お酒をもっと売る!
当たり前ですが、お客様にお酒を飲んでいただくためにお酒を提供します。ただ、ここにお店オリジナルの仕掛けがあると、お客様は楽しくお酒を飲んで、その体験が記憶に刻み込まれます。「お酒の注ぎ方」「商品の演出」、そして「また行きたくなる」きっかけをつくる「カード」など、「お酒がもっと売れる」仕組みを事例で紹介します。
甲類焼酎が大変身
JR横浜駅の西口を出て右方面に行くと、飲食店が集まった昭和の雰囲気満載の小路があり、この中に豚足をはじめとした「コラーゲンの専門店」があります。
ここの名物の飲み物はコップ飲み切りの焼酎です。「アラジンの魔法のランプ」のような形をしたヤカンに焼酎が入っていて、お客様がこれを注文すると、空のコップの上の高いところから焼酎を注ぎます。するとコップの中で焼酎が泡立ち、たくさん空気に触れたせいかマイルドな口当たりになります。
この焼酎は一般的な甲類です。お客様の見える場所に置いて、ヤカンに時折足していますから、お客様も承知です。でも、このマイルド感が同店オリジナルなのです。コラーゲン料理にとてもよく合います。
ワインセラーをくぐるアプローチ
東京・赤坂のオフィスと飲食の集積地に、スタイリッシュな焼肉店があります。経営母体はロードサイドで成功を収めています。赤坂でも未知のターゲットに新鮮なコンセプトで挑み大繁盛しています。
ここを訪ねてまず感動するのはエントランスです。お店に入店するためにワインセラーの中をくぐることになります。ワインのボトルが整然と並んでいて、これらが照明に反射している様子はゴージャスなシャンデリアさながらです。
そして、ドリンクに「2時間飲み放題1980 円(税抜/以下同)」のメニューがあります。ワインはもちろん生ビール、ハイボール、サングリア、モヒート、生マッコリ、そしてソフトドリンクとあらゆるドリンクが飲み放題です。とはいえ先ほどのワインセラーが強烈に記憶に残っています。グラスワインの価格を見ると700円、フルボトルで2800円となっています。「グラスワイン3杯で元が取れる」という勘定で、同店のお客様のほとんどはワインを中心に、この飲み放題を注文しています。
焼肉は1㎝近くの厚切りで、1皿100g 程度、1000円前後です。これら印象に残る仕掛けの数々で焼肉激戦地にあっても大繁盛しています。
割引額が増える仕組み
東京・御徒町駅から徒歩5分のオフィスと住宅が混在している路地裏に「宮崎料理と焼酎」のお店があります。同店ではリピーター対策に力を入れていて、そのためのカードを3種類設けています。
まず、一見のお客様に向けた2種類のカード。1つは、次回来店した時に、お連れしたお客様も全員のファーストドリンクがサービスされるもの。もう1つは、次回来店した時に料理を1品サービスするというもの。このカードはスタッフが「こちらのお客様は次回来店しそうだ」と判断したら、渡します。
そして、ご常連向けに、焼酎のボトルを注文した数が増えるに従って、この価格が安くなっていくという1年間有効のポイントカードがあります。同店の焼酎ボトルは2800円でボトルキープができるのですが、年間10本達成すると500円引き、20本で1000円引きなどとなります。ちなみに、週に3〜4回来店するご常連は5人程度いるそうです。
※2017年rise春号より抜粋