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第92回箱根駅伝シンポジウム

第92回箱根駅伝シンポジウム
  • 日本テレビの村山喜彦アナウンサーの司会でディスカッションは進められた

  • 11月19日に、箱根駅伝のスタート・フィニッシュ地点でもある大手町・読売新聞社内の「よみうり大手町ホール」で、第92回箱根駅伝シンポジウムが開催された。10月の予選会を終え箱根駅伝に出場する21チームが出揃い、出雲駅伝、全日本大学駅伝と2つの駅伝も熱戦が展開された。1カ月半後に迫った箱根駅伝の号砲の時を、今か今かと待ちわびる駅伝ファン約450人が会場に詰めかけて、多彩なパネリストの答弁に熱心に耳を傾けていた。

  • 関東学生陸上競技連盟の靑葉昌幸会長が挨拶

  •  はじめに、主催の関東学生陸上競技連盟の靑葉昌幸会長が挨拶。
    「100回を目指しての第一歩、第91回大会は、青山学院大学が素晴らしい記録で優勝しました。そういう素晴らしい記録を、2020年の東京オリンピックへの架け橋としなければ“箱根駅伝は何をやっているんだ”とお叱りを受けるんじゃないかと主催者の会長として思っています」と、箱根駅伝から世界へ羽ばたく選手を輩出すべく決意を語った。

第一部 基調講演

  • 現在はメンタルトレーニング上級指導士として活躍する、ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリストの田中ウルヴェ京さん

  •  シンポジウムの第一部は、メンタルトレーニング上級指導士としてアスリートを支える田中ウルヴェ京さんの基調講演。「スポーツにおけるメンタルトレーニングの重要性」をテーマに、田中さんが熱弁を振るった。
     田中さんは、ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリストでもあり、アスリートの視点から、また後進の指導に当たっていたこともあり、コーチとしての立場から、2人の子を持つ母親としての立場から、そして、メンタルトレーニング上級指導士としての立場からと、「4役をいろいろ回転させながら、箱根駅伝をとても面白く見ています」と言う。その上で、スポーツにおけるメンタルトレーニングの重要性をわかりやすく聴講者に説明した。
     田中さんが繰り返し主張したのは、「どんなメンタルが必要かは、競技どうこうではなく、人によって違う」ということ。その上で、本番で実力を発揮するためには、「適度な緊張が必要」と話した。

「“緊張すること”が悪いのではなく、“緊張することを悪いと思うこと”が悪い。緊張しなさすぎてもダメ、緊張しすぎてもダメ。ちょうどいい緊張は、人によって合わせ方が違います」と説明すると、“なるほど”と頷く人が多かった。
 さらに“たすきの重み”について、シンクロ選手にとっての“鼻栓”を引き合いに出して解説。
「シンクロ選手が付ける鼻栓は、たかが500円そこらで針金でできているものですが、これが命なんです。これが外れると演技ができません。すごく思いが入っているので、人には触れられなくないものです。駅伝のたすきも、彼らの魂、彼らの命が込められている。そう思うと、たすきを繋ぐことは本当に素晴らしい」と話した。
 最後に、司会を務めた日本テレビ・村山喜彦アナウンサーが「マラソン大会やゴルフのコンペに出る時に、ついつい緊張するのですが、何かいい方法はありませんか?」と田中さんに質問。
「緊張していること、ドキドキしていることに、まず気付くことが大事。その上で、イライラしているとか、ドキドキしているとかに気付いたら、鼻で息を長く吸って、長く細く口から息を吐くことをお勧めします。目の前の事実は変わりませんが、建設的な思考に入りやすくなります」と実践的なアドバイスを送った。

第二部 パネルディスカッション

  • ロンドン五輪競泳100m背泳ぎ銅メダリストの寺川綾さんは、自身の経験を基に話をした

  •  第二部は、「箱根駅伝から世界へ〜トップアスリートの育成について」と題してパネルディスカッションが行われた。
     パネリストは、400mハードルの選手としてバルセロナ、アトランタ、シドニーと3大会連続で五輪に出場し、現在は日本陸上競技連盟(以下、日本陸連)強化副委員長を務める山崎一彦さん(順天堂大学スポーツ健康科学部准教授)、ロンドン五輪競泳女子100m背泳ぎ銅メダリストの寺川綾さん(ミズノ)、第一部に続いて田中ウルヴェ京さん、大の箱根駅伝ファンを自認する音楽プロデューサーの松任谷正隆さん、そして、関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長で山梨学院大学陸上競技部監督の上田誠仁さん。現場指導者、他競技のトップアスリート、メンタルトレーナー、駅伝ファンと、それぞれ違った立場から意見を交換した。

