第95回箱根駅伝
初優勝インタビュー
東海大学

第95回箱根駅伝は東海大学が初の栄冠に輝いた。
5連覇を目指した青山学院大学と、前回往路を制した東洋大学との〝3強対決〟は見応え十分。
それぞれが持ち味を発揮した大激戦は多くのファンを魅了した。
東海大学・両角速駅伝監督と、8区で22年ぶりに区間新記録を塗り替えて
金栗四三杯(最優秀選手賞)を獲得した小松陽平(3年)が正月の熱戦を振り返った。

東海大学として初の箱根駅伝Vを達成
「想定をはるかに超える走りができた」

両角 速 駅伝監督

初優勝の要因

箱根駅伝の初出場から46年。自らもかつて母校のたすきをつないだ両角速駅伝監督が東海大学を初の総合優勝に導いた。就任8年目での悲願達成だった。
「今までにない反響で、改めて箱根駅伝の注目度の高さを実感しています。大学にとっても悲願でありましたし、関係者から多くの喜びの声をいただきました。外部の方もお花やメッセージをくださったり、祝電もありましたし、たくさんの人に喜んでいただきました。私の恩師であり、前任者でもある新居利広先生はフィニッシュ後、一番に電話をくださりまして、うれしかったですね」

東海大学は3区の青山学院大学・森田歩希(4年)、4区の東洋大学・相澤晃(3年)の〝連続区間新記録達成〟に圧倒され、4区終了時点では先頭の東洋大学から2分48秒差の2位。総合優勝のために「往路優勝」を最低条件に掲げていた東海大学は、5区の西田壮志(2年)の区間新記録(区間2位)で反撃を開始した。往路優勝には届かなかったものの、5区終了時点ではトップの東洋大学と1分14秒差の2位につけた。6区の中島怜利(3年)は10日前に左くるぶしを痛めて不安もあったが、東洋大学との差を6秒短縮。7区の阪口竜平(3年)が後半勝負の走りで4秒差まで急接近し、8区の小松陽平(3年)で大逆転。東洋大学を一気に突き放して勝負を決めた。
「勝因はいろいろあると思うんですけど、直接的にはブレーキがなかったことと、数区間で想定をはるかに超える走りができたことだと思います。例年のデータと過去の選手と比較して私が設定タイムを決めるんですが、今回は10人全員がクリアしました。特に良かったのは5区・西田、7区・阪口、8区・小松ですね。また、2区の湯澤(舜、4年)、3区の西川(雄一郎、3年)、西田、小松、アンカー10区の郡司(陽大、3年)と、昨シーズンまでくすぶっていた芽が一気に出てきて、これまでの経験者以上の力を発揮した。それがチームとして大きなパワーになったと思います」

往路優勝は東洋大学、復路優勝は青山学院大学に譲ったが、今回はコンディションに恵まれたこともあり、総合タイムは10時間52分09秒と設定タイムを8分近くも上回った。

目指すはあくまでも「世界」

大学にとって悲願の〝初優勝〟を成し遂げたが、今後も「世界」を目指すというコンセプトは変わらないという。
「箱根駅伝の優勝は期待されてきたことなので、監督としてはホッとしているのが正直なところです。ただ、日が経つごとに余韻は薄れていきますし、勝ったから何かが大きく変わることはありません。これですべての仕事が終わったわけではなく、新たなことに向けてのスタートだと思っています。これまでも『箱根駅伝から世界へ』ということを考えながらやってきたので、箱根駅伝王者としてもっと攻めていきたいですね。チームとしては箱根駅伝が中心になりますが、個人として活躍できる選手を育てていかないといけません。館澤(亨次、3年)は1500m、關(颯人、3年)と鬼塚(翔太、3年)は5000mあたり。小松も5000mの北海道記録を抜きたいと言っています。それぞれ思惑がありそうなので7月までは各自の課題に取り組み、8月から箱根に向けてしっかりとやっていくことになると思います」

