウの違いって?ブドウの種類についても知ろう

ワイン用のブドウと生食用のブドウって何が違うの?

世界各地で栽培されているブドウの8割ほどがワイン用ブドウで、実は生食用のほうが少ないのです。世界で栽培された大半のブドウは、ワインとして私たちの食卓にあがっているんですね。

同じ「ブドウ」といっても特徴に大きな違いがあります。例えば、ワイン用のブドウは粒が小さいうえ、良質なものほど食べづらいと感じる人が多いでしょう。それは、ワイン用ブドウは種が大きくて皮が厚いもののほうが良いとされているからです。

これに対し、生食用ブドウは大粒で皮の薄いものが多く流通しています。品種改良で種自体がまったくないブドウも珍しくなくなりました。デラウェア種のように生食用でも小粒のブドウがありますが、ワイン用のように皮は厚くありません。

なぜこんなにも違いがあるのかというと、ワイン造り(特に赤ワイン)に欠かせないタンニンや酸味の存在が関係しています。

・ワイン用・・・タンニンの含まれる部分(種や皮)が多く、酸味が強い
・生食用・・・タンニンの含まれる部分が少なく、実が大きく、酸味が薄い

簡単にまとめると、このようになります。タンニンはワインの渋味を出すのに重要で種や皮に多く含まれるため、皮が薄く種なし品種もある生食用ブドウは、ワイン造りに向いていないのです。

大粒で実の部分が多く、みずみずしくて水分量が多い生食用ブドウは、そのまま食べるとおいしいですよね。ただし、ワインを造る際には、これらの長所がかえってデメリットになってしまいます。

タンニンや酸味の少なさは赤ワイン造りには大きなマイナスになりますし、大粒でみずみずしい分、香味成分も少なくなっています。

実は、糖度もワイン用ブドウのほうが高め。酸味が強い分、糖分は少なくなるのでは?と思うかもしれませんが、実際は、小粒の中に香味成分や甘味が酸味とともにぎゅっと濃縮されているのです。

ちなみに、ワイン用ブドウはそのまま食べることもできます。皮が厚く食べづらいですが、食べてみるととってもおいしいですよ。

糖分の多さは、ワイン造りにも大きな影響を与えます。糖分はアルコールへと変わる大事な要素。ワイン用ブドウには、濃厚で糖度が高いものが求められるのです。

酸味やタンニンが複雑さを加え、糖分のほとんどがアルコールに変わることから、糖度の高いブドウでもワインに仕上がった後には甘さがほとんど感じられなくなるのです。

生食用ブドウがそのままの状態で食べやすいようになっているのと同じく、ワイン用ブドウもワインに加工するのに最適ということなんですね。

 

ワイン用に栽培されているブドウ品種

ワイン用のブドウと生食用のブドウの違いって?ブドウの種類についても知ろう

ワイン用ブドウで世界的に栽培されている主な品種についてまとめました。ワインを語るには、まずおさえておきたい基本的な品種です。

黒ブドウ

赤ワインに使われているブドウは、黒ブドウに分類されます。深みのある黒みがかった紫の皮によって、鮮やかな赤ワインの色が生まれます。

収穫時期は品種や栽培環境などによって異なりますが、日本など北半球では9月~11月の間です。季節が逆になる南半球では、だいたい3月から始まります。

・カベルネ・ソーヴィニヨン種

赤ワイン用ブドウの代表的な存在のカベルネ・ソーヴィニヨン種は、フランスのボルドー地方原産です。深みのある色と重厚な飲み応えは、豊富なタンニンによるもの。酸味も豊かで「赤ワインらしい赤ワインを飲みたい!」なら、カベルネ・ソーヴィニヨン種を使用した赤ワインがおすすめ。

・メルロー種

カベルネ・ソーヴィニヨン種と同様、フランスのボルドー地方が原産のメルロー種。深みのある色はこちらも負けていません。渋味がきめこまかく、まろやかな赤ワインを望むなら、メルロー種を試してみてください。

・ピノ・ノワール種

フランスのブルゴーニュ地方が原産のピノ・ノワール種は、タンニンが少なく果実味が強いことが特長です。ベリー系の酸味がちょうど良く、渋味との調和が優しいワインに仕上がります。鮮やかなルビー色もピノ・ノワール種ならでは。