 まずは、前回(91回)大会のダイジェストと10月に行われた第92回箱根駅伝予選会のダイジェストを見て、今シーズンの展望を語った。
 わずか10秒の差が明暗を分けた箱根駅伝予選会を振り返って、
「数字だけ見ると、たった10秒、一人ずつに分配すれば1秒なんですけど、選手にとっては1秒が本当に大変。“あとちょっと頑張ればいいじゃない”って思われるんですけど、“そんな簡単に言わないでよ”っていうのが選手としての気持ちですよね」と、その1秒の重みを知る寺川さんが選手の気持ちを代弁した。
「残酷“だけど”感動的。残酷“だから”感動的。こういうのを見ると泣きそうになります。悔しいという感情はメンタルで解決できるものではありません。本当にきついからスポーツって素敵なんだと思います」と田中さんは、箱根駅伝の魅力を語った。

  • 関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長で山梨学院大学陸上競技部監督の上田誠仁さん

  •  そして、その箱根駅伝予選会の過酷さを、指導者として何度も経験している上田さんは「箱根駅伝の本大会のスタートラインであるここ大手町に向かう時は“よし、晴れの舞台だ!”という気持ちなのですが、予選会はどういう心境かというと、健康診断の検診車でバリウムを飲まなければいけない時と同じ。重く、ズーンとくるものがあるんですよ」と独特な表現で予選会に臨む心境を例えた。その上で、「レベルアップが著しい。我々が初出場した頃は、(1万m)28分台が一桁しかいなかったのが、今は100名に近づこうとしている。参加校が増えたのも一因だが、どのチームにも29分を切るスピードランナーが1人、2人、多いところは10人そろえて出てくるくらいの勢いがある。その勢いがこの予選会にも、箱根駅伝にも反映されている」と話した。この事実に警鐘を鳴らしたのが山崎さん。「各校、力がかなり迫っているのが、今の大学長距離界。高度に平均化しているのは、トレーニング環境も整いつつあるから。ただ、問題点もたくさんある」と話し、このあとの議論が白熱するのを予感させた。

  • 400mハードルで世界と戦った山崎一彦さんは、日本陸上競技連盟強化副委員長の立場から箱根駅伝に意見した

  •  第二部は、いくつかのテーマに沿って議論が進んだ。
     最初のテーマは『トップアスリートを育てる環境』。これはまず、日本陸連強化副委員長の立場から山崎さんが進めた。
    「箱根駅伝には“世界で金メダルをとろう”という先輩方が築き上げてきた思いがあり、それが目的。“箱根駅伝でなんとかしよう”という手段と目的とは明確に分けなければならない。例えば、過去10大会中7大会で、5区・山上りで区間賞を取ったチームが優勝しているが、そこに執心し過ぎても、オリンピック選手を育成する立場からすると、逆に面白みがなくなってくる。ルールを改正するなど、違ったやり方もあるんじゃないかと考えてしまいます。対他大学で見てしまいますが、日本の長距離界がどのくらいのポジションにいるのかを客観的に見ると、平均は高くても、世界で戦える選手が出てきていない。箱根駅伝から、スーパーどころか、ウルトラくらいの選手が出てきてほしい」と、具体的なデータを示しながら提言した。

指導者の重要性について

 次のテーマは『指導者の重要性について』。このテーマでは、北島康介選手らを育てた平井伯昌コーチとの出会いによって、スランプを脱し復活を遂げた寺川さんが自身のエピソードを披露。
「アテネ五輪に出たものの、北京五輪は出られず、そこで、自ら平井先生に指導をお願いしに行きました。平井コーチが、他の指導者と違うのは、練習の中身ではなく、選手とものすごくコミュニケーションをとること。選手とコーチとが一緒に目標を定め、そのために何をしなければいけないかを一緒に考えて、そこに向かっていくんです。だから、内容の濃い練習ができる」と話した。