2019年はドーハでの世界選手権があり、2020年には東京オリンピック五輪が控えている。東海大学は現3年生の黄金世代を中心に〝世界〟を目指していく。

今季は11月下旬に記録会を入れずに富津合宿(千葉)で走り込み。例年と調整方法を変えたことが本番での安定感につながった
富津合宿では両角監督がバイクで移動しながら選手たちの走りをチェックした
8区で従来の区間記録を22年ぶりに更新し、先行していた東洋大学を逆転する快走を見せた小松。学生三大駅伝初出場ながらチームの初優勝に大きく貢献した

8区で22年ぶりの区間新、初優勝の立役者に
「120点と言ってもいいくらいの走りができた」

小松陽平(東海大学・3年)

レース4日前に8区出走が決定

8区で東洋大学を抜き去り、22年ぶりの区間新記録を叩き出したのが東海大学3年の小松陽平だ。東洋大学・鈴木宗孝(1年)の背後で力をためると、14.6kmでスパート。8区の難所と言われる遊行寺の坂も力強く駆け上がり、1997年に山梨学院大学の古田哲弘が樹立した区間記録を16秒更新する1時間3分49秒で21.4kmを走破した。
「映像で自分の走りを何回も見たんですけど、やっぱりいい走りができていましたね。100点満点というか、120点と言ってもいいくらいの走りができたんじゃないかなと思います。1時間5分30秒が設定タイムでしたけど、特にタイムは気にしていなくて、東洋大学に勝ってくることを第一に考えていたんです。前半、鈴木君の後ろにつかせてもらって、体力を温存することができたのが大きかったのかな。スピードは自分でもあるほうだと思っているので、持ち味を生かせる距離まで引き寄せて、そこから一気に行きました」

小松は夏に左足首を捻挫した影響で、10月の出雲駅伝と11月の全日本大学駅伝に出場できなかったが、その後は好調をキープ。復路メンバーの候補としてスタンバイしていた。10日前に6区の中島が左くるぶしの痛みを訴えたため、6区を走るための準備もしたが、中島の状態が急速に回復。最終的には本番4日前に8区出走を言い渡された。
「11月の上尾ハーフも調子は良かったんですけど、夏に練習ができていなかった分、後半粘り切れなかった(1時間3分07秒の自己新で16位)。その後の合宿で距離を意識してスタミナをつけていきました。12月15日あたりからピークが続いていて、これまで学生駅伝に出場したことがなかったので、箱根は何区でもいいから走りたいと思っていました。上りが得意というわけではないので、8区での走りには自分でもビックリしています」

一躍、箱根駅伝のMVPとして注目を集める立場となった。
「今回でスタミナも自信がつきました。入学当初と比べたら鬼塚たちにだいぶ近づいたと思いますね。日の丸を背負うことは意識してなかったんですけど、これを機にオリンピックや世界選手権など日本代表を目指してみようかなという欲が出てきました。2020年の東京オリンピックはちょっと無理だと思うので、次のパリオリンピックで狙えたらいいなと思っています」

第95回箱根駅伝の最優秀選手に選ばれた東海大学の小松陽平
一躍注目を浴びる立場となった小松。トラックシーズンはどんな活躍を見せるのか

第95回箱根駅伝 優勝 東海大学

区間(距離) 選手名(学年) 順位 区間成績
1区(21.3km) 鬼塚 翔太③ 6位 6)1.02.43
2区(23.1km) 湯澤  舜④ 5位 8)1.08.05
3区(21.4km) 西川雄一朗③ 4位 7)1.03.02
4区(20.9km) 館澤 亨次③ 2位 2)1.02.37
5区(20.8km) 西田 壮志② 2位 2)1.11.18=区間新
6区(20.8km) 中島 怜利③ 2位 2) 58.06
7区(21.3km) 阪口 竜平③ 2位 2)1.02.41
8区(21.4km) 小松 陽平③ 1位 1)1.03.49=区間新
9区(23.1km) 湊谷 春紀④ 1位 2)1.09.36
10区(23.0km) 郡司 陽大③ 1位 3)1.10.12

協力:月刊陸上競技/陸上競技社