〝夏の風物詩〟トワイライト・ゲームスを観に行こう!
毎年恒例、関東学生陸上競技連盟主催の『トワイライト・ゲームス』が今年で15回目を迎える。関東学生陸上競技対校選手権大会(関東インカレ)や日本選手権で上位に入った選手など、招待された選手だけが出場できるこの大会。競技開始は午後で、夕暮れから夜に向かって学生役員たちがBGMやアナウンスで選手・観客を盛り上げる、まるで海外競技会のような雰囲気は、陸上競技ファンにとって楽しみのひとつ。今では〝夏の風物詩〟となっている。
今年は7月28日(日)に神奈川県横浜市の慶應義塾大学日吉陸上競技場で開催。学生だけでなく、実業団のトップ選手や韓国からの海外選手たちも出場し、まさに〝オールスター〟とも言えるアスリートたちが競演する。それを目の前で楽しめる臨場感満載の大会とあって、ドリンクや大会公式プログラムがついた観戦チケットは毎年抽選になるほど大人気の大会だ(応募はすでに終了)。
代々木公園陸上競技場(織田フィールド)で行われていた一昨年までは当選者のみ観戦可能だったが、昨年から慶應義塾大学日吉陸上競技場が会場となり、ホームストレート側スタンド(当選者エリア)以外は無料で誰でも入場できるようになった。
会場は日吉駅を出てすぐとアクセスも抜群。大学のグラウンドということもあり、トラックまでの距離が近く、選手たちの息づかいや歓喜の雄たけび、表情まで感じ取ることができるのも魅力だ。
陸上競技の〝夏祭り〟であるトワイライト・ゲームスは7月の最終日曜日に開催。ビール片手に、日本トップアスリートたちの〝超人的〟なパフォーマンスに酔いしれてみては?
大会のトリを飾る注目の100mには、今年も学生スプリンターたちが出場する。なかでも宮本大輔(東洋大学2年)には注目が集まる。中学記録(10秒56)、インターハイ2連覇と数々の偉業を成し遂げてきた宮本。関東インカレ1部100mでは、ルーキーイヤーの昨年から2連覇を果たしている。今年5月の関東インカレ決勝では追い風参考ながら9秒台に迫る10秒02(+4.3)をマークした。続く6月の日本学生個人選手権の準決勝でも10秒13(+2.3)と、好記録を連発している。スタートからの自身も愛好する〝新幹線〟のようなスムーズな加速は見応え充分。10秒23の自己ベストを更新できるか。
他にも、10秒29がベストで、宮本ともにユニバーシアードにも出場したデーデー・ブルーノ(東海大学2年)や、昨年の国体少年A100m優勝で、今年招待選手として出場したU20フランス選手権でも優勝を飾った瀬尾英明(順天堂大学1年)が出場する。さらに、10秒13の自己ベストを持ち、日本選手権200mで優勝経験のある原翔太(スズキ浜松AC)も参戦予定。フィナーレを飾るにふさわしい好レースとなりそうな予感が漂う。
日本を代表するアスリートが集うのも見どころのひとつだ。400mには、2016年リオデジャネイロ五輪代表のウォルシュ・ジュリアン(富士通)が出場予定。近年、日本を代表するロングスプリンターとして牽引する存在で、昨年のアジア大会、今年のアジア選手権も代表として活躍している。5月の世界リレーでは4×400mリレーの1走を務め、日本の4位入賞と世界選手権出場権獲得に大きく貢献した。今年は日本選手権も2連覇を達成し、ドーハ世界選手権の参加標準記録(45秒30)を突破すれば世界選手権代表に内定する。
対する学生陣は、ウォルシュとともにアジア選手権・世界リレー代表として活躍した若林康太(駿河台大学4年)が迎え撃つ。前半から飛ばすウォルシュと、後半の粘りに絶対の自信を持つ若林。一体、どんな結末が待つのだろうか。
400mハードルには、関東インカレで世界選手権の参加標準記録を突破する49秒25で優勝した豊田将樹(法政大学4年)がエントリー。日本選手権では優勝こそ逃したが、学生歴代8位となる49秒05の自己新で2位に食い込んだ。ユニバーシアードでも4位と活躍。期待のハードラーがいよいよ本格化した印象だ。その豊田の同級生で、4年前のインターハイ王者・高田一就にも注目。関東インカレは豊田に次ぐ2位で、高校時代に出した自己記録に0.06秒と迫る50秒31で走破した。4年ぶりの自己新の瞬間が見られるかもしれない。この世代のヨンパー選手は実力者揃いで、関東インカレの上位に来た選手たちによる〝再戦〟は期待大だ。