世界と戦うための勝者のメンタル

 続いてのテーマは『世界と戦うための勝者のメンタル』。「そもそも勝つためのメンタルは鍛えられるもの?」という村山アナウンサーの質問には、田中さんが回答。
「自分の実力を発揮したいと思う人のメンタルには共通点があり、3つのCに置き換えて表現できます。1つ目のCはコントロールのC。抑制という意味ではなく、調整するという意味。これは鍛えられるメンタル面です。2つ目のCはチャレンジのC。“チャレンジ精神”というほどのものではありませんが、そもそも人生には変化があるのが当たり前。何事も能動的にチャレンジしていかないといけない。3つ目はコミットメントのC。コミットメントっていうのは、その競技にコミットする、一生懸命やるということ。もっと大枠で捉えると、自分の人生は自分の力で幸せにすることに決めるという意味です。2つ目と3つ目のCは、英語でいう“スピリチュアル”。哲学的な側面があり、“なぜそれをやるか”を考えることが大事です」と答えた。
 また、寺川さんが「私はイメージトレーニングを常にしていました。入場するところから、プールの前に立って紹介されて、スタートして、泳いでタッチして、ゴールの掲示板を見て、喜ぶところまで、すべてを1つのローテーションとして、イメージしていました。特別メンタルを鍛えようとしなくても、メンタルトレーニングは日々の練習の時に自然に行われていて、集中して目標に向かってやっていくなかで自然と培われていきました」と話すと、上田さんが「メダリストのメンタリティ、真髄を聞かせてもらった」と唸った。さらに「オリンピックでメダルをとる方はとにかくポジティブシンキング。とにかく貪欲で、とにかく発想の切り替えが早いですね。うちの選手がみんなそうなってくれればいいな」と言葉を続け、観衆の笑いを誘った。

箱根駅伝における勝負と育成

  • 箱根駅伝の大ファンだという、音楽プロデューサー、アレンジャーで、モータージャーナリストでもある松任谷正隆さん

  •  次のテーマは『箱根駅伝における勝負と育成』。松任谷さんが「箱根駅伝の面白さは、思った通りにいかないこと。変な話だけど、大学生ってひょっとしたらまだ子どもなのかな、と思いました。だから、いつも通りのことができない人もいれば、いつも以上のことができちゃうこともある。そこが、箱根駅伝の醍醐味であり、社会人と一番違う点のような気がするのですが…」と率直な感想を口にした。

     これには、上田さんが「もちろんチャンピオンスポーツとして、勝つことを目指しますが、学生スポーツから逸脱してしまうと、心温かい声援って受けられないんじゃないかなとも思います。悲喜こもごもの青春ドラマがいっぱいあるので、それを1つひとつ選手たちと積み木を積み上げるようにしていかないといけない」と答えた。

トップアスリートを育てる上で一番大切なこと

 最後は、『トップアスリートを育てる上で一番大切なこと』を、各パネリストが手元のフリップに記入して回答した。

  • 松任谷さん『面白がらせる事』

    “挑戦していることが面白いな”と思わせることじゃないかな

  • 田中さん『聞く』

    目の前の選手は、一人ひとりやる気の源泉も違うし、なぜ競技をしたいのかも違うし、最終目標も違う。なので、コーチは聞くことが一番大事

  • 寺川さん『同じ目標』

    選手とコーチは、同じ目標をもち、同じ目線に立って、同じところを目指していくこと。そこがずれてしまうと、目標もバラバラになってしまうので、必ず同じ立ち位置にいることが大切だと思います

  • 山崎さん『木を見て森を見る』

    1つは、木=個人、森=チームという見方。また、選手には、箱根駅伝は全てであって、全てではないという視点で、トライしてもらいたい。指導者は、全体を見ないと指導できないので、大学生だけでなく、トップが今どうなっているかという状況を見ながら指導していくことが大事だなと常々思っています

  • 上田さん『GROW』

    1字1字に意味があります。Gはゴール。目標や目的を見失わないように、しっかり話し合って、しっかり定めよう。でも、夢ばかり持っていても仕方がないので、R=リアリティ、現状はどうなっているのかを見て、目標に一歩ずつ近づけていく。次に、選手と監督は、O=オプションを選択しないといけない、どんなトレーニングをしていくのか。その方法が見つかったら、最後にW=ウィル“志”を確認します。一番大事なのが志の部分です。それらを全部つなげると、GROW=成長していくことになります。その1つひとつを丁寧にやっていくことが、トップアスリートを育てていく上で大事なことではないかなと思います

 結びは、92回目の継走を迎える来年1月2日・3日の箱根駅伝への期待を、それぞれが述べて、約2時間にも及んだ第92回箱根駅伝シンポジウムは、あっという間に大盛況のうちに幕を閉じた。

