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多種多様な鮮魚に恵まれた 天草 海の幸

 熊本県の南西部に位置する天草諸島。有明海、八代海(不知火海)、天草西海、天草灘の4つの海に囲まれた天草には実に多種多様な魚介が水揚げされる。天草の鮮魚を全国各地の飲食店に卸す天草かついち(株)の丸木勝一社長がそうした豊富な魚種の中から秋、冬に旬を迎えるお勧めの鮮魚をセレクト。「天草 海の幸」にスポットを当ててその魅力をご紹介する。

4つの海に囲まれた諸島

熊本県熊本市の南西、宇土半島を抜けた先の海には大小100を超える島々が浮かぶ。天草諸島は約225km²の上島、約574km²の下島を主島とするが、この2島のみで市場・漁港の数は15カ所以上。内海の有明海と八代海(不知火海)、外海の天草西海、天草灘という4つの海に囲まれ、古くからそれぞれの海の特性に合った漁が盛んに営まれてきた。 「車エビ、伊勢エビ、マダイ、マダコが天草を代表する海の幸」と言うのは、天草で鮮魚、活魚の卸業を手がける天草かついち(株)代表取締役社長の丸木勝一さん。「たとえば、外海の天草西海は荒波にもまれたマダイ、天草灘は伊勢エビがよく獲れますし、有明海は良質なマダコが豊富に水揚げされます。内海の八代海は比較的波が穏やかなため、マダイやブリなどの養殖が盛んです」と説明する。

  • 天草市内の中心部にある本渡魚市場
  • 活魚の競りの模様。鮮魚と変わらないほど活魚の競りスペースが大きく、天草全域から多様な活魚が集められていた。

脂が乗った冬のコノシロ

天草かついちでは地元だけでなく、全国各地の飲食店にも鮮魚を卸しているが、ここでは秋~冬に旬を迎える天草の海の幸を丸木社長に選んでいただいた。
上天草が「養殖発祥の地」と言われる車エビは全国的にもよく知られた天草の名産品。また、天草では天然マダイが豊富に水揚げされるが、「同じマダイでも天草西海と八代海で育ったものでは脂の乗りや身の締まりなど魚の特性が変わるんです」と丸木社長は説明する。
天草ならではの鮮魚として挙げられるのがコノシロだ。出世魚であるコノシロは江戸前寿司などでシンコ、コハダとして利用されることが多いが、天草では成魚であるコノシロを刺身や酢締めなどにして食す。「外海にもまれて身が締まったコノシロは、内海の有明海に移り住み、旬の冬までにたっぷりと脂を蓄えるんです」と丸木社長は言う。

熊本県下の生産者を応援

 この他にも、「ガラカブ」という呼び名で親しまれる冬の高級魚であるカサゴ、鮮やかな貝殻が印象的なヒオウギ貝など、商品化するとお客様の目を惹くような個性的な魚種も豊富。下記に別掲した通り、天草にはさまざまな鮮魚の郷土料理があり、それらもメニュー開発のヒントに活用できる。
ご存じの通り、2016年4月14日以降に発生した「熊本地震」により、熊本県下の生産者は多大な被害を受けた。ここでご紹介した天草の海の幸をはじめ、熊本には肉、魚、野菜などさまざまな名産品がある。生産者の復興支援の一環としてそうした食材を積極的に導入してみてはいかがだろうか。

  • 車エビ
    「熊本県の魚」にも指定された天草を代表する水産物。明治38年頃に上天草市で車エビの畜養がはじまったため、「車エビ養殖の発祥の地」とされている。車エビは旨味成分(遊離アミノ酸)の含有量がエビ類の中でトップクラス。王道の天ぷらではエビの風味と上品な甘みが引き立ち、刺身ではプリプリとした食感と濃厚な甘みを味わえる。
  • 伊勢エビ
    「伊勢エビは車エビ、マダイ、マダコに並ぶ天草を代表する海の幸」と説明する丸木社長。天草では8月下旬に伊勢エビ漁が解禁され、秋季に最盛期を迎えるが、天草南部に位置する牛深漁港は全国でも有数の伊勢エビの漁獲高を誇る。
  • マダイ
    古くから天然マダイの産卵場、稚魚の育成場として知られていた天草近海。晩秋に水揚げされる「紅葉鯛」は脂が乗りながら、外海の天草西海の荒波にもまれて身が締まる。マダイの養殖も盛んで、「天草荒波鯛」や「天草さくら鯛」、「みやび鯛」などのさまざまなブランド魚を生産している。
  • コノシロ
    5cm前後を「シンコ」、8cm前後を「コハダ」、12cm前後を「ナカズミ」などと呼ぶ出世魚で、15cm以上の成魚を「コノシロ」と呼ぶ。江戸前寿司ではシンコ、コハダが珍重されるが、天草では脂が乗ったコノシロを刺身や酢締め、塩焼きなどにして食す。
  • アカハタ
    近年、天草で水揚げ量が増えている「アカハタ」。高級魚として知られる「クエ」の仲間であり、体長は30cm前後まで成長する。身に透明感がある白身魚で、洋食ではポワレやアクアパッツァ、中国料理では清蒸魚(中華風蒸し魚)などで重宝される。
  • ガラカブ
    和名は「カサゴ」だが、熊本では「ガラカブ」という呼び名で親しまれる。ゴツゴツとした強面の見かけに反し、刺身や塩焼き、煮付けなどさまざまな料理に向く。天草では通年水揚げされるが、最盛期は1~2月であり、熊本を代表する冬の高級魚。
  • マアジ
    天草周辺の瀬で育ったマアジはたっぷりと脂が乗り、身も締まっていてコリコリとした歯応えがある。一本釣りされた天草のマアジは「天草灘アジ」、「天領アジ」、「あまくさあじ」などのブランド魚として全国でも高い評価を受けている。
  • ヒオウギ貝
    黄色、赤、オレンジ、紫など、貝の鮮やかな色彩が印象的な貝。ホタテと同じイタヤガイ科の二枚貝で、房総半島から南の広い地域に生息するが、天草は三重・志摩や大分・佐伯とともにヒオウギ貝の主要な養殖地となる。
  • 天草の鮮魚、活魚の卸業を手がける天草かついち(株)代表取締役社長の丸木勝一さん。
  • 熊本県南西部に位置し、上島、下島を主島として大小100余りの島々からなる天草諸島。上島、下島だけで15カ所以上の漁港を有するなど水産業が盛んな地域である。北は有明海、東~南東は八代海(不知火海)、北西は天草西海、南西は天草灘に囲まれ、それぞれに漁場として異なる特性を有するため、季節ごとに多様な魚種が水揚げされる。
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