白熱! 第98回関東インカレ
学生ランナーたちによる4日間の熱戦をレポート

5月23日(木)から26日(日)にかけて、神奈川県相模原市の相模原ギオンスタジアム(相模原麻溝公園陸上競技場)で「第98回関東学生陸上競技対校選手権大会(通称:関東インカレ)」が行われた。時には気温30度を超える暑さと戦いながら、長距離の学生ランナーたちが熱戦を繰り広げた。歓喜の笑顔、悔し涙など、さまざまな表情が垣間見えた学生たちによる4日間の模様をお届けする。

男子1部は法政大学の佐藤敏也が大活躍!!
東海大学は1500mでワン・ツー

男子1部には、今年1月の第95回箱根駅伝で総合優勝した東海大学や同3位の東洋大学、伝統校の早稲田大学、中央大学、日本大学らが名を連ね、今年も激しい争いが展開された。1500mは東海大学がワン・ツーを占め、飯澤千翔が1年生ながら、優勝を達成。5000mと10000mは駿河台大学のジェームズ・ブヌカ(2年)がそれぞれ13分45秒03、28分37秒15で2冠を成し遂げた。そのほか、ハーフマラソンは日本大学の留学生である、チャールズ・ドゥング(1年)が2位に17秒差をつけて圧勝し、3000m障害は阪口竜平(東海大学・4年)が青木涼真(法政大学・4年)の3連覇を阻止して初Vに輝いた。

その中でも大いに存在感を発揮したのが、法政大学のエース・佐藤敏也(4年)だ。初日の10000mでは優勝したブヌカとわずか4秒差の3位(28分41秒58)に食い込むと、最終日(4日目)の5000mでも気温30度を超える中で13分59秒51の自己ベストをマークして4位。両種目で日本人トップの座を奪い、学生長距離界にその名を轟かせた。
佐藤は箱根駅伝で1年時から2年連続で山下りの6区をともに区間3位と好走し、2年時の2月には熊日30キロロードレースで、当時学生歴代5位(現8位)の1時間30分02秒(4位)をマーク。3年時は10000mのベストを28分35秒98まで伸ばし、箱根駅伝でもスピードランナーの集まる1区で区間5位という実績を残した。
これまでも堅実にまとめる走りが持ち味だったが、今大会では10000mで27分台を持つ強力な留学生と対等のレースを繰り広げ、より一層株を上げた。2種目で結果を残した佐藤は「うれしいというよりは実感がない」と本音を漏らしつつ、「最後の箱根では2区で区間賞を狙いたい」と〝エース〟としての意気込みを口にした。

男子1部の長距離2種目で日本人トップ(5000m・4位、10000m・3位)に輝いた佐藤敏也(法政大学・4年、左)。ユニバーシアード代表の相澤晃(東洋大学・4年、右)は本調子でなく、5000mで5位にとどまった

〝箱根駅伝有力校の成績(男子1部)
チーム別得点は東海大学がトップ

箱根駅伝に出場するようなランナーが多数出場した男子1部の1500m、5000m、10000m、ハーフマラソン、3000m障害の5種目で獲得した対校得点を集計したところ、以下のような結果となった。

■関東インカレ・男子1部の中長距離種目対校得点

  • 東海大学33点
  • 法政大学27点
  • 日本大学20点
  • 東洋大学19点
  • 国士舘大学18点
  • 駿河台大学16点
  • 早稲田大学13点
  • 中央大学9点
  • 順天堂大学8点
  • 城西大学7点
  • 明治大学5点
  • 日本体育大学3点
  • 山梨学院大学2点
  • 筑波大学0点
  • 国際武道大学0点
  • 大東文化大学0点

※各種目とも、1位が8点、2位が7点……8位が1点

東海大学は1500mの1位、2位独占などで得点を稼ぎ、箱根駅伝王者の貫禄を見せつけた。1500mでは飯澤千翔が日本選手権2連覇中の先輩・館澤亨次(4年)にわずか0秒01差で公式戦3連勝目を挙げるなど、入学からわずか2ヵ月弱のルーキーがビッグタイトルを獲得。「練習では館澤さんと木村さん(理来、10位)の後ろをずっと走っていたので、勝ててすごくうれしいです」と喜びを表した。一方で館澤は「完敗です」と素直に後輩の勝利を称えた。

男子1部・1500mでは東海大学の先輩・後輩対決がヒートアップ。1年生の飯澤千翔(左)が4年生の館澤亨次を0.01秒差で下し、館澤の3連覇を阻止した

そのほかにも阪口が3000m障害で優勝を飾り、箱根駅伝の5区(山上り)で区間2位(区間新)と快走した西田壮志(3年)がハーフマラソンで3位となったが、エース級ランナーが出場した5000mと10000mでは入賞者ゼロ。目標としていた長距離ブロックでの「45点」には届かず、仕上がりに課題を残した。

