箱根駅伝のエースたちが集結
「関東インカレ」の見どころ

いまや正月の風物詩となった箱根駅伝。ただ、箱根駅伝に出場する学生ランナーは、1年中駅伝を走っているわけではない。彼らは箱根駅伝が終わると「長距離選手」として陸上競技の大会(トラックレース)へと出ていく。そんな学生ランナーたちが一堂に会するのが5月に開催される「関東学生陸上競技対校選手権大会(通称:関東インカレ)」だ。今年は、5月23日(木)~26日(日)に神奈川県相模原市の相模原ギオンスタジアム(相模原麻溝公園陸上競技場)で開催される。箱根駅伝に出場する学生ランナーたちの『真剣勝負』の場へぜひ足を運んでみよう!

箱根駅伝よりも狭き門
各種目1校から最大3人

箱根駅伝に出場する学生ランナーたちが、数多く出場する陸上競技の大会「関東学生陸上競技対校選手権大会(以下、「関東インカレ」という)」。出場できるのは、1種目につき各校3人までと上限が決まっており、学内の選考レースを勝ち抜くのは、箱根駅伝よりも難しい大会と言える。出場する選手たちは各大学から選ばれた精鋭中の精鋭だ。

関東インカレに出場するためには「参加標準記録」を突破する必要がある。標準記録には「A」と「B」の2種類があり、破った記録が「B」だけだと1校からは1人しか出られない。「A」を突破した場合は「B」の選手をもう1人出場させることができるので、1校から3人をフルにエントリーするためには「AAA」または「AAB」の組み合わせが必要となる。

参加標準記録は、男子1部・2部(※3部は2部と同記録)でそれぞれ異なり、有効期限は2018年1月1日から2019年5月6日まで。2017年以前の記録は適用されないため、春先は関東インカレの参加標準記録を突破することを目指して各大学の選手が記録会等のレースに大挙して出場するケースも多い

〝注目種目〟は10000m
留学生も多数参加

関東インカレのエントリーは5月10日に行われ、出場選手が出揃った。中長距離種目の見どころを競技が行われる日程順に紹介しよう。

■第1日(5月23日/木)

大会初日(5月23日)に行われるのは10000m。400mのトラックを25周するレースが男子2部、女子1・2部、男子1部と3連続で行われる。各大学のエース級・準エース級が顔を揃え、留学生も多数参加。注目種目のひとつだ。

男子1部は、前回4位に食い込んでいる西山和弥(東洋大学・3年)のほか、箱根駅伝王者・東海大学からは鬼塚翔太、小松陽平(いずれも4年)、塩澤稀夕(3年)がエントリー。今年1月に行われた第95回箱根駅伝の8区で22年ぶりの区間記録を樹立した小松は、入学時から全国トップ級だった鬼塚の背中を追いかけてきた。4年生となった今回は〝ライバル〟としてチームメイトに挑むことになる。

男子2部は、2年連続で5000mとの2冠を目指す留学生のレダマ・キサイサ(桜美林大学・4年)が優勝候補の最有力。多数いる留学生の中でもキサイサの強さは際立っており、大会記録の28分00秒66(2017年)はもちろん、〝史上最強の留学生〟と言われた山梨学院大学のメクボ・ジョブ・モグスが2008年に樹立した日本学生記録の27分27秒64にどこまで迫れるか注目だ。

キサイサに挑む日本人は前回日本人トップ(4位)だった鈴木塁人(青山学院大学・4年)、箱根駅伝5区で区間新記録を打ち立てた浦野雄平(國學院大學・4年)、日本学生ハーフマラソン選手権大会で2位に入りユニバーシアード代表に内定している中村大聖(駒澤大学・4年)らが中心か。

記録会と異なり、駆け引きのある関東インカレで好タイムを出すのは難しい。どういう展開であれ、28分台で走れるような選手の実力は〝本物〟と言えるだろう。

■第2日(5月24日/金)

大会2日目に行われるのが1500m決勝。前日に予選が行われ、決勝は12人での勝負となる。トラック3周と4分の3周(300m)という「中距離」のカテゴリーに入る種目だが、スピードに自信を持つ選手の参加も多く、中距離を専門とする選手たちとの白熱したデッドヒートが期待できる。

男子1部は、3連覇を狙う館澤亨次(東海大学・4年)と、ベスト記録で館澤を上回る3分38秒65(日本歴代5位)を持つ舟津彰馬(中央大学・4年)が激突しそうだ。5月4日の「ゴールデンゲームズinのべおか」でU20日本歴代4位の3分42秒07をマークし、日本選手権2連覇中の館澤に今季連勝した1年生の飯澤千翔(東海大学)にも注目。男子2部は、生方敦也(青山学院大学・4年)に2連覇がかかる。

激しいスピード変化とラスト勝負が見どころの1500m。有力選手が牽制し合ってスローペースになることもあり、選手同士の駆け引きが面白い

ハイレベルが予想される3000m障害
ハーフマラソンと5000mは豪華メンバー

■第3日(5月25日/土)

大会3日目の長距離種目は3000m障害の予選のみ。決勝に進出できる「12」の枠を目指して各選手がしのぎを削る。

3000m障害は、上に乗っても倒れない障害物が特徴。さらに、トラックの外側(競技場によっては内側)に「大障害」と呼ばれる水濠つきの障害物が1台あり、それらを飛び越えながらフィニッシュを目指す。

