ジョージアワインと聞いても、「どんなワイン?」と感じる方が多いのではないでしょうか。ワインの産地としては非常にマイナーではありますが、実は近年になって伝統的な製法で造り続けられていたジョージアワインに注目が集まっています。
今回はジョージアワインの歴史や製法について紹介し、その魅力にせまっていきましょう。
目次
ジョージアワインの歴史
ロシアやトルコなどに隣接しているコーカサス地方の小国ジョージア。ワインの産地として知名度は決して高くないものの、その歴史は非常に古いものがあります。
世界最古のワイン産地のひとつ
新石器時代(紀元前6000年頃)の人類は、コーカサス地方に自生していた野生のブドウをワインに好ましい形質の種に変えていきブドウ畑を開墾、ワイン造りを開始しました。
コーカサス地方はジョージア※が位置する土地で、そこでは8000年前からワイン造りが行なわれていたと言われています。
歴史的にはフランスやイタリアよりも古く、「世界最古のワイン産地」「ワインの発祥の地」と考えられています。
※以前は「グルジア」と呼んでいましたが、国連加盟国の多くが英語表記の「ジョージア」で読んでいることを理由に、2015年に呼称を「ジョージア」に改める法律ができました。
「クレオパトラの涙」と呼ばれたワイン
シルクロードの要衝として栄えていたジョージアは、古代からワインを各国へ輸出していました。
ジョージアワインは2000年前にはすでに世界で広く認知され、楊貴妃やクレオパトラにも愛されていたという逸話が残っています。
そのひとつに「クレオパトラの涙」という逸話があります。
絶世の美女と呼ばれ、ローマ帝国の時の権力者たちを手玉に取っていたと言われているクレオパトラですが、実際には政権を維持するのに強い不安を抱えていたのだとか。
その不安や孤独を紛らわすために、涙しながらジョージアワインを飲むことも多かったと。この逸話からジョージアのワインは「クレオパトラの涙」と呼ばれるようになりました。
ワインの歴史について、もっと詳しく知りたい方は以下のページもご覧になってみてください。
http://www.sapporobeer.jp/wine/wine_opener/article/wine_history/
ワインの製法
ジョージアのワインは、古くから続く伝統的な製法で今でも造られています。ヨーロッパの一般的な製法とは一線を画す、ジョージア独特のワインの製法について掘り下げてみましょう。
クヴェヴリ製法とは?
ジョージアワインはクヴェヴリ製法で造られています。クヴェヴリとは丸い大きな素焼きの壷のことで、壺の内側は蜜ろうでコーティングされています。
そのクヴェヴリに収穫してつぶしたブドウを入れて発酵させ、それからマラニという石造りの蔵の地中に埋め込んで一定の温度でブドウを再発酵させ熟成させていきます。
クヴェヴリ製法に使われるブドウは、農薬や化学合成肥料を極力使わない健全な土壌で栽培されたものです。
また、ブドウが野生酵母に頼って自ら発酵するように添加物を加えないなど、醸造においても人の手をできるだけ加えないようにしています。
ブドウの栽培から醸造に至るまで自然に頼るクヴェヴリ製法は、現在まで脈々と引き継がれてきた伝統製法として2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。
ジョージアワインの味わい
無形文化遺産に登録された製法で造られているワインと聞くと、「ちょっと飲んでみたい」と思う方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために、ジョージアワインの味わいがどんなものかご紹介していきます。
ジョージアワインの産地と品種
ジョージアワインは主に東部のカヘティ、西部のイメレティという地方で造られています。
カヘティはジョージアの中でも最も主要なワイン産地であり、冷涼な気候が特徴的です。カヘティでは、今でも多くのワイナリーがクヴェヴリの伝統的な製法でワイン造りに励んでいます。
イメレティはカヘティと比べて多様な気候を持ち、クヴェヴリの伝統方式とヨーロッパ式の2種類の製法でワインが造られています。
主要な品種として以下のように挙げられます。
・サペラヴィ
主要産地はカヘティですが、ジョージア全体で広く栽培されている赤ワインの品種。熟成能力が強く、辛口や甘口の赤ワイン、ロゼからセミスイートまで様々な味わいを造り出します。
・ルカツィテリ
湿度が高く、暖かい気候には適さない白ワインの品種で、主にカヘティで生産されています。香りが控えめなため、華やかな香りの特長を持つムツヴァネ・カフリとブレンドされることが多いです。
・ムツヴァネ・カフリ
ミネラル感があり、白桃や白い花のような香りが特長的な白ワインの品種。クヴェヴリの醸造により、アプリコットやドライフルーツの風味が合わさります。
・ツォリコウリ
イメレティで広く栽培されている白ワインの品種。メロンなどの黄色系果実、シトラスの香りを持っています。
ジョージアワインが今注目されている理由
世界最古のワインの産地といわれるジョージアのワインが、今世界的に注目されるようになったのはロシアとの関係の変化が大きく関係しています。
ジョージアは2008年にロシアとの国交が断絶し、それ以降ロシアがジョージアワインの輸入を禁止します。
ロシアにワインを輸出していた時代は、ロシアの消費者のニーズを考えるだけでよかったジョージア。しかし、最大の取引先がなくなったことで、世界に通用するワインを生産する必要がでてきました。
そのため、ジョージアは世界各国のマスター・オブ・ワイン(ワインソムリエの中でも名声の高い資格を持つ人)にアンバサダーを委嘱してワインの輸出を強化しました。
また、国の出資で巨大な新しいワイナリーを建設したり、ワイン産業育成のために生産者に低利で融資を行なったりするなど国家政策としてワイン製造をリードしています。
2017年にはジョージアの農務省の傘下にあるナショナル・ワイン・エージェンシーがワインの見本市に、初めてジョージアワインを出展するなど各国への売り込みを本格化させています。
最近ではワインのコンペティションが開催されるなど、国家が主導して国際市場に向けてワインの醸造を推進しているため、ジョージアワインの知名度も一気に高まってきました。
まとめ
近年になってよく聞かれるジョージアワインですが、ジョージアは世界最古のワイン産地のひとつ。伝統的な製法で造られている独特の味わいを楽しむことができるワインです。高品質でフルーティな味わいなので、普段ワインをあまり飲まない方でも美味しく飲むことができるでしょう。機会があれば、ぜひトライしてみてください。