・シラー種

シラー種はフランスのコート・デュ・ローヌ地方原産のブドウで、オーストラリアではシラーズ種と呼ばれる品種です。果実味が凝縮されてボリューム感があり、色が濃く、熟成向きのワインを生み出します。黒コショウのスパイシーで深い香りが大きな魅力です。

・カルメネール種

かつてはフランスのボルドー地方で栽培されていましたが、現在は栽培が途絶えてしまった品種です。19世紀半ばにボルドーからチリに持ち込まれたカルメネール種は、長らくメルロー種だと思われていましたが、1996年にカルメネール種として認証されました。色素が濃く、渋味がまろやかながら、コクがしっかりと存在するのが特長です。

・ガメイ種

ボージョレ・ヌーボーでおなじみの品種で、世界のガメイ種の約60%がフランスのブルゴーニュ地方ボージョレ地区で栽培されています。タンニンが少ないため、渋味が控え目でフルーティな味に仕上がります。果実味豊かな飲みやすい品種です。

白ブドウ

白ワインで主に使われる白ブドウは、北半球では主に9月に収穫時期を迎えます。黄緑色や黄色の果実が多いのですが、中には赤みを帯びた皮が特長的な品種も。

・シャルドネ種

シャンパーニュの原料としても有名なシャルドネ種は、フランスのブルゴーニュ地方原産ですが、世界各地で広く栽培されています。品種としてというよりも栽培される地方の環境や条件による特長が出やすく、各産地それぞれの表情を楽しめるのが大きな魅力の1つです。

・ソーヴィニヨン・ブラン種

フランスのボルドー地方やロワール地方で主に栽培されている品種です。ハーブや柑橘類を思わせるさわやかな香りが特長で、香りのイメージを裏切らないすっきりした酸味のあるワインとなります。

・リースリング種

ドイツの白ワイン用ブドウといえば、このリースリング種。花のような香りと、適度な酸味は、極甘口から辛口まで様々なワインになります。シャープで豊かな酸が際立つ味わいを生み出す品種です。

・甲州種

いわずと知れた日本の代表的なワイン用ブドウ。山梨県を中心に栽培される甲州種は、約1300年の歴史をもっています。鮮やかな赤紫色の皮ですが、味わいはさっぱりとしていて、柑橘系の香りと酸味がきめこまかいことが特長です。

・マスカット(モスカート)種

フランス語ではミュスカと呼ばれるマスカット種は、ギリシャ原産の品種です。各国の言語で様々な呼び名をもちますが、フランスではラングドックのルーシヨン地方で栽培されているものが代表的です。独特の芳香が愛され、辛口ワインはもちろん、甘口ワインやスパークリングワインの原料にも用いられます。


生食用にもワイン用にも用いられるブドウ品種

ワイン用のブドウと生食用のブドウの違いって?ブドウの種類についても知ろう

ワイン用のブドウの中には、生食用としても愛される品種があります。ここでは生食用としてもワイン用としてもお目にかかることの多い4種についてご紹介します。

・甲州種

白ワイン用ブドウの項目でも解説しましたが、山梨県を中心に栽培される国産品種の甲州は、生食用としても親しまれています。「本ブドウ」とも呼ばれ、産地では直売所で購入することもできます。

・マスカットベーリーA種

8月中旬頃~10月頃までが収穫時期ですが、生食用として出まわるのは8月下旬以降のものが旬です。厚みのある皮をむくと、甘味と酸味が凝縮されたジューシーな果肉が現れます。

・マスカット・オブ・アレキサンドリア種

ブドウの女王とも呼ばれるマスカット・オブ・アレキサンドリア種は、温室栽培で5月~8月頃、冷室栽培(加温しない栽培方法)で9月~11月頃が収穫時期です。岡山県の名物としても知られ、甘さと芳香の素晴らしさは、世にでる「マスカット」味としても定着するほど。

・デラウェア種

小粒で種がないデラウェア種は、子どもも食べやすいのが魅力。収穫時期は4月中旬頃~9月頃で、糖度が高く濃厚な味が楽しめます。ハウス栽培も行われており、早い地域では4月頃から出まわります。

まとめ

ワイン用のブドウは「皮が厚く種が大きい」ものほど良いものとされます。生食用のブドウではデメリットとなりそうな部分が、ワイン造りに欠かせない特長となっているのです。

中にはデラウェア種のように生食用としても親しまれているブドウもありますが、機会があればぜひ他のワイン用ブドウも食べてみてください。濃厚で糖度の高い実は、ワインにする前の状態で口にしてもおいしいですよ!