DOI JUNICHI 家業を継ぐという使命感。それは、志を正しく未来へとつないでいくということです。

05 DOI JUNICHI 「こんぶ土居」四代目 土居 純一


どい じゅんいち
1974年大阪生まれ。四代目として「こんぶ土居」を引き継ぐ。食育活動やだし教室などを通し、日本のだし文化の継承に取り組む。


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危機的な状況の昆布漁の改善と未来へ向けて
二人三脚で取り組む活動を続ける


「こんぶ土居」は初代が1903年に大阪の蜆橋(現在の梅田新道)にお店を出され、その後、大火事にあわれたことから現在の空堀商店街に移転されるなど変遷を経ながらも、創業以来、昆布一筋にお店を営まれていらっしゃいますが、扱う商品も特色があるのでしょうか。

土居 日本の昆布の90%以上が北海道産で、羅臼、利尻などがある中、大阪は最高級品とされる上品な旨みが特徴の真昆布を主に出汁に使ってきました。さらに同じ真昆布でも浜(採取地)によって味や品質の違いがあり、「こんぶ土居」では初代からほぼ真昆布のみ、その中でも最高品質のものが採れる川汲(かっくみ)浜の天然昆布を主に扱ってきました。

今のように生産地である北海道と密に接することになったのはいつ頃からですか。

土居 初代や二代目の頃は特に産地との関わりはなかったと思われますが、昭和40年代以降から昆布の養殖が始まり、また、もともと天日乾燥だったところに機械乾燥が導入された影響から、一時品質が低下したことがありました。そこで、三代目である父・成吉がそれを改善するため、北海道の浜へ通いだしたのが始まりです。

浜へ通う取り組みは純一さんの代になってからも続けられていると聞きますが、そこでどんな活動をされているんですか?

土居 北海道の昆布生産現場の状況は年々非常に厳しくなっています。昆布の生産量は30年前と比べれば半分になっているし、漁業従事者も高齢化や人口の減少など、様々な問題が起こっています。その中で未来を描いてよりよい方向に向かっていくためには、大阪の加工業者と浜の人たちとがお互い協力し合うことが絶対不可欠なんです。そのために、年に何度も浜の仕事を手伝いに出向いては信頼関係を築いて品質の向上を呼びかけると同時に、20年ほどに渡り地元の小学生への食育活動を続けています。北海道では昆布を食べる文化がないので、自分たちが作った昆布がどこに運ばれ誰の役に立っているかが見えにくいんですよね。ですから、子どもたちに町の産業の価値を見直してほしいという活動なんです。子どもたちの中にはいまだに父が話したことを覚えてくれている子もいて、その子たちが大人になっていくのを見守りながら、優秀な若者が町のリーダーとなり、北海道の昆布の村がよりよい方向に進んでくれるのを願っています。そのための活動を長年取り組んでいるんですよ。

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間違いなくいろんなことが実を結び、
着実に前へ前へと進んできている


北海道での活動の他に、大阪でもいろいろな取り組みをされていると聞きます。

土居 大阪では毎月1回、「日本一のだしのとり方教室」を開催しています。僕の代になってから始めたんですが、すにで100回を越え、我ながら驚いています(笑)。最近は多くの方が出汁を取る作業に馴染みがないので、出汁はこんなに簡単で、しかもおいしいものができることを知ってほしくてスタートしました。そして、本物の食品を見分ける方法や昆布の選び方などを話させてもらっています。
一般的に使われる出汁調味料は安価で便利に使えます。けれど、昆布や鰹といったいわゆる“本物”の原料がほんの少ししか使われていない場合が多く、代わりにうまみ調味料が含まれています。その影響から、いままで本物を作ってきた日本の素晴らしい文化が価格と便利さによって駆逐されてしまうことを懸念しています。そのためにも、間違いのない商品を厳選して扱うのはもちろん、教室を開いたり、来店されたお客さんにお話したりすることで、いろんな方に本物を伝えて、そのよさを分かっていただける努力を惜しまずやっていこうと思っています。

今、土居さんから見た大阪の食文化はどんな風に映りますか?

土居 大阪人は自虐的というか、自分のことをいいように言うのを嫌いますよね(笑)。卑下して笑いをとるというか、それは人間的には非常に美しい性質だと感じますが、一方で、よいものをよいと言えることで対外的にアピールしていかないと、この先大変なことになるとも思います。
大阪の食文化といえば、とかく粉ものをイメージされます。僕自身もお好み焼きもたこ焼きも好きですが、それだけではないわけですよね。大阪は食文化もB級のイメージでいわれがちですが、古くから他の地域とは深さの違う昆布の文化を持っていましたし、むしろ食に関しては洗練されたものを持っていたことを、まずは大阪人自身が認識してほしいと思うんです。それを大阪の誇りとして今後も大事にしていってもらえればうれしいので、僕らはちゃんとしたよい製品を使われる方にきちんと届けて、その価値を一人でも多くの方に知ってもらうのが使命だと思っています。

では、土居さんにとっての店とは、昆布とは何ですか?

土居 簡単にいえば使命感です。なぜ、今の仕事に就いているかといえば、家業が昆布屋だったから。ただそれだけです。自分がやらなければ店を潰すことになるし、それが派生して、大阪の昆布文化も廃れるかもしれないし、北海道の昆布産業にも影響があるかもしれません。それが自分の中では忍びなかったというのがあります。それをできるだけよい形で途絶えさせない、なるだけいい形で続けていくための仕事ではないかと思います。
最近はアメリカとフランス、台湾へも輸出をしています。それは一昔前なら考えられなかったことです。普通はもっと大きな商社へ行く仕事が、こんな小さな店にくること自体すごいことだと思います。長い間、自分たちなりにこだわり取り組んできた志が少しずつ実を結んで、スローですけど、着実に前へ前へと進んできているな、と感じます。志を正しく未来へと繋ぐことが自分しかできない役割であるならば、そう考えると、使命感は楽しいですよ。

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「こんぶ土居」の昆布で作るたこ焼き

「こんぶ土居」の昆布で作るたこ焼きレシピをご紹介。出汁の風味を味わうため、ソースをつけずにどうぞ。

■材料(2人分)

生地 薄力粉…100g
昆布と鰹節の出汁…400cc
卵…1個
塩…小さじ1
醤油…小さじ1

たこ…80~100g
ねぎ…1本
油…適量
天かす・紅ショウガ…お好みで

■作り方

  1. 薄力粉に少しずつ昆布と鰹節の出汁を入れて溶いていく。
  2. 卵は別に溶いておき、塩、醤油と合わせて1に加える。
  3. たこは食べやすい大きさに切り、ねぎは小口切りにする。
  4. たこ焼き器を強火で熱し、熱くなってきたら油を引き、2の液体を流す。
  5. 4にたこ、ねぎ、天かす、紅ショウガなどを入れ、しばらくして90度ひっくり返す。2回ほどひっくり返して出来上がり。

「大阪・空堀 こんぶ土居
土居家のレシピと昆布の話」

ぴあ 1,500円(税抜き)

創業110余年という大阪の老舗昆布店「こんぶ土居」によるシンプルかつ奥深い昆布の話と、基本の和食からお菓子、イタリアン、ベトナム料理まで、昆布を使った様々な料理レシピが楽しめる一冊。

【取材協力】

こんぶ土居

大阪市中央区谷町7-6-38
TEL: 06-6761-3914

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