人件費コントロール
飲食店にとって、原価と並んで大きな経費となるのが人件費。お店のなかには感覚的にシフトを組んでいるために人件費を使いすぎ、結果的に利益を圧迫してしまうケースも多く見られます。人件費の計画はどのように立て、どのように運用していくべきなのか。実際に使える「人件費コントロール」の方法をご紹介します。
要員計画を立てる
まず実施すべきは「要員計画」、つまり「お店を何人で回すのか決めること」です。顧客・従業員満足を考えると、スタッフは多いに越したことはありません。しかし、度を超えてスタッフを多く配置すると利益が出ません。何人でシフトを組むのが適正なのか、店長も働いているスタッフも認識しておくことが重要です。
お店の収支計画を立てる場合、最初に考えなければならないのは必要利益であり、楽観視せず売上を見積もったうえで「使える経費がいくらなのか」という考え方を持つことが大切です。
業態にもよりますが、適正な利益を生むには、売上に対する人件費の割合(人件費率)を30%前後に収めておきたいところです。また、人件費が粗利益(売上 原価)に占める割合(労働分配率)を40%前後で計画しておくのも良いでしょう。
人件費率を30%とすると、月商500万円のお店では人件費を150万円以内で収めなければなりません。仮にこのお店の粗利益率が75%の場合、使える人件費は150万円、70%の場合だと140万円となります。
また、社員(社員同等のアルバイト含む)の場合は、給与(標準月額報酬)の12〜15%程度の法定福利費が発生しますので、それらをあらかじめ加味して要員計画を立てましょう。
アルバイトの要員計画
アルバイト比率が高いお店の場合、アルバイトの要員計画が重要になります。
例えば社員が3名、法定福利費を含んだ人件費が78万円とします。その場合、アルバイトに使える人件費は150万円78万円で72万円(左頁の要員計画表参照)。仮にアルバイトの時給を1000円とすると、月間で720時間のアルバイトが使えます。720時間を単純に30日で割れば1日24時間。就業時間が8時間の場合、社員以外に時給1000円のアルバイトを1日当り3人配置できるという計算になります。
もちろん週末や連休などの繁閑については、日別の売上予測に応じた要員計画が必要です。まずは、使える人件費の算出や、コントロール可能なアルバイトの労働時間の設定などを検討し、繁閑時に応じて使える人件費の範囲でシフトを組むことから始めましょう。
危険なのは「もし忙しくなったらどうしよう」と考え、人員過多なシフトを組んでしまうこと。この「もし…」という考えが人件費の上昇を招いてしまいます。予想外に忙しくなった場合は、スタッフに残業やヘルプをお願いするなり、入客をコントロールして対応するよう心がけてください。
レイバーコントロール
要員計画を立てた後は、売上の状況によって人件費をコントロールする「レイバーコントロール」が必要です。つまり、忙しい時は忙しいなりに、暇な時は暇なりに人件費を使うということです。忙しい時のレイバーコントロールは、残業や休日出勤、ヘルプの依頼、入店のコントロール等で対応しますが、実際の運用で難しいのは暇な時のレイバーコントロールです。
突然の大雨や台風、または地域のイベントやテレビ番組等の影響によりお店が暇になった時、出勤しているアルバイトは暇を持て余すことになります。店内清掃やチラシ配りなどの対応も手法としてはありますが、売上がないのに人件費だけが出ていく事実に変わりはありません。
暇な時の早上がりについては、アルバイトに協力してもらえるような仕組みや関係をつくっておくことが重要です。早上がりはあくまでもアルバイトの協力が必要であり、お店の都合で申し訳ないという気持ちで真摯にお願いすることが大切。お店の予算や収益構造(特に人件費率)について情報をオープンにし、アルバイトの理解も深めておきたいところです。
また、早上がりを依頼するときは、(1)希望者を募る、(2)アルバイトによって生計を立てている人は考慮する、(3)同じ人ばかりが早上がりにならないよう注意する、(4)売上・利益が大きく目標を達成した時にはインセンティブ等の制度を設けておき、利益分配の文化をつくる、といった仕組みも必要になります。
※2018年rise春号より抜粋