サッポロビール箱根駅伝応援サイト

第92回箱根駅伝シンポジウム

  • 日本テレビの村山喜彦アナウンサーの司会でディスカッションは進められた

  • 11月19日に、箱根駅伝のスタート・フィニッシュ地点でもある大手町・読売新聞社内の「よみうり大手町ホール」で、第92回箱根駅伝シンポジウムが開催された。10月の予選会を終え箱根駅伝に出場する21チームが出揃い、出雲駅伝、全日本大学駅伝と2つの駅伝も熱戦が展開された。1カ月半後に迫った箱根駅伝の号砲の時を、今か今かと待ちわびる駅伝ファン約450人が会場に詰めかけて、多彩なパネリストの答弁に熱心に耳を傾けていた。

  • 関東学生陸上競技連盟の靑葉昌幸会長が挨拶

  •  はじめに、主催の関東学生陸上競技連盟の靑葉昌幸会長が挨拶。
    「100回を目指しての第一歩、第91回大会は、青山学院大学が素晴らしい記録で優勝しました。そういう素晴らしい記録を、2020年の東京オリンピックへの架け橋としなければ“箱根駅伝は何をやっているんだ”とお叱りを受けるんじゃないかと主催者の会長として思っています」と、箱根駅伝から世界へ羽ばたく選手を輩出すべく決意を語った。

  • 現在はメンタルトレーニング上級指導士として活躍する、ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリストの田中ウルヴェ京さん

  •  シンポジウムの第一部は、メンタルトレーニング上級指導士としてアスリートを支える田中ウルヴェ京さんの基調講演。「スポーツにおけるメンタルトレーニングの重要性」をテーマに、田中さんが熱弁を振るった。
     田中さんは、ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリストでもあり、アスリートの視点から、また後進の指導に当たっていたこともあり、コーチとしての立場から、2人の子を持つ母親としての立場から、そして、メンタルトレーニング上級指導士としての立場からと、「4役をいろいろ回転させながら、箱根駅伝をとても面白く見ています」と言う。その上で、スポーツにおけるメンタルトレーニングの重要性をわかりやすく聴講者に説明した。
     田中さんが繰り返し主張したのは、「どんなメンタルが必要かは、競技どうこうではなく、人によって違う」ということ。その上で、本番で実力を発揮するためには、「適度な緊張が必要」と話した。

「“緊張すること”が悪いのではなく、“緊張することを悪いと思うこと”が悪い。緊張しなさすぎてもダメ、緊張しすぎてもダメ。ちょうどいい緊張は、人によって合わせ方が違います」と説明すると、“なるほど”と頷く人が多かった。
 さらに“たすきの重み”について、シンクロ選手にとっての“鼻栓”を引き合いに出して解説。
「シンクロ選手が付ける鼻栓は、たかが500円そこらで針金でできているものですが、これが命なんです。これが外れると演技ができません。すごく思いが入っているので、人には触れられなくないものです。駅伝のたすきも、彼らの魂、彼らの命が込められている。そう思うと、たすきを繋ぐことは本当に素晴らしい」と話した。
 最後に、司会を務めた日本テレビ・村山喜彦アナウンサーが「マラソン大会やゴルフのコンペに出る時に、ついつい緊張するのですが、何かいい方法はありませんか?」と田中さんに質問。
「緊張していること、ドキドキしていることに、まず気付くことが大事。その上で、イライラしているとか、ドキドキしているとかに気付いたら、鼻で息を長く吸って、長く細く口から息を吐くことをお勧めします。目の前の事実は変わりませんが、建設的な思考に入りやすくなります」と実践的なアドバイスを送った。

  • ロンドン五輪競泳100m背泳ぎ銅メダリストの寺川綾さんは、自身の経験を基に話をした

  •  第二部は、「箱根駅伝から世界へ〜トップアスリートの育成について」と題してパネルディスカッションが行われた。
     パネリストは、400mハードルの選手としてバルセロナ、アトランタ、シドニーと3大会連続で五輪に出場し、現在は日本陸上競技連盟(以下、日本陸連)強化副委員長を務める山崎一彦さん(順天堂大学スポーツ健康科学部准教授)、ロンドン五輪競泳女子100m背泳ぎ銅メダリストの寺川綾さん(ミズノ)、第一部に続いて田中ウルヴェ京さん、大の箱根駅伝ファンを自認する音楽プロデューサーの松任谷正隆さん、そして、関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長で山梨学院大学陸上競技部監督の上田誠仁さん。現場指導者、他競技のトップアスリート、メンタルトレーナー、駅伝ファンと、それぞれ違った立場から意見を交換した。