東洋大学はエースの相澤晃(4年)が5月にゴールデンゲームズinのべおか、日本選手権と10000mのレースを2回走ったことから5000m一本に絞ったが、疲労の影響もあって5位どまり。箱根駅伝1区で2年連続区間賞の西山和弥(3年)も万全とは程遠い状態で、5000m、10000mとも入賞を逃した。

それでも、ハーフマラソンではいずれも学生三大駅伝の出走経験のない宮下隼人、蝦夷森章太(ともに2年)、定方駿(4年)が2位、4位、6位と〝トリプル入賞〟を達成。殊勲の宮下は「チームのためにしっかり得点を取ることが目標でした。3人で入賞できたので良かったです」と頬を緩ませた。

チームは箱根駅伝で2年連続往路優勝を果たしながら、ともに復路で沈んで総合Vを逃している。新たに台頭してきた3人が加わることによって、課題の選手層に厚みが出てきそうだ。

直近3年間の箱根駅伝で8位、6位、6位と上り調子の法政大学は、前述の佐藤敏也の活躍に加え、3000m障害で青木涼真(4年)が2位、田辺佑典(3年)が4位、人見昂誠(2年)が5位と1種目で16点を荒稼ぎ。青木は大会3連覇を逃したものの、優勝した阪口とは0秒27差。過去2回の箱根駅伝5区(山上り)で計17人をゴボウ抜きしている実力を示した。田辺と人見は学生駅伝未出場だが、ともに高校時代はインターハイの3000m障害で入賞経験のある実力者。長い距離にも対応してくるようだと、駅伝シーズンも活躍しそうだ。

ハーフマラソンで存在をアピールしたのは日本大学だ。初日の10000mで2位だったドゥングが優勝し、日本人エースの阿部涼(4年)が8位に入賞した。ドゥングは北海道・札幌山の手高校から実業団の小森コーポレーションに進み、今年の春に日本大学へ23歳で入学している。「実業団時代は、大会でなかなか優勝できなかった。(初日の)10000mでも負けたので、勝ててすごくうれしいです」と大学生としての初タイトルを喜んだ。今年の箱根駅伝で、9区18位に沈んだ阿部も復調し、ロードシーズンに向けて手応えをつかむ結果となった。

毎年激しい争いが繰り広げられる、男子1部と男子2部の入れ替えは、今年は明治大学と大東文化大学が〝2部降格〟の憂き目を見ることになった。明治大学は10000mで27分台を持つエースの阿部弘輝(4年)が5000mで7位にとどまり、1500mで7位(佐久間秀徳・2年)、10000mで8位(小袖英人・3年)と3人の入賞者を出したものの、思ったほど得点を伸ばせなかった。大東文化大学は中長距離ブロックで得点を挙げられず、秋以降の駅伝シーズンに大きな課題を残した。また、駿河台大学は初の1部で残留を果たした。

東洋大学は男子1部・ハーフマラソンで〝トリプル入賞〟を達成。いずれも学生三大駅伝の出走経験のない宮下隼人(左)、蝦夷森章太(ともに2年、右)、定方駿(4年)が2位、4位、6位を占めた
男子1部・3000m障害は阪口竜平(東海大学・4年、中央)と3連覇を目指す青木涼真(法政大学・4年、右)の一騎討ちへ。阪口が8分44秒29で青木を0秒27差で抑え、初優勝を遂げた

男子2部は國學院大學が存在感
桜美林大学は留学生が3種目を制覇

男子2部の長距離は、青山学院大学、駒澤大学、帝京大学など箱根駅伝上位校がそろい、多くの種目で男子1部の優勝記録を上回るハイレベルなレースが展開された。1500mでは桜美林大学の新留学生、ダニエル・カヨウキ(1年)が3分45秒32の大会新で優勝。5000mと10000mは、チームの先輩であるレダマ・キサイサ(4年)が13分44秒57、28分21秒63で2年連続の2冠に輝いた。3000m障害は、男子2部では史上初の4連覇が懸かっていた荻野太成(神奈川大学・4年)が足首を痛めた影響から欠場。レースは1800m付近からのロングスパートを炸裂させた中央学院大学の吉田光汰(2年)が8分59秒67で個人初タイトルを手にした。

そんな中で、特に目を見張る活躍を見せたのが國學院大學の4年生コンビ・浦野雄平と土方英和だ。今年の箱根駅伝で5区区間賞(区間新)を獲得し、大きな注目を集めた浦野は初日の10000mで4位に入ると、最終日の5000mでは6位に入り、2種目で日本人トップを確保。5000mで目標としていた「留学生と勝負」という点では課題を残したが、日本人相手に実力差を見せつけた。

さらに、最終日はハーフマラソンで土方が優勝し、チームとしては2007年に2部10000mを制した山口祥太(現・國學院大學コーチ)以来となる大会制覇。「優勝を第一に考えていました。チームとしての目標は箱根駅伝の往路優勝と総合3位。今年の箱根駅伝ではチーム史上最高の7位で、スローガンに掲げていた『歴史を変える挑戦』を果たすことができましたが、次はさらなる高みを目指したい」と、上位校の間に割って入る気概を見せた。