日本代表と言えば、やり投の第一人者・新井涼平(スズキ浜松AC)の投てきは見逃し厳禁。自己記録は日本歴代2位の86m83で、過去にオリンピック1回(16年)、世界選手権2回(15、17年)の出場を誇る。日本選手権は今年で6連覇。世界選手権の参加標準記録(83m00)を超えれば、その時点で即代表に内定する。
国士舘大学出身の新井にとって、ライバルとなるのが〝後輩たち〟だ。今年の日本選手権で3位、自己ベスト80m18(日本歴代7位)の小南拓人(筑波銀行)や、今年関東インカレ初優勝(79m33)で昨年は79m42(日本歴代10位、学生歴代4位)を投げている長沼元(国士舘大学4年)らと80m超え対決が実現するかもしれない。芝生を飛び越えていきそうな豪快な投げ合いは迫力満点だ。
100mは関東インカレの再戦となりそうだ。100m、200m、4×100mリレーの3冠を獲得した湯淺佳那子(4年)を筆頭に、100m2位の山田美来(2年)、同4位の福田真衣(3年)という日本体育大学勢が出場する。
対するは、日本体育大学の表彰台独占を阻んだ青野朱李(山梨学院大学1年)、調子を上げてきた伊藤有那(青山学院大学3年)らによる熾烈な争いとなりそう。4×100mリレーも、戦力が充実する日本体育大学と青山学院大学の覇権争いが見どころのひとつ。関東インカレでは0秒41差で日本体育大学が優勝したが、今回も同校が譲らないか、それとも青山学院大学がリベンジを果たすか。
関東インカレの4×400mリレーを10年ぶりに制覇した早稲田大学のメンバーたちも見逃せない。エースの小山佳奈(3年)と村上夏美(2年)は400mに出場予定。今大会の種目は専門の400mハードルではないが、小山は関東インカレでは400mも制しており、力強い走りで頂点を狙う。早稲田大学勢は400mハードルには関東インカレ2位、日本選手権3位の関本萌香(2年)、800mには竹内まり(4年)が出場予定だ。
小山の400mに並々ならぬ思いで対峙するのが岩田優奈(中央大学4年)。大会2連覇中で、昨年は53秒86の大会新記録も樹立して女子MVPを獲得。400mを主戦場とする岩田にとって、関東インカレに続く連敗をするつもりはないだろう。
女子100mハードルも注目だ。自己ベスト13秒39で関東インカレ覇者の藤森菜那(明治大学4年)と、今季から陸上競技に復帰して日本選手権でも3位に入った寺田明日香(パソナグループ)が出場する。
寺田は2009年に13秒05のU20日本記録を樹立。ケガの影響でいったん2013年に現役を退いたが、出産と7人制ラグビー挑戦を経て陸上競技に復帰。今季は13秒15をマークしている。対する藤森は静岡・入野中3年時にU18規格で13秒66の中学最高を出すなど中学・高校時代から第一線で活躍し、大学の最終学年となった今季再び上昇カーブを描いている。
ジュニア時代から「天才」と呼ばれた2人が、充実のシーズン前半戦を締めくくる好タイムを叩き出すか。
女子フィールド種目で有力選手がそろったのが走高跳。関東インカレ上位選手がズラリと並ぶが、絶対的な優勝候補が不在で混戦模様だ。
関東インカレ・チャンピオンは竹内萌(大東文化大学3年)で、1m77の自己新を跳んで勢いづく。また、1m80の自己ベストを超える選手が、1m83の仲野春花(ニッパツ)、 1m82の中西美早(日本女子体育大学4年)、1m80の髙橋渚(日本大学2年)、石岡柚季(日本女子体育大学4年)と4人。今季、日本でまだ1m80以上を跳んだ選手はいないが、過去3大会は優勝記録が1m80を超えており(外国籍招待選手含む)、トワイライト・ゲームスと走高跳の〝相性〟はバッチリ。複数人による1m80超え対決となるか見ものだ。
トップアスリートたちが集結する日吉陸上競技場で、好記録・好パフォーマンスの〝花火〟を堪能しよう。
(文/向永拓史)
(写真=月刊陸上競技/陸上競技社)