 まずは、前回(91回)大会のダイジェストと10月に行われた第92回箱根駅伝予選会のダイジェストを見て、今シーズンの展望を語った。
 わずか10秒の差が明暗を分けた箱根駅伝予選会を振り返って、
「数字だけ見ると、たった10秒、一人ずつに分配すれば1秒なんですけど、選手にとっては1秒が本当に大変。“あとちょっと頑張ればいいじゃない”って思われるんですけど、“そんな簡単に言わないでよ”っていうのが選手としての気持ちですよね」と、その1秒の重みを知る寺川さんが選手の気持ちを代弁した。
「残酷“だけど”感動的。残酷“だから”感動的。こういうのを見ると泣きそうになります。悔しいという感情はメンタルで解決できるものではありません。本当にきついからスポーツって素敵なんだと思います」と田中さんは、箱根駅伝の魅力を語った。

  • 関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長で山梨学院大学陸上競技部監督の上田誠仁さん

  •  そして、その箱根駅伝予選会の過酷さを、指導者として何度も経験している上田さんは「箱根駅伝の本大会のスタートラインであるここ大手町に向かう時は“よし、晴れの舞台だ!”という気持ちなのですが、予選会はどういう心境かというと、健康診断の検診車でバリウムを飲まなければいけない時と同じ。重く、ズーンとくるものがあるんですよ」と独特な表現で予選会に臨む心境を例えた。その上で、「レベルアップが著しい。我々が初出場した頃は、(1万m)28分台が一桁しかいなかったのが、今は100名に近づこうとしている。参加校も増えたのも一因だが、どのチームにも29分を切るスピードランナーが1人、2人、多いところは10人そろえて出てくるくらいの勢いがある。その勢いがこの予選会にも、箱根駅伝にも反映されている」と話した。この事実に警鐘を鳴らしたのが山崎さん。「各校、力がかなり迫っているのが、今の大学長距離界。高度に平均化しているのは、トレーニング環境も整いつつあるから。ただ、問題点もたくさんある」と話し、このあとの議論が白熱するのを予感させた。

  • 400mハードルで世界と戦った山崎一彦さんは、日本陸上競技連盟強化副委員長の立場から箱根駅伝に意見した

  •  第二部は、いくつかのテーマに沿って議論が進んだ。
     最初のテーマは『トップアスリートを育てる環境』。これはまず、日本陸連強化副委員長の立場から山崎さんが進めた。
    「箱根駅伝には“世界で金メダルをとろう”という先輩方が築き上げてきた思いがあり、それが目的。“箱根駅伝でなんとかしよう”という手段と目的とは明確に分けなければならない。例えば、過去10大会中7大会で、5区・山上りで区間賞を取ったチームが優勝しているが、そこに執心し過ぎても、オリンピック選手を育成する立場からすると、逆に面白みがなくなってくる。ルールを改正するなど、違ったやり方もあるんじゃないかと考えてしまいます。対他大学で見てしまいますが、日本の長距離界がどのくらいのポジションにいるのかを客観的に見ると、平均は高くても、世界で戦える選手が出てきていない。箱根駅伝から、スーパーどころか、ウルトラくらいの選手が出てきてほしい」と、具体的なデータを示しながら提言した。

指導者の重要性について

 次のテーマは『指導者の重要性について』。このテーマでは、北島康介選手らを育てた平井伯昌コーチとの出会いによって、スランプを脱し復活を遂げた寺川さんが自身のエピソードを披露。
「アテネ五輪に出たものの、北京五輪は出られず、そこで、自ら平井先生に指導をお願いしに行きました。平井コーチが、他の指導者と違うのは、練習の中身ではなく、選手とものすごくコミュニケーションをとること。選手とコーチとが一緒に目標を定め、そのために何をしなければいけないかを一緒に考えて、そこに向かっていくんです。だから、内容の濃い練習ができる」と話した。