男子2部・5000m(6位)と10000m(4位)でいずれも日本人トップを飾った浦野雄平(國學院大學・4年)。今年の箱根駅伝では山上りの5区で区間賞(区間新)を獲得しているが、〝平地〟でも学生長距離界屈指の実力を見せた
國學院大學は男子2部・ハーフマラソンでも主将の土方英和(4年)が1時間05分18秒で優勝。浦野とともに3種目で他大学を圧倒し、大きなインパクトを残した

箱根駅伝有力校の成績(男子2部)
駒大、青学大など実力校が得点重ねる

2部の中長距離種目における得点は以下の通り。留学生2人で3種目を制した桜美林大学が29点でトップ。箱根駅伝有力校では駒澤大学、青山学院大学、國學院大學、帝京大学が上位に名を連ねた。

■関東インカレ・男子2部の中長距離種目対校得点

  • 桜美林大学29点
  • 駒澤大学22点
  • 青山学院大学20点
  • 國學院大學16点
  • 帝京大学16点
  • 武蔵野学院大学13点
  • 上武大学12点
  • 東京国際大学10点
  • 創価大学10点
  • 中央学院大学8点
  • 日本薬科大学8点
  • 神奈川大学5点
  • 拓殖大学4点
  • 東京農業大学3点
  • 千葉大学2点
  • 麗澤大学2点

各種目とも、1位が8点、2位が7点……8位が1点
(2点以上獲得した大学のみ記載)

箱根駅伝の連覇が「4」でストップした青山学院大学は、5000mと10000m、3000m障害で入賞者がゼロ。エース級選手の不在・不調があらわとなった。それでも、ハーフマラソンで吉田祐也が4位、竹石尚人が8位とダブル入賞を果たしたほか、1500mでも谷野航平が2位、生方敦也が4位と、4年生4人が最後の関東インカレで意地の入賞。そのほか、1500mではルーキーの中倉啓敦も7位に入った。

谷野と生方は最上級生ながら箱根駅伝未経験。箱根駅伝の優勝経験メンバーの多くが卒業する中、チームの起爆剤となれるか。

駒澤大学は5000mで7位、10000mで6位、ハーフマラソンで2位、5位、3000m障害で3位と各種目で得点を積み重ねた。特に、5000mでは田澤廉(1年)が日本人2番目にフィニッシュ。3000m障害の酒井亮太も1年生ながら表彰台に上り、戦力の底上げが進んでいる印象だ。箱根駅伝のトップ3返り咲きを目指す「平成の常勝軍団」が「令和」でも強さを見せた。

昨年度は出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝のすべての駅伝で「5位」と躍進した帝京大学は、1500m5位、10000m7位、3000m障害で2位、6位と、計4人が入賞した。特に、各校のエース級や留学生が多数出場した10000mで、自己ベストが29分台(29分09秒32)ながら7位(日本人3位)に食い込んだ平田幸四郎(4年)は大健闘。今年1月の箱根駅伝では惜しくも出走メンバーから漏れたが、今後の飛躍を予感させるには十分の走りだった。

そのほかに男子2部で健闘が目立ったのは上武大学。1500mで齋藤優、ハーフマラソンで佐々木守と、4年生コンビがそれぞれ3位に食い込み、チームとして8年ぶりに複数人が関東インカレの表彰台に上った。主将を務める佐々木は「監督には『今年に懸ける思いを走りに表してくれ』と言われていました。今年はチームにエースがいないので、『自分がエースなんだ』という気持ちで1年間を過ごし、箱根駅伝では過去最高順位の13位を目指します!」と、自らの背中でチームを牽引していく覚悟を口にした。

男子2部・1500mは青山学院大学の谷野航平(4年、左から2人目)が日本人トップの2位に。前回王者の生方敦也(4年、写真外)が4位に、1年生の中倉啓敦(右から2人目)が7位に入り、出場した3人全員が入賞を果たした

関東インカレはロードシーズンの〝試金石〟

関東インカレが終わると、次に向かう目標(大会)はチームによって大きく異なる。11月の全日本大学駅伝の出場権を得ていない大学は、6月23日の「全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会」へ。それ以外は7月に北海道で開催されるホクレン・ディスタンスチャレンジなどで自己記録の更新を狙ったり、秋以降の駅伝シーズンに向けた準備に入る選手などさまざま。日本トップクラスの実力者は6月27日から福岡で開催される日本選手権をターゲットにしていく。

いずれにしても、今回の関東インカレは秋以降の駅伝シーズンへ向けた〝試金石〟となる大会になったことは間違いない。好成績を挙げたチームがこのまま突っ走るのか、今回の悔しさをバネに急浮上してくるチームが現れるのか――。各大学の動向を追っていくと、大学駅伝をさらに楽しめるはずだ。