2007年10月に東京・町田にオープンした「小陽生煎饅頭屋」は、焼き小籠包の草分け的存在だ。店名にある「生煎饅頭」は、焼き小籠包の本場・上海での正式な呼び名。たっぷりの油を流し込んだ大きな鉄鍋で70個前後を一気に焼き上げ、4個340円、6個510円で販売する。メニューはこの2品のみ。店舗はわずか2坪でテイクアウトのみと、シンプルきわまりない業態だが、現在でも店頭にお客の列はひきもきらず、購入したお客は店前で熱々の生煎饅頭にかぶりつく。店内で目をひくのは、鉄鍋で生煎饅頭を焼く傍らで職人が生地を麺棒で延ばし、その皮で素早く餡を包む作業。生地を半発酵状態に保ち、皮のおいしさを維持するためのオペレーションだ。調理には時間がかかり、お客の列は遅々として進まないが、それを辛抱強く待つお客の姿からも同店の商品力がうかがいしれる。
小陽生煎饅頭屋
大山生煎店
2009年12月のオープン以来、売上げはうなぎのぼり。これまでの売上げ最高記録は1日2000個、10坪で月商500万円を売り上げるのが東京・自由が丘の「大山生煎店」である。経営母体の(株)東方食堂のスタッフが上海の名店「阿三生煎館」で修業し、そこで学んだ味を忠実に再現。ちなみに阿三生煎館で修業した日本人は初めてだという。また、鉄鍋や火口、粉の攪拌機といった厨房設備はすべて中国から持ち込んでおり、これも本場の味を提供することに貢献している。焼き小籠包は3個300円、6個600円。イートインスペースを設けているため、本日のスープ350円やピータン350円などのサイドメニュー、650円のランチセット2種も置くが、テイクアウトの売上げ比率は50%を占めており、きわめて営業効率は高い。
東京・池袋駅西口の歓楽街に、わずか5坪の店を構える「永祥生煎館」に足を踏み入れると、そこはさながら上海の街角。焼き小籠包をほおばるお客の半数はアジア系外国人、現場で働くスタッフも全員が中国人だ。外国人の多い立地の強みを生かし、夜食やお遣いものといったニーズも吸収。2009年12月のオープン以来、最高で日商25万円を売り上げたこともあるという。焼き小籠包は4個380円、6個570円で、他にメニューは牛カレースープ小130円・大250円のみ。小籠包の餡には秋田県産「ポーク・こまち」と「SPF豚肉・はやし」の2種類の豚挽肉に加え、豚皮を長時間煮込んでとったゼラチンを使う。最高で1日2000個を売る商品力を武器に、今後はフランチャイズ展開も計画している。
永祥生煎館

- 3店の事例いずれも、調理は徹底してスクラッチ。餡を皮に包むところからすべて店舗での作業だ。スープをたっぷり含んだ小籠包という商品の特性から必然的なこととも言えるが、それが結果として「外食ならでは」の価値を実現することに直結している。外食のメニューの多くが調理済み食品の形で家庭内に入り込んでいる昨今、外食が内食と差別化する鍵は結局のところ「そこでしか食べられないもの」を提供できるかに行き着く。お客は外食にそういうものを望んでいるし、そのニーズに応えることこそ新しいマーケットの開拓なのである。焼き小籠包のヒットはあらためて、そのことに気づかせてくれる。

- 小陽生煎饅頭屋
- 東京都町田市原町田4-5-19 TEL非公開
11:00~19:00 火曜定休 店舗規模/2坪
町田駅前の町田仲見世商店街入口に立地。オープンして2年半、連日店頭に出現するお客の大行列は、もはや地元で見慣れた光景となった。店舗の外壁に造り付けのテーブル席を設置しているが、多くのお客は容器を手に持ち立ったまま焼き小籠包をほおばっている。箸とレンゲを使った食べ方も手慣れたものだ。

- 大山生煎店
- 東京都目黒区自由が丘1-4-6 TEL03-5731-0977
11:00~20:00 第2・第4火曜定休 店舗規模/10坪(平日のみイートイン8席)
白壁に浮き立つような赤字の屋号を掲げた外観をはじめ、自由が丘という立地に合わせたスタイリッシュな店舗。軒先を歩く通行人は皆、一様に店の前で足をとめ、入口脇で湯気を上げる大きな鉄鍋を覗き込む。平日は店内の壁に面したカウンターに椅子8席を置くが、客数が増える休日は立ち食いスタイルをとっている。

- 永祥生煎館
- 東京都豊島区西池袋1-29-2 TEL03-6914-1566
11:30~22:00 無休 店舗規模/5坪6席
6席あるイートイン席は常設。テーブル調味料として黒酢を用意し、味の違いを楽しめるようにしている。お客の男女比は半々。レジ奥に見える厨房作業はライブ感満点で、大きな鉄鍋が豪快な油跳ねの音をたて、大量の小籠包が一斉に焼き上がる様は、あたかも本場の専門店を訪れたような錯覚を起こさせる。








