
商業栽培が拡大するカナダのLOXレス大麦 CDC PolarStar

LOXレス大麦の生産者の皆さんと
ビールは“造りたて”が一番おいしく、なるべく鮮度を保つよう取り扱いに注意が必要なデリケートな飲み物です。ビールのおいしさを損なう要因には、温度や日光、衝撃などさまざまなものがありますが、その主な原因は酸化です。酸化は、空気に触れると起きるのはもちろん、密閉状態にあっても製造から日数が経つうちに始まり、独特の老化臭を発生させてビールの魅力を損ねてきました。
この劣化を引き起こす原因の一つが、原料の大麦に含まれる脂質を酸化する酵素リポキシゲナーゼ-1(LOX-1)で、サッポロは、この酵素を持たないビール大麦の開発に着目。岡山大学が保存している約1万種の大麦遺伝資源のなかから、LOX-1を含まない大麦(以下LOXレス大麦)を見つけ出すことに成功しました。しかしながら、この大麦は、在来種とも言われ、栽培しにくい性質も有しており、商業スケールでのビール原料として調達して使用することは実質的に不可能でした。そこで、カナダのサスカチュワン大学との共同育種プログラムにこの大麦を導入し、北米のビール大麦と交配することにより、北米での栽培に適したLOXレス大麦の開発に着手しました。
サスカチュワン大学との共同育種プログラムでは、遺伝子診断を用いた新育種技術の導入により、北米で経済栽培(あるいは商業生産)が可能で、かつLOXレスの性質を有する大麦を効率的に選抜、育成し、2008年には、北米初のLOXレス大麦品種である「CDC PolarStar(北極星)」を品種登録しました。
LOXレス大麦を用いた試験醸造ビールは、高温での保存試験の結果、通常大麦使用のビールと比べて、酸化に伴う老化臭の原因物質の生成が抑えられ、さらに泡持ちの良さも向上していることが確認できました。「CDC PolarStar」は、2010年には、カナダにおける二条ビール大麦品種の中で第4位の作付面積となっており、この度、クオリテイアップして発売したサッポロ生ビール黒ラベルには、この品種を原料とした「旨さ長持ち麦芽」が使用されています。
将来的には 世界各地で生産されているビール大麦にもLOXレス品種開発の技術を広げていくことを目指しています。