気仙沼市街から外れたロードサイドにひっそりとお店を構えながら連日地元客で賑わう「和醸酒一杯屋 梟」。気仙沼漁港から届く朝獲れの鮮魚を仕入れ、手間ひまかけて品質を追求した味が高い支持に繋がっている
気仙沼漁港から届く朝獲れの鮮魚は水揚げ状況に合わせて5~7種を用意。鮮度がいいのはもちろん、素材の味を引き出すために白身魚などでは数日間熟成させてから刺身にして提供することもある。
「気仙沼の人は家庭でも日常的に美味しい刺身を食べていますから、外食ならではのクオリティで提供しないと支持されません」と店主の小野寺 洋さんは語る。
そうした考えから生まれたのがかつおの藁焼き造り680円だ。藁を使った強烈な炎でかつおの皮目を一気に炙り、香りと旨みを味わえるよう塩をつけて食べるスタイルを提案。地元では馴染みのない食べ方だが、今やシーズンオフの冬場でも常連客の要望が来ることがあるほどの名物メニューとなっている。
その他38品を揃える一品料理も個性が光る。小悪魔の手羽先揚げ580円は料理名こそ変えているが米国発祥の鶏料理バッファローチキンウイングの味を忠実に再現。現地で使用される専用ソースを使った強烈な辛味と酸味がクセになる一品だ。他にもフレッシュなトマトにおろし山葵をたっぷりかけたわさびトマト380円や平らに広げた形状がユニークな月見つくね焼き580円など創作性の高い料理を揃えて常連客の心を掴んでいる
ドリンクで力を入れているのが生ビールの品質だ。ビールサーバーやジョッキの洗浄、温度管理を徹底。きめ細やかで口当たりのいい泡に仕上げた「パーフェクト樽生」を提供している。「ビールが苦手というお客様にお試し提供すると必ず『美味しい』と驚かれます。お酒でも食材でも本来の味をしっかり引き出せばお客様は必ず支持してくださるんです」と小野寺さん。
梟のオープンは2000年で、2010年3月に現在の場所に移転。その矢先の翌年に東日本大震災が起きた。同店は最小限の被害であったが、鮮魚の仕入れ先である気仙沼漁港をはじめ食材の仕入れルートは断絶。それでも辛い避難生活をしている常連客の憩いになればと早々に営業を再開。連日のように100㎞以上離れた仙台市場まで自動車を走らせ、食材を仕入れてはお店の灯を点けた。「避難所生活を強いられている常連客様に日常を取り戻していただきたい一心だった」と小野寺さんは振り返る。そうした想いを込めた営業姿勢が、いまも地元住民の憩いの場として愛され続けている理由だ。
梟が鮮魚を仕入れる気仙沼漁港は生鮮かつおの水揚げ量が20年連続日本一を誇る地元の特産物。この地域で新しいかつおの美味しさを提案しようと導入したのが、かつおの藁焼き造り680円だ。藁を使った強烈な火と煙でかつおの皮目を炙ることで独特な香ばしさが加わり、かつおの旨みが引き立つ。かつおのシーズンは5月~ 10月だが、秋に獲れる落ちがつおは藁焼きの際に火柱が立つほど脂のりがいい。さらに醤油やぽん酢ではなく、塩をつけて食べるスタイルを打ち出す。地元では馴染みの薄い食べ方だったが、今ではかつおの水揚げのない冬場でも常連客の要望が来るほどの支持を得ている。
気仙沼漁港に水揚げされた鮮魚をその日のうちに提供。一方でかつおを藁焼きするなどといった手間ひまをかけ、外食の価値を打ち出している。
売れ筋の生ビールは適温できめ細やかな泡に仕上げて提供。機器の洗浄や温度管理、注出方法まで品質管理を徹底。品質へのこだわりが注文増にも繋がっている。
来店客の平均滞在時間は3~4時間と長く、平均的な客単価は4500円を計上。店主と女将を中心に醸し出す家庭的な雰囲気が常連客の憩いの場となっている。
店名/和醸酒一杯屋 梟
住所/宮城県気仙沼市田谷1-3
電話/0226-25-1870
店舗規模/25坪37席
営業時間/17:30~22:30
定休日/日曜日
客単価/4500円
1日平均客数/30人