箱根駅伝のエースたちが集結
「関東インカレ」って
どんな大会?

いまや正月の風物詩となった箱根駅伝。ただ、箱根駅伝に出場する学生ランナーは、1年中駅伝を走っているわけではない。彼らは箱根駅伝が終わると「長距離選手」として陸上競技の大会(トラックレース)へと出ていく。そんな学生ランナーたちが一堂に会するのが5月に開催される「関東学生陸上競技対校選手権大会(通称:関東インカレ)」だ。今年は、5月23日(木)~26日(日)に神奈川県相模原市の相模原ギオンスタジアム(相模原麻溝公園陸上競技場)で開催される。箱根駅伝に出場する学生ランナーたちの『真剣勝負』の場へぜひ足を運んでみよう!
(文&写真=月刊陸上競技/陸上競技社)

関東の大学生ナンバーワンを決める大会

箱根駅伝の理念は「箱根駅伝から世界へ」。箱根路を沸かせる各大学のエースたちはオリンピック、世界選手権、ユニバーシアードなど、駅伝シーズンが終わるとそれぞれに『世界』を目指していく。そこまでのレベルではない選手たちも、駅伝シーズン以外の時期はトラックレースへと軸足を移し、トラックで自己記録の更新を狙うことになる。

その中でも、箱根駅伝ランナーがこぞって出場する舞台が“関東インカレ”だ。関東の大学生ナンバーワンを決める陸上競技の大会であり、第1回大会は1919年と、箱根駅伝(1920年)よりも長い歴史を持つ。9月中旬には『日本学生陸上競技対校選手権大会(通称:日本インカレ)』も開催されるが、こちらは駅伝シーズンへの準備を優先して出場を回避する有力選手も多く、関東インカレのほうが〝参加率〟としてははるかに高い。また、1種目に対して1校から最大3人が出場できるため、5000mや10000mなどの人気種目になると、各校のエースたちが顔をそろえてハイレベルな争いが展開される。

関東インカレが何よりも魅力的なのは選手の走りをじっくり堪能できることだ。ロードレースでは一瞬で目の前を通り過ぎてしまう選手たちも、トラックであればスタートからフィニッシュまで一部始終を見ていられる。

そして、選手たちの走るスピードがとにかく速いことに驚かされるだろう。一方で、テレビでは大きく見えた選手が意外と小柄であったり、筋肉質でがっちりしているように見えた身体が実は一切の無駄がそぎ落とされた痩身であったりと、現地に行って初めて気づくことも多い。スタンドで観戦しているだけでも、テレビではわからない選手たちの新たな一面を発見できることだろう。

なお、入場料は当日券のみで1日500円。大会公式プログラムは1,000円で購入できる。

“インカレ”は「対校戦」

関東インカレの正式名称は「関東学生陸上競技対校選手権大会」といい、関東の大学ナンバーワンを決める大会であるのと同時に、大学同士の『対校戦』でもある。男子は大学ごとに1部、2部、3部、女子は1部、2部に分かれ、それぞれ同じカテゴリーの選手たちと競うことになる。

インカレは長距離だけでなく、100m・200mなどの短距離種目や、走幅跳、砲丸投といった跳躍・投てき種目も実施されるため、総合力では長距離以外の種目も強化している大学が強い。各種目で8位までに入賞した選手の所属する大学には優勝8点、2位7点、3位6点……と順位に応じた「対校得点」が与えられ、その合計で「総合成績」が決まる。毎年男子は、2部の上位2校と1部の下位2校は入れ替わることになっており、〝残留・昇格争い〟が白熱する。

日本大学が総合7連覇中の男子1部は、箱根駅伝有力校では東海大学、東洋大学、法政大学、順天堂大学など16校が名を連ねる。男子2部は、青山学院大学、駒澤大学、帝京大学、國學院大學など、いわゆる箱根駅伝に出場してくるような〝駅伝常連校〟と呼ばれる主に長距離種目の強化に特化している大学が多く、展開によっては同じ種目で1部の優勝記録を上回ることもある。なお、男子3部と女子2部は大学院の選手が出場するので、参加人数が少ないために男子は2部に、女子は1部に組み込まれて競技が実施されることもある。

個人の種目に注目しがちだが、インカレはあくまでも対校戦。特に男子2部からの昇格争いは毎年白熱し、1部昇格を決めたチームには歓喜の輪が広がる

選手の「個性」が見える大会

トラックと駅伝で違うのは、トラックだと駅伝とは違った各選手の個性が見られることだ。

まず、その最たるものは種目選択だろう。箱根駅伝に出場するようなランナーたちは各大学の陸上競技部の中にある「長距離ブロック」に所属しており(大学によっては「駅伝部」として独立していることも)、インカレでは

