小山駅前に立地して20代の若者、出張会社員などで連日賑わう大衆酒場。1人でも利用しやすいメニュー構成や気軽な値付け、親しみやすい雰囲気づくりなど幅広い客層から支持される酒場のエッセンスが詰まっている。
78品を数えるフードメニューの約9割を500円未満で提供。中心価格帯を290円、390円に集約しており、名物のチューリップ唐揚げや串焼きにいたっては1本から注文できてそれぞれ90円。栃木・小山の「大衆酒場 いごっそ」は〝スーパーで惣菜を買って家で食べるより安く済むのでは〟とすら思ってしまう圧巻の価格訴求力を集客のフックにして連日賑わいを見せている。
もちろん安いだけではない。もつ煮込み290円はグループにホルモン焼き店を持つだけに高品質が伝わる味で、ボリュームも1.5人前はある気前良さ。大衆酒場の定番アイテムであるポテトサラダ390円はコーンをたっぷりかけて彩りを加えるなど、お得感を感じられる工夫が随所にほどこされている。
オーナーの横谷勇興(よこやゆうこう)さんは、2012年にホルモン焼き店「横谷ホルモン」をオープンして創業。と畜場から直送で仕入れる新鮮なホルモンを売りに一躍人気店となった。現在、小山エリアに飲食店を4店まで増やしてきたが、いごっそを大衆酒場とした狙いについて次のように語る。
「1人でも気軽に飲める大衆酒場は若い世代にもニーズがあるはず。ただ老舗の大衆酒場だとお客様が固定して新規客が入りづらい。通りから店内の様子がわかる店構えで、新規客が入りやすい雰囲気にすれば客層を広げられると考えたんです」
その狙いが的中し、20代の若者や出張で訪れた会社員が来店客の6割を占めるほどの高い支持を得ている。
当初は短時間で飲食する「せんべろ」利用客が多いと想定していたが、1人でもお腹いっぱい飲み食いして帰るお客様が大半となる嬉しい誤算となり、客単価は2500~3000円。アルコール売上げ比率は実に7割にも達している。来店客の7割が最初の1杯目にオーダーするのはサッポロ生ビール黒ラベル〈樽生〉中420円や、サッポロラガービール620円だ。また焼酎等のボトルキープも好評で、店内には100本近くもの名入りボトルがそこかしこに並んでおり、これが酒場らしい雰囲気を演出している。
お店とお客様との親しい関係を感じられるのが、カウンター席にびっしりと書かれたお客様の落書きだ。常連客のいたずら書きがきっかけで広まり、今ではカウンターのみならず壁にも書いていくお客様がいるほどだ。「友達を家に迎えるような気軽な接客を心がけています」と横谷さんは語るが、そこから生まれる居心地の良さがお客様の滞在時間を延ばし、追加注文や客単価アップにつながっているのだろう。
「街の名物店になるような、味わい深い老舗酒場になるのが目標です。小商圏で商売が成立するのも大衆酒場の利点ですから、1店1店増やしていけたら」と横谷さんは展望を語る。
居酒屋の定番商品である鶏の唐揚げはチューリップ唐揚げを採用。1本90円から注文できるシステムにして人数に応じた数の提供ができる。「懐かしいアイテムを置いて、ほっとできる大衆酒場を演出したかった」と横谷さんは語るが、若い世代からは「新しい」と異なる反応がある。誕生日祝いに年齢の数だけ注文するお客様もいるという。
ボトムは90円。500円を超える品はわずか10品と低価格を追求。新鮮なモツを使うなど品質にもこだわり、1人前サイズながら気前のいい盛り付けで満足度を高めている。
チューリップ唐揚げ、串焼きは1本から注文可能として1人で来店しても色々な料理が食べられる配慮をする。これが出張客など1人客のニーズをしっかり摑んでいる。
カウンター席にはお客様が書いた落書きがびっしりとあるが、これがお店の親しみやすさを物語っている。常連客はもちろん初来店のお客様へ安心感を与えている。
店名/大衆酒場 いごっそ
住所/栃木県小山市中央町3-6-7 若色ビル1階
電話/0285-39-8857
店舗規模/20坪40席
営業時間/17:00~23:00
定休日/木曜日
客単価/2500~3000円
1日平均客数/40人
※価格は内税。