今年は例年以上にハイレベルが予想され、男子1部は第94回箱根駅伝の5区で区間賞に輝いた青木涼真(法政大学・4年)に3連覇がかかる。ただ、今季は4月の兵庫リレーカーニバルを阪口竜平(東海大学・4年)が8分37秒48の自己ベストで制し、記録的にも青木の8分40秒20を上回った。大会記録(8分35秒2)を更新すれば42年ぶりの快挙となる。

男子2部は、荻野大成(神奈川大学・4年)が昨年まで3連勝中で、4連覇の偉業をかけた戦いとなる。荻野の自己記録は8分38秒12。大会記録(8分42秒57)を塗り替えて有終の美を飾れるか。

3000m障害はスパートのタイミングが他の長距離種目ほど固まっておらず、独走になってからも予期せぬ転倒で追いつかれたりすることがあるため、最後まで目が離せない展開となることが多い。予選で波乱が起きることも多いので、気になる選手がいればチェックしておこう。

■第4日(5月26日/日)

大会最終日には、男子長距離は1部と2部を合わせて6種目の決勝が実施される。最初に行われるハーフマラソン(21.0975km)は参加人数も多く、競技場外でも選手をより間近で観ることができる。スタート時刻は男子2部が9時00分で、男子1部がその6分後。競技場を中心とした周回コースで行われ、2つのレースをほぼ同時進行で見られる贅沢な時間帯となる。

男子1部は、前回大会で出場した3人が全員入賞を果たしている東海大学から松尾淳之介(4年)、西田壮志、名取燎太(いずれも3年)がエントリーされた。前回4位の西田は第95回箱根駅伝の5区で区間新記録(区間2位)をマーク。松尾は昨シーズンの学生駅伝には出場できなかったが、3月の日本学生ハーフで6位に入った実力者だ。全国高校駅伝1区区間賞の実績を持つ名取は故障に苦しんできたが、大学3年目にしてようやく出番が回ってきた。先頭争いは東海大学トリオが中心になりそうだ。

男子2部は、1部以上の大激戦が予想される。2014年から17年までは4年連続で青山学院大学の選手が日本人トップを占め、前回は帝京大学の2人が日本人ワン・ツー。今年も両校ともに有力選手がエントリーした。青山学院大学は箱根駅伝で2年連続5区を任された竹石尚人(4年)と、昨年の日本インカレ10000mで日本人トップ(3位)を占めた吉田祐也が有力。今年の第95回箱根駅伝では、竹石がまさかの区間13位、吉田は補欠と悔しさを味わった。この大会が健在ぶりをアピールする舞台となるか。帝京大学は第95回箱根駅伝10区で区間賞に輝いた星岳(3年)、同9区3位の小森稜太(4年)、成長株の2年生・中村風馬と、勢いのある選手たちが出場予定だ。

さらに、箱根駅伝の〝花の2区〟で好走した國學院大學の土方英和(4年)、駒澤大学の山下一貴(4年)も参加。終盤のサバイバル戦は必見だ。

そして、長距離種目の最後を締めくくるのが5000mだ。トラック12周半を速い選手は13分台で駆け抜ける。100m平均16秒台、1000mあたり2分50秒を切るスピードは想像以上に速い。

5000m、10000mには多くの留学生が出場。種目によっては男子2部のほうが優勝記録が速くなることも

男子1部は、5月19日の日本選手権10000mにもエントリーしている阿部弘輝(明治大学・4年)と相澤晃(東洋大学・4年)が激突する。二人は福島・学法石川高校時代のチームメイトで、阿部は10000mで27分台を持つ現役学生屈指のスピードランナー。相澤は第95回箱根駅伝4区で区間新記録を樹立し、日本学生ハーフも完勝するなど「学生ナンバーワン」の地位を築きつつある注目のランナー。ほかにも東海大学の關颯人と鬼塚(いずれも4年)、東洋大学の西山(3年)、2年生世代でトップの実績を持つ中谷雄飛(早稲田大学・2年)という豪華メンバーが揃う。留学生も多数出場し、好勝負が見られそうだ。

男子2部は青山学院大学の鈴木(4年)、國學院大學の浦野が(4年)らが、10000mに続いて留学生に挑みそう。5000mは対校戦の総合優勝争い、男子1部残留争い、男子1部昇格争いが佳境に入り、エースたちの走りがチームの命運を握ることもある。前回大会においても、各大学のエース級ランナーが多数出場する中で、明治大学の阿部が3位入賞。これにより、明治大学は2部降格の危機にあったものの、1部に残留することができた。このように、5000mは出場大学にとって非常に重要な種目のひとつである。

長距離だけでなく、関東インカレは他の種目も熱い勝負が繰り広げられる。なかでも注目は、男子1部の走幅跳だ。4月のアジア選手権で金メダルを獲得した橋岡優輝(日本大学・3年)が出場予定で、あと3㎝と迫っている日本記録を関東インカレの舞台で更新するかもしれない。

また、リレー種目も必見で、特にトラックのフィナーレを飾る4×400mリレーは盛り上がりが最高潮に達する。インカレ特有の団体応援風景、会場の大歓声、その中で繰り広げられる選手たちの熱戦――。学生アスリートたちの青春物語を目に焼き付けてほしい。

(写真=月刊陸上競技/陸上競技社)

選手の素顔が垣間見られる表彰台での様子もファンなら必見
関東インカレは長距離以外の種目もレベルが高い。せっかく足を運ぶなら陸上競技の魅力を存分に味わおう