インタビュー

その年の願いとか夢とか
想いとかを形に変える
これが一番の喜び

人形師見習い/中村 弘峰 氏

「博多祇園山笠」には町中を走り回る「舁き山笠」と飾ることを目的にされた高さのある「飾り山笠」の2種類の山笠がある。この山笠の上の部分は「人形」と呼ばれ、そのどちらもが博多人形を作っている人形師たちの手によって作られる。
博多人形というと素焼きの人形に繊細な絵付けがされた人形であり、この大きな山笠の人形を彼らが作るというのが不思議にも思える。伝統的に彼らが作ってきた山笠の人形はどのように作られるのか?人形師見習いの中村弘峰さんのお話をお届けする。

― まずはご自身と山笠の関係をお話しいただけますでしょうか?

曽祖父の代から博多人形を作っていますので自分で4代目ということになります。山笠に関しては、祖父が土居流どいながれ恵比須流えびすながれなどの人形を作っていたようですが、いつ、どこの流の山笠を作っていたのか?は詳しくはわかりません。

― 舁き手としての自分と山笠の人形師としての自分で違うところはありますか?

舁き手は、動き出したら棒ばかり見ていますが、僕は人形師でもあるので、やはり舁いている時も人形を見ています。作っている時には台の上に乗った姿を想像して作っていますが、それがその通りにちゃんと出来ているのか?がやはり気になります。またクライマックスの櫛田入りでは必ず時計回りに入ります。そうすると左手が前に出ていると顔が見えにくくなるので出す手は右手にしたり、そういう計算をしていますが、そういうことをチェックしていますね。

― 仕事の進め方を教えてください

年明けくらいからなんとなく山の香りがしてくるというか

― 7月のお祭りなのに、ですか?

博多の人たちにとっては、ほとんど1年中、山笠なんですよ。(笑) で、ゴールデンウィークくらいから作り始めます。

― 博多人形は素焼きに絵をつけていくわけですが山笠の人形は全く違いますよね。その辺の苦労などをお聞かせください。

はい。まず材料は、基本的には竹と紙と木でつくります。普段作っている博多人形とは違いますが、人形師は大昔から、焼き物の人形を作るだけが人形師ではなくもっと広い意味での称号だったと思います。だから極端なことを言えば、そのへんのモノで看板を作って欲しいと言われても作っていたわけで、そういう意味では「何でも屋さん」だったという流れがあるのだと思います。

また、人形だけを作るのではなく一年に一度このようなイベントがあるのは楽しいことです。紙でどのように鎧をつくれば本物にみえるようになるのか?を考えて工夫をしていく。それは言わば「大人の図工」になるのです。

特に難しいのが顔です。その品というか、そこは技巧的なことではなくて説明できない部分です。最後の最後、決め手になるのですが、教えてもらおうにも教えてもらえない、体得するものなのです。

― 山笠のここを見て欲しいというようなところをご紹介ください

やはり一番山からずらっと並んだところを見て欲しいですね。山笠は基本、褒めなくてはいけないんです。いいところを見つけ、褒めながら見る。そんな中で舁き手たちは、それでも自分たちの山が一番だという優越感を持って舁く。タイムを競うことももちろんですが、そういう静かな戦いも行われているのです。これは並んだ時にしかわからないですので是非並んだところを見に来てください。

― これからも山笠の人形を作っていくわけですが、こういうものを作りたいというのはありますか?

もっと本物に見えるような人形を作ってみたいですね。これまで、慣例として過去に省略されてしまった部分を本物にしていくというか。
僕は、題材としては、古くからある本格的なものなのが好きなのですが、その中でも技巧的には今までやられていないようなことをやってみたいと思います。

― そういった本物に近づける上で大切なことはなんでしょう?

知識とセンスだと思います。例えば金太郎の人形を一つ作る時に、前掛けを作るために金襴を選ばなくてはいけません。専門店には無数の金襴があります。そこには柄の意味や素材の良し悪しなど様々な知識とセンスが問われるのです。
一つ一つのチョイスが重要になってきます。それには、多くの良いものをみていないといけないのです。

― 最後に、山笠における人形師としての喜びってなんでしょう?

博多という大都市でのお祭り。そこで毎年毎年人形は作り直します。そして毎年毎年人形に対する期待があります。それに対して任せてもらっているんです。その年の願いとか夢とか想いとかを形に変える。これが一番の喜びですかね。またお祭りの期間中の直会の乾杯。うちの流では、とにかく全員がきちっと揃っての乾杯になります。みんな遅れずに、子供までがきちんと一列に並んで着座し乾杯をします。あの連帯感と緊張感からの解放もきもちいいですね。

博多祇園山笠振興会 豊田侃也山大工 名越 康博舁き手 黒葛川 絢一舁き手 岡崎大地