  • ・1500m
  • ・5000m
  • ・10000m
  • ・ハーフマラソン(※男子のみ)
  • ・3000m障害

がターゲット種目となる。

なかでも長距離種目の〝花形〟と言えるのは有力選手が集まる5000mと10000mだろう。留学生の参加も多く、レースはハイペースで飛ばす留学生選手を各校の日本人エースが追走する展開になりやすい。昨年は順天堂大学の塩尻和也(現・富士通)が両種目とも日本人トップを占め、阿部弘輝(明治大学)、鬼塚翔太(東海大学)、相澤晃、西山和弥(ともに東洋大学)らが上位を争った。今年も多くの有力選手がエントリーしており、激戦は必至だ。また、ここで積極果敢な走りを見せた選手が秋の駅伝シーズンで〝大化け〟するケースも枚挙に暇がない。気になる選手がいれば大会公式プログラムで名前をチェックすると観戦の楽しみが倍増するだろう。

それ以外の種目では、箱根駅伝では復路を担うような〝いぶし銀〟的な選手が活躍することも多いハーフマラソンや、スピードランナーが激しいラストスパートを繰り広げる1500mなども生で見ると面白い。水の溜まった水濠を1周ごとに飛び越える3000m障害は、箱根駅伝の〝山区間〟である5区や6区を担当する選手が得意としていることが多い。トラックの走りから箱根駅伝の戦略を予想できるのも観戦の醍醐味と言えるだろう。

このほか、レースの前後に仲間からの声援に応えたり、種目ごとに行われる表彰式での様子などから、各選手のキャラクター性を垣間見ることもできる。特に表彰式ではメインスタンドにチームメイトが集まり、その選手の〝いじられ方〟がわかったりもする。選手のオンとオフの両面を見られるのも現地観戦ならではだ。

そして、関東インカレの大きな特徴は選手たちが観客と同じスタンドまで出て来る機会が意外に多いということだ。レースを終えた選手はチームメイトの応援に回ることがほとんどで、テレビをにぎわせた箱根駅伝のスターがスタンドで仲間とレースを見ていたり……ということがわりと普通にある。憧れの選手を間近で見てみたい、というファンには特に現地観戦をお勧めしたい。

ハーフマラソンは競技場を発着点とした周回コースで実施。ロードレースのように沿道で観戦することもできる
水を張った水濠を越えていく3000m障害は長距離の中でもやや特殊な種目。レース中の転倒もしばしば起こり、最後まで目が離せない
東京農業大学名物の「青山ほとり(通称:大根踊り)」など、伝統校の特色ある応援風景も見どころの一つ

駅伝から「陸上競技」へ!!

関東インカレの会場に足を運んでみると、長距離以外の種目に目を奪われる時もあるかもしれない。短距離種目のスピード感、跳躍種目の盛り上がり、投てき種目の迫力。それらは現地にいないと味わえないものだ。今は多くの選手がSNSのアカウントを持って自ら情報を発信している時代。それらにアクセスしてみると、選手がそれぞれに思いを持って競技に取り組んでいることがわかる。長距離以外の種目にも関心を広げていくと、陸上競技の観戦は今まで以上に面白くなるはずだ。

仲間同士の絆が随所で見られるのが学生スポーツの醍醐味。駅伝とは違う会場の空気を味わってほしい

<資料>

■主な男子1部校

  • 東海大学
  • 東洋大学
  • 法政大学
  • 順天堂大学
  • 中央大学
  • 早稲田大学
  • 日本体育大学
  • 日本大学
  • 明治大学
  • 国士舘大学
  • 大東文化大学
  • 城西大学
  • 山梨学院大学
  • 筑波大学
  • 駿河台大学
  • 国際武道大学

■主な男子2部校

  • 青山学院大学
  • 駒澤大学
  • 帝京大学
  • 國學院大學
  • 拓殖大学
  • 中央学院大学
  • 東京国際大学
  • 神奈川大学
  • 上武大学
  • 麗澤大学
  • 亜細亜大学
  • 専修大学
  • 創価大学
  • 東京農業大学
  • 日本薬科大学
  • 明治学院大学

※第95回箱根駅伝出場校と同予選会で20位以内の大学を記載(国際武道大学は除く)