世界と戦うための勝者のメンタル

 続いてのテーマは『世界と戦うための勝者のメンタル』。「そもそも勝つためのメンタルは鍛えられるもの?」という村山アナウンサーの質問には、田中さんが回答。
「自分の実力を発揮したいと思う人のメンタルには共通点があり、3つのCに置き換えて表現できます。1つ目のCはコントロールのC。抑制という意味ではなく、調整するという意味。これは鍛えられるメンタル面です。2つ目のCはチャレンジのC。“チャレンジ精神”というほどのものではありませんが、そもそも人生には変化があるのが当たり前。何事も能動的にチャレンジしていかないといけない。3つ目はコミットメントのC。コミットメントっていうのは、その競技にコミットする、一生懸命やるということ。もっと大枠で捉えると、自分の人生は自分の力で幸せにすることに決めるという意味です。2つ目と3つ目のCは、英語でいう“スピリチュアル”。哲学的な側面があり、“なぜそれをやるか”を考えることが大事です」と答えた。
 また、寺川さんが「私はイメージトレーニングを常にしていました。入場するところから、プールの前に立って紹介されて、スタートして、泳いでタッチして、ゴールの掲示板を見て、喜ぶところまで、すべてを1つのローテーションとして、イメージしていました。特別メンタルを鍛えようとしなくても、メンタルトレーニングは日々の練習の時に自然に行われていて、集中して目標に向かってやっていくなかで自然と培われていきました」と話すと、上田さんが「メダリストのメンタリティ、真髄を聞かせてもらった」と唸った。さらに「オリンピックでメダルをとる方はとにかくポジティブシンキング。とにかく貪欲で、とにかく発想の切り替えが早いですね。うちの選手がみんなそうなってくれればいいな」と言葉を続け、観衆の笑いを誘った。

箱根駅伝における勝負と育成

  • 箱根駅伝の大ファンだという、音楽プロデューサー、アレンジャーで、モータージャーナリストでもある松任谷正隆さん

  •  次のテーマは『箱根駅伝における勝負と育成』。松任谷さんが「箱根駅伝の面白さは、思った通りにいかないこと。変な話だけど、大学生ってひょっとしたらまだ子どもなのかな、と思いました。だから、いつも通りのことができない人もいれば、いつも以上のことができちゃうこともある。そこが、箱根駅伝の醍醐味であり、社会人と一番違う点のような気がするのですが…」と率直な感想を口にした。

     これには、上田さんが「もちろんチャンピオンスポーツとして、勝つことを目指しますが、学生スポーツから逸脱してしまうと、心温かい声援って受けられないんじゃないかなとも思います。悲喜こもごもの青春ドラマがいっぱいあるので、それを1つひとつ選手たちと積み木を積み上げるようにしていかないといけない」と答えた。

 最後は、『トップアスリートを育てる上で一番大切なこと』を、各パネリストが手元のフリップに記入して回答した。

 最後は、『トップアスリートを育てる上で一番大切なこと』を、各パネリストが手元のフリップに記入して回答した。

  • 松任谷さん『面白がらせる事』

    “挑戦していることが面白いな”と思わせることじゃないかな

  • 田中さん『聞く』

    目の前の選手は、一人ひとりやる気の源泉も違うし、なぜ競技をしたいのかも違うし、最終目標も違う。なので、コーチは聞くことが一番大事

  • 寺川さん『同じ目標』

    選手とコーチは、同じ目標をもち、同じ目線に立って、同じところを目指していくこと。そこがずれてしまうと、目標もバラバラになってしまうので、必ず同じ立ち位置にいることが大切だと思います

  • 山崎さん『木を見て森を見る』

    1つは、木=個人、森=チームという見方。また、選手には、箱根駅伝は全てであって、全てではないという視点で、トライしてもらいたい。指導者は、全体を見ないと指導できないので、大学生だけでなく、トップが今どうなっているかという状況を見ながら指導していくことが大事だなと常々思っています

  • 上田さん『GROW』

    1字1字に意味があります。Gはゴール。目標や目的を見失わないように、しっかり話し合って、しっかり定めよう。でも、夢ばかり持っていても仕方がないので、R=リアリティ、現状はどうなっているのかを見て、目標に一歩ずつ近づけていく。次に、選手と監督は、O=オプションを選択しないといけない、どんなトレーニングをしていくのか。その方法が見つかったら、最後にW=ウィル“志”を確認します。一番大事なのが志の部分です。それらを全部つなげると、GROW=成長していくことになります。その1つひとつを丁寧にやっていくことが、トップアスリートを育てていく上で大事なことではないかなと思います

 結びは、92回目の継走を迎える今度の箱根駅伝への期待を、それぞれが述べて、約2時間にも及んだ第92回箱根駅伝シンポジウムは、あっという間に大盛況のうちに幕を閉じた。



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