KATSURA JAKUTA 人生を経るごとに、落語は深みも暑さもましていくもの。自分の人生が深まるにつれ、味わいのある落語を披露していきたい。

01 OSAKA HOSHI


かつら じゃくた
1977年2月26日生まれ、奈良県五條市出身。2002年5月に桂雀三郎に入門。趣味は音楽鑑賞、読書。


現在、上方落語界の若手エースとして、その頭角を現してきた桂雀太。独特の粘りのある語り口に加え、リズミカルに演じるテンポのよさは、あの桂枝雀を彷彿とさせるといった声も上がっている。落語家になって、今年で丸14年目になる彼に、上方落語の魅力や今後の展望を聞いた。

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自分が本当にやれるかどうか考えるより先に、
「やってみたい!」という思いが勝った。


大学卒業後に落語家になったそうですが、それ以前から、落語はよく聞いていたんですか。

雀太 それが、大学時代は落研も入ってなければ、見たこともなかったんですよ。僕が大学を卒業する時はちょうど就職氷河期の真っ只中で、「公務員が一番ええんとちゃうの」という空気があり、当然僕もその一人でした。結局、卒業後は公務員浪人をしてたんですが、たまたま近所で落語会があるというのを見て、暇つぶしがてら行ったのが最初でした。それが僕の師匠となる桂雀三郎の寄席で。場所は四天王寺にある一心寺シアターの稽古場で、30人ぐらいで満席になるような小さな場所でした。そこで見た師匠の落語を一言でいえば、衝撃ですかね。

初めて見た落語の何がそんなに雀太さんに響いたんですか。

雀太 一人の着物を着た人がしゃべって、それをみんなが見て笑ろうてる。すごい空間やなぁと。ライブ感の凄さというか、観客を巻き込んで作り出すその空気感に圧倒されました。それを見るまでは、大学時代も落研の奴らを見ては、「おいおい、今どきやないで。落語って」と思っていたんです。けれど、「この面白さを落研の奴らは知っとたんやな。なんでもっと早くに教えてくれへんかったんや」と、思いましたもん(笑)。

その後すぐに落語家になることを決めたんですか。

雀太 落語をした経験もなければ、舞台に立ったこともない。けれど、自分が本当にやれるかどうか考えるより先に、「やってみたい!」という思いが勝ったんです。その足ですぐ師匠に弟子入りを志願したんですが、兄弟子が入門した直後だったことから断られました。その時は断られたことを理由に、一時期は落語家になることを諦めるよう自分を納得させようともしたんですが、あかんかった。それほど自分にとっては、師匠の落語は人生を変えさせるほどの衝撃でしたから。その後、1年半待って、再度弟子入りを志願し、受け入れてもらえたことで、ようやく落語家への扉が開いたんです。

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空前の落語ブームを前にして、
「ようやく落語の面白さに気づいたか」


落語家になられて14年目だそうですが、まだまだ若手なんだそうですね。

雀太 そうそう、まだ若手なんです。つい最近まで、高座もトップバッターで出てましたから(笑)。上方落語界は今、約270人が活動しているので、15年目ぐらいまでは新人なんですよ。ちなみに僕は200番目で、入門当時は今のような落語ブームが到来する「落語夜明け前」って感じでした(笑)。事実、僕が落語家になった時の友人たちの反応といったら、「おいおい、今どき落語って」と、僕が以前に抱いてた印象と同じで。それを横目に、「今に見とけよ」と心の中で思ってましたもん。

そして、その後は空前の落語ブームが到来しました。

雀太 ドラマやマンガなどで落語の世界が描かれたことで、ご存知の通りの盛り上がりようです。それに影響されてか、落語家の志願者が本当に増えましたよ。「おー、きてるきてる。(自分もそういった頃を思い出すと)懐かしいなぁ」という思いで見ていましたね。「ようやく落語の面白さに気付いたか」という感じです。今は若手の落語家も増えてきたこともあり、若手から上方落語をもっと盛り上げていこうという意識も高まりつつありますね。

上方落語を盛り上げるための一環からか、雀太さんの場合、天満天神繁昌亭といった定席だけでなく、カフェやクラブイベントなど、アウェイな場所でも落語をされていますよね。

雀太 落語はデリケートな芸能やと思うんですよ。演者のしゃべりを聞いて、お客さんはそれを想像して楽しんでもらうという知的な遊びですから。だから、演じる環境はすごく大事なんですが、今はカレー屋の周年イベントでも服屋の朝礼でもやらさせてもらってます。「そんな場所でできんの?」とはよく言われますが、「まぁやってみな分からんしね」とは答えてます。なぜなら、落語を生で見たことはないけれど、ちょっと興味はあるという人が実は多いと思うから。けれど、なぜか落語会は敷居が高いと思われがちなんで、何かのきっかけで落語を聞いて面白いと思ってくれたら、落語会にも足を運んでもらえますからね。そうやって、高い敷居に鉋をかけて低くしていきたいという思いもありますね。

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》 舞台は生もの。 それが難しいし、楽しいんです。