貴腐ブドウから造られる貴腐ワインを知っていますか?「名前は聞いたことはあるけれど、飲んだことはない」という方も多いかもしれません。
輝きのある色、はちみつのように優しく甘い香り、心地良い酸味と豊かで洗練された甘味が魅力の貴腐ワインは、どのように造られているのでしょうか。
ここでは、貴腐ワインとはどのようなワインなのか解説し、さらにおすすめの貴腐ワインを紹介します。
目次
貴腐ワインとは
貴腐ワインとは、別名「ワインの帝王」と呼ばれる希少性の高いワインです。最高級の極甘口ワインで、原料となる貴腐ブドウ由来の芳香と凝縮された独特の甘みが高い人気を得ています。
ちなみに使用される「貴腐ブドウ」とはブドウの品種ではなく、「貴腐菌」という菌が付着したブドウのことを指します。
貴腐ワインはどのように造られる?
通常の甘口ワインとは異なる魅力を持つ貴腐ワインは、実は一般的な辛口ワインに使用されるブドウと同じものが使用されています。
では、どうやって特有の濃厚な甘みを生み出しているのでしょうか。その秘密は、貴腐ブドウが育つ条件に隠されています。
この項目では貴腐ワインが造られる仕組みについて解説します。
貴腐ブドウができる条件
貴腐ワインのもととなる貴腐ブドウを育てるには、貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)と呼ばれる菌が欠かせません。
本来、貴腐菌は植物に病気をもたらす菌です。ブドウにとっても茎や果実を腐らせる厄介な存在ですが、貴腐菌が付いたブドウは特定の条件を満たすことによって貴腐ブドウになります。
その条件とは、昼は乾燥し夜は湿度が高いことです。
日中のカラリと乾燥した空気によって、果実の水分蒸発が進みます。そして夜に菌が育成しやすい高い湿度を保つことで、糖度の高い貴腐ブドウがつくられます。
仮にブドウの実に問題なく貴腐菌が付着したとしても、上記のような条件が揃わなくては、ブドウは貴腐化せずワインに適さないものとなってしまいます。
一般的に夏は晴天の日が多く、9月ごろから収穫までの期間は朝もやが発生し、午後からは晴れる傾向にあります。この時期は貴腐ブドウの成長に適した時期といえるでしょう。
貴腐菌がついたブドウは甘さが凝縮される
一般的に貴腐菌が付着した農作物の多くは、灰色カビ病となってしまいます。
しかし、貴腐菌がついたブドウは、果実の甘さが凝縮されます。貴腐菌が付着したブドウは表面に小さな穴が開き、果実の水分が蒸発することで糖分が増すからです。
ただ、すべてのブドウに同様のことが起こるとは限りません。
貴腐菌以外の雑菌が付着したり、天候が不安定になったりすると、同じ産地でも条件次第で貴腐ブドウが収穫できない場合もあります。
貴腐ブドウはすべて手摘みで収穫
貴腐ブドウは果皮を貴腐菌で覆われている状態です。機械で収穫することはできないため、1つひとつ丁寧に手摘みしなければなりません。
手摘みしたブドウは、菌の付着した果皮が残らないように注意しながら実だけを取り出します。水分が蒸発しているため粒が小さく、ひと房のブドウからとれる果汁は通常のブドウよりも遥かに少ない量です。
貴腐菌を付着させる限られた条件、順調に生育させるための天候、そしてとれる果汁の量という多くの要素が折り重なっていることによって、貴腐ワインは希少価値の高いワインとなっているのです。
貴腐ワインの甘さがこのように造られているのは驚きでしたね!ちなみに貴腐ワインのように甘いワインは、「デザートワイン」に分類されます。デザートワインについては、「デザートワインの魅力を解説!さまざまなデザートワインを紹介」でもご紹介してます♪
貴腐ワインの産地
貴腐ワインは複数の条件が揃ってはじめて造ることのできる、とても希少な存在です。日本国内でも生産されていますが、世界的に有名な産地として以下の3地方があげられます。
・ハンガリー…トカイ
・フランス…ソーテルヌ
・ドイツ…トロッケンベーレンアウスレーゼ(ライン川流域)
3地方で生産されるものは、世界3大貴腐ワインと呼ばれており、貴腐菌がブドウに付着するのに最適な天候条件が揃いやすい特性をもっています。
ハンガリー
とくにハンガリーのトカイは貴腐ワイン発祥の地としても有名で、貴腐ブドウの使用割合で厳格に決められた規格が存在します。
『トカイエッセンシア』は貴腐ブドウのみを使用した、『トカイアスー』は白ワインに貴腐ワインをブレンドして造られたワインです。
フランス
貴腐ワインは長期熟成に向いたワインですが、中でも数十年の超長期熟成に向いているのが、フランスはソーテルヌの貴腐ワインです。
世界最高レベルの貴腐ワインを生産しており、代表的な『シャトー・ディケム』は100年以上の熟成を経てもおいしく飲めるほど。
ドイツ
ドイツのライン川流域も貴腐ワインの有名な産地ですが、注意したいのがトロッケンベーレンアウスレーゼの名前への誤解です。
