今をさかのぼること48年、1962年に兵庫・神戸に開業した「ピノッキオ」は、当時まだめずらしかったピッツェリアとしてスタート。以来、神戸のイタリアンの草分けとして繁盛店の地位を守り続けてきた。創業時からメニューに載せる「ピノッキオピザ」1260円は、現在でも1日100枚が出る看板商品。トッピングは2種のチーズとトマトソース、ホワイトソースのみで、同店の素材へのこだわりを端的に示すメニューだ。チーズは1ヵ月に400kgを仕入れ、メインのモッツァレラは1枚に160gを使用。さらに、ピッツァにはすべて創業以来の通し番号付きカードを添える。その枚数は累計なんと117万枚以上。店の歴史を物語るとともに、お客に驚きを与える心にくいサービスだ。現在も20坪30席で月商700万円を売る繁盛ぶり。創業から同店で働いてきた現オーナーの山中崇裕氏が83年から三代目として経営を引き継ぎ、現在は同店を含めて3店を展開。ビジネスとしても着実に軌道に乗せている。
ピノッキオ
銀シャリ屋 ゲコ亭
大阪・堺の旧市街で、9時~14時の営業時間中に連日250人のお客を集める定食店が「銀シャリ屋 ゲコ亭」だ。現店主の村嶋孟氏が1963年、33歳のときに開業。「国産の食材を使ったおいしい料理を庶民価格で提供する」という考えのもと、原価率50%以上のお値打ち追求路線を貫いてきた。店舗中央の台にずらりと並ぶおかずは100~400円。化学調味料はいっさい使わず、すべて店舗段階で手づくりする。とくに注目すべきは、お客全員が注文する200円の「ごはん」。コメは無農薬のコシヒカリとササニシキをブレンドし、前日に翌営業日分の精米したてのコメが業者から届く。1日に使うコメは24升だが、そのすべてを村嶋氏が一人で炊いている。毎朝3時からコメ研ぎ、吸水からはじめて、営業時間中も釜につきっきり。お客から「コメ炊き名人」と呼ばれるその姿も含めて、同店はもはや堺の名物となっている。
本の街であると同時に“喫茶の街”でもある東京・神保町でも指折りの老舗喫茶店「さぼうる」は今年で創業55年。今もなお、20坪70席の店内に1日500人以上のお客が訪れる。1階、地階、中2階に分かれたユニークな店のつくりは創業時のまま。創業マスターの鈴木文雄氏は、77歳になる今も23時までの営業時間中ずっと店頭に立つ。ソフトドリンクとサンドイッチなどの軽食を中心に、夜はアルコールも揃えるメニュー構成はオーソドックスなものだが、その内容は創業以来のこだわりが貫かれたものだ。コールドドリンクの氷は非常に溶けにくいもので、仕入れは創業以来の付合いの業者から。氷代だけで月20万~25万円かかるが、「ドリンクの味に影響を与えない」という理由から使い続けている。入店客はきちんと席まで案内する、声をかけられる前に注文に伺う、といった的確なサービスも、創業以来変わらない。
さぼうる

- 今回紹介した3店は、いずれも日本の高度成長がはじまった時期に産声をあげている。外食市場が拡大・成熟し、消費者の外食行動が大きく変化した時代を生き抜いてきたわけだが、その店のありようは驚くほどに、創業当初と変わっていない。一貫してお客に変わらぬ「価値」を提供していること。これこそが、半世紀を迎えてなお支持を受け続け、また新しい顧客を開拓し続けている要因なのだ。変わらぬ価値を生み出すのは、自店の売り物は何かを明確にし、それを磨き続ける姿勢。あらゆる商売に共通する、成功のための鉄則がここにある。

- ピノッキオ
- 兵庫県神戸市中央区中山手通2-3-13 大洋ビル1F TEL078-331-3330
11:30~0:00 無休(年末年始除く) 店舗規模/20坪30席
ピッツァの生地はオリジナルの配合の小麦粉に、14種類のスパイスを加えて軽く下味をつける。牛乳を加えて練り上げ、しっかりとしていながらカリッとした食感を実現。フードメニューはピッツァ7品の他にパスタや一品料理、グラタン・ドリアなどをラインアップ。従業員8人のうち社員は5人で、安定感のあるサービスを心がける。

- 銀シャリ屋 ゲコ亭
- 大阪府堺市堺区新在家西1-1-30 TEL072-238-0934
9:00~14:00 火・水曜定休 店舗規模/30坪35席
最盛期は1日600人のお客を集めたという同店。現在でも月商500万円を安定して売り上げる。客単価は1000円と定食店としては高いが、それもお客が同店の価値を認めているがゆえだ。驚くのは毎年6月~8月を夏季休業としている点。コメと水の品質が低下する、というのが理由だが、これも同店のこだわりを如実に示す。

- さぼうる
- 東京都千代田区神田神保町1-11 TEL03-3291-8404
9:00~23:00 日曜定休・祝日不定休 店舗規模/20坪70席
ダイヤル式の赤電話(通話可能)など、店内外のあちこちに時代を感じさせるアイテムが並ぶ。その多くはお客から贈られたお土産で、長くお客から愛されていることが、こうした点にもうかがえる。店主の鈴木文雄氏は、「お客様の目にとまるところはいつでも美しく」との考えから、定休日でも店頭の掃除と植木の水やりを欠かさない。






