「箱根駅伝への想いをつなぐ」インタビュー特集
箱根駅伝の歴史を伝える〝聖地〟のひとつ
箱根駅伝ミュージアム

ミュージアム館内を巡り、箱根駅伝の秘話や
世界へ羽ばたいた選手たちの経歴や思い出などを語り合う

柏原竜二さん(東洋大学OB・現 富士通)×勝俣真理子さん(箱根駅伝ミュージアム館長)

前編後編

柏原さんにとってのヒーロー「今井 正人」

続いて、箱根駅伝のコースの中でも、地元「箱根」にスポットを当てた展示をしているエピソードゾーンに移動した2人。「山上りのスペシャリストたち」と題した展示の中にはもちろん柏原さんのコーナーも。数々のドラマを生んできた5区。柏原さんは、その頃の思い出をなじみ深いコーナーの前で語り合った。

「ここでは、ミュージアムのある往路フィニッシュ地点にちなんで、往路優勝校に贈呈される寄木細工の記念トロフィーや『山上りのスペシャリストたち』という展示を行っています。もちろん柏原さんの紹介もあるんだけど…、柏原さんにとってこの中にヒーローと呼べるような人はいる?」(館長)

「僕にとって箱根駅伝でのヒーローは当時、順天堂大学で活躍されていた今井正人さんです。今井さんは地元・福島県の先輩でもありますし、高校時代に今井さんの箱根駅伝での伝説的な走りを観て、今井さんの走った区間を走ってみたいというのが、箱根駅伝で5区を走った純粋なきっかけです。全国都道府県駅伝でご一緒させていただいたり、今でもイベントなどで交流もありますが、とにかく今井さんの走った区間や想いを知りたかった。」(柏原)

箱根駅伝から世界へ!~オリンピックゾーン~

箱根駅伝とオリンピック。実は深い関係にあるこの2つ。オリンピックゾーンでは、箱根駅伝から世界の檜舞台へと巣立っていった歴代のオリンピック選手たちを紹介している。母国開催のオリンピックを間近に控えた今、箱根駅伝にゆかりの深い2人に箱根駅伝とオリンピックについて語ってもらった。

「日本が初参加したオリンピックのストックホルム大会(1912年)で、 ( かな )( くり )四三 ( しそう ) さんが途中棄権したことで、日本人のオリンピック選手を育成するための施策として〝駅伝〟が考案され、誕生した箱根駅伝。最初は4校しか出場しなかった箱根駅伝も、今や予選会を含めて多くの選手たちが目指すものになりました。『箱根駅伝から世界へ』という合言葉を体現し、リオデジャネイロ・オリンピックではマラソンに出場した選手は全員箱根駅伝を経験した選手が走りました。箱根駅伝出身のオリンピック選手が金メダルを獲得したことはまだありませんが、『箱根駅伝から世界へ』という想いは受け継がれていると思います。」(館長)

「知り合いに東京2020オリンピックは何を観たい?と聞くと、陸上競技を挙げる人が多い。やっぱりオリンピックの花形って〝陸上競技〟なんだと思います。長距離や駅伝をやっていると、最初は箱根駅伝を目指す選手がほとんどです。
でも今は、選手たちが、箱根駅伝での活躍を経て次のステップで自分たちがどこを目指すのか?をちゃんと理解しているのが凄いと思います。実業団やプロに送り出すために、各大学がスピード強化に取り組んでいますし、箱根駅伝を走った大迫選手(早稲田大学OB)がマラソンで2時間5分50秒と6分台の壁を破ったり、大学を卒業した選手たちが大学の監督さんたちを刺激していますよね。選手の存在が監督の刺激となり、監督も選手に刺激を与えるように、互いに高め合って行く関係性になっていくといいなと思います。」(柏原)

私たちにとって箱根駅伝とは?

ミュージアムを巡り終わった2人。勝俣館長と柏原さんにとって、箱根駅伝とはどのようなものか聞いてみた。

「箱根駅伝は、この町に住む人々にとって〝生活の一部〟ですね。お正月やお盆といった年中行事に近くて、私は箱根駅伝を中心に生活が回っている感じです。
また、箱根駅伝には毎年たくさん、選手たちのドラマがあります。東京から100km超という距離、標高差も800m以上もあるわけですから。お正月の寒い時期、雪景色の時もあれば、向かい風で走るのが大変な時もある。走ってきた選手の目を見たら潮風で浜の砂が目に入って真っ赤だったりもする…。優勝校や上位の大学は笑顔でフィニッシュするんですけど、後の方になるほど苦しそうな表情になって、倒れこむ選手もいる。往路のフィニッシュなので、選手の表情を見ているだけでもドラマが詰まっています。
このミュージアムは、箱根駅伝をより多くの方々に知っていただくための場所であり、箱根駅伝の関係者の方々が箱根の家だと思って立ち寄ってくれる場所であるといいなと思います。」(館長)

「いよいよ100回を間近に控える箱根駅伝は、戦争を乗り越えて続く歴史ある大会で、箱根駅伝ミュージアムは、スポーツもこれだけ長く続くとこれだけの効果があって、人々を魅了する力があるのだと伝えていける場所であると思います。歴代の名勝負をダイジェストで観られるミュージアムシアターでは、もう何回も観ているはずなのに、録画だと分かっているのに、悲鳴のような声や歓声が上がったりする(笑)。そういう場面に出合うと、ここは僕らや選手、監督にとっても〝箱根の家〟と感じる事ができ、来館者の方々と分かち合える場所なんだと思います。」(柏原)

プライベートでも度々、箱根駅伝ミュージアムを訪れているという柏原さん。
「館内にいるとお客さんに『ほら映ってるよ!』と声をかけられるんですよ(笑)。走っている時、沿道の声援はちゃんとは聞き取れなくて。『がんばれ!』が重なって、うわーという大きな音に……半日ぐらい左耳が聞こえないくらいで。でも、ここでの応援はちゃんと聞こえるので嬉しいですね。」(柏原)

「実は、3日の朝は箱根駅伝ミュージアムの中が6区の選手たちの待機場所になるんですよ。」と勝俣館長が教えてくれた。館長自身、そんな風な使い方は全くイメージしていなかったが、まだ寒い箱根の朝、レース前に入口の石段に毛布を敷いて座って待機する選手や監督・コーチの姿を見て、「どうぞ中へ。」と招き入れたのがきっかけで、毎年多くの大学の控え場所として使ってもらっているそうだ。復路のスタート前に選手たちが集う場所でもある——箱根駅伝ミュージアムはファンにとってますます〝聖地〟化しそうだ。

箱根駅伝のドラマ、箱根駅伝の歴史が詰まった箱根駅伝ミュージアム。そしてこのミュージアムは、新たなドラマが箱根駅伝から生まれる度に変化し、次代へつないでいく場所でもある。箱根を訪れた際は、ぜひ足を運んで、箱根駅伝のこれまでとこれからに想いを馳せてみてほしい。

箱根駅伝ミュージアムについて:

住所・お問い合わせ先:

〒250-0521 神奈川県足柄下郡箱根町箱根167

TEL 0460-83-7511
FAX 0460-83-7511

開館時間

・平日:10:00~16:30
・土日祝:9:30~17:00
共に入館は閉館の30分前まで

休館日:無休

※冬期営業については直接お問い合わせください