ドイツの貴腐ワインはトロッケンベーレンアウスレーゼ産!と思っている方も多いでしょう。実は、これは産地名ではなく、ドイツワインの格付けの1つなのです。
ブドウ果汁の糖度でランク付けされており、トロッケンベーレンアウスレーゼとは、甘口ワインの最上ランクをさしています。
貴腐ワインのおいしい飲み方
せっかく貴腐ワインを楽しむからには、おいしさを最大限に引き出しましょう。他のワインと同様に、貴腐ワインにも最適な温度や味わい方があります。
この項目では、貴腐ワインをおいしく飲むためにチェックすべき、3つのコツについて紹介します。
適温まで冷やして飲む
適温まで冷やして飲むとおいしいのは、貴腐ワインも同じです。
基本的に4~8℃を目安にすると失敗しないでしょう。ただし、ワインごとに適温の目安が記載されている場合もあります。
極甘口の貴腐ワインはよく冷やすことで、すっきりした口当たりになり飲みやすくなります。貴腐ワイン特有のコクのある味を楽しめるでしょう。
少しずつ味わう
ワイン好きの方の中には「一度開けたワインは酸化で味が落ちてしまう前に飲み切るべき」という考えの方も多いでしょう。しかし、貴腐ワインの場合は急いで飲み切る必要はありません。
貴腐ワインは他のワインと比べると酸化のスピードがゆるやかなため、多少保管日数が経ってもおいしく飲むことができます。目安としては2週間程度、長くても1か月ほどは問題なく飲める状態が続きます。
もちろん、他のワインと同様に保管方法は重要です。一度開けたワインは、ワインストッパーなど専用アイテムでしっかりと栓をして保管しましょう。
マリアージュを楽しむ
ワインの魅力を引き出すためには、料理やおつまみとの組み合わせも欠かせません。定番を押さえる他、新しい組み合わせを見つけて自分だけのマリアージュを楽しむのもおすすめです。
極甘口の貴腐ワインは、甘いスイーツとの相性が抜群です。チョコレートやドライフルーツなど、濃厚な甘味や酸味との組み合わせをぜひ試してみてください。
また、ブルーチーズなどクセの強いおつまみも貴腐ワインとよく合うでしょう。
貴腐ワインの甘味をじっくり味わうにはよく冷やすことが大事なんですね!ワインを最適な温度で味わうためのポイントは、「温度に気をつけるだけで美味しくなる!ワインの適切な温度」でご紹介してます!
おすすめの貴腐ワインをご紹介
どうやって貴腐ワインが造られているのかが分かると、とても希少であるからこそ高価なものであると納得しますよね。毎日飲めるワインではありませんが、特別な日には贅沢に味わってみたいという方も多いでしょう。
ここからは、そんな特別な時に飲んでいただきたい、おすすめの貴腐ワインを紹介します。
・ギィ・サジェ コトー・デュ・レイヨン(参考小売価格:税抜3,108円)
ロワールワインを語るうえで外せない、ギィ・サジェ社は、 もともと家族経営のごく小規模なワイナリーでした。
わずか5ヘクタールのブドウ畑しか所有していなかった慎ましやかな ワイナリーを変えたのは、現会長のジャン・ルイ・サジェと、 その弟のクリスチャンです。
彼らが生み出した最高傑作の1つである、コトー・デュ・レイヨンは、ロワール河岸のソミュール産シュナン・ブラン種のみを使用しています。
他に類を見ない高い完成度の理由は、アカシアと蜂蜜の奥深い香りの中に顔を覗かせる、フルーツやミネラルが作り出す複雑さにあります。
豊かに広がる後味ながら料理との相性も良く、食事の席で楽しむなら、フォアグラ料理とのマリアージュがおすすめです。もちろん、食前酒や食後酒にも最適な1本です。
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・グランポレール 長野古里リースリング貴腐 2015(参考小売価格:税抜30,008円)
長野県「長野古里ぶどう園」産のリースリング種貴腐ブドウのみを使用した、特製桐箱入りの白ワインです。樽熟成によって生じた奥深い香りと、鮮やかな黄金色に輝く液色は、プレゼントやホームパーティーで活躍します。
凝縮されたブドウ由来の甘さは、はちみつのような優しさをもっています。洗練された印象を与え、心地よい酸味とともに豊かな味わいを楽しめる1本です。
デザートワインとして、ゆっくり楽しむのがおすすめです。
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※ ワインについては、記事掲載時点での情報です。
まとめ
特定の気象条件が揃わないと造られない貴腐ワイン。雨が多すぎる年や、秋になっても「もや」の出ない年には、同じ菌がついても貴腐ブドウにはならず、そのまま腐ってしまいます。
とっても不思議な貴腐ブドウですが、成功した年には驚くほど甘くおいしいワインの原料となります。極甘口のワインが好きな方なら、その甘美な味にハマってしまうかもしれません。
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