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ホーム >箱根駅伝応援サイト > NumberWeb掲載記事Vol.3

Number Web

青学大連覇を阻む者たち。
「知将が描くそれぞれの戦略」

生島淳=文

photographs by Shigeki Yamamoto

(Number2017年12月20日発売号より転載)

93回の歴史を誇る箱根駅伝で、
3連覇したチームは全部で6大学。
うち5大学が4連覇以上している。
残る1校は今季4連覇を狙う青学大。
歴史の法則を覆すのは
東洋大か東海大か。
それぞれの戦略を聞く。

「箱根駅伝に挑むのは、本当に面白いです。1月2日、3日に向けて最高の組織、布陣を作ろうとして練習を重ねていくわけですが、その流れの中で学生たちが想像を超えた成長を見せる時があります。毎年、同じように準備を重ねていったとしても、変化がある。そこが学生スポーツの魅力だと思います」

母校を率いて優勝監督となること3度。東洋大学の酒井俊幸監督は4度目の総合優勝を狙い虎視眈々と準備を進めている。
「2014年の優勝を最後に、青山学院大学に3連覇されています。ウチは優勝したチームから設楽(啓太、悠太)兄弟、服部(勇馬、弾馬)兄弟という東京オリンピックを狙う選手たちが卒業していき、今年は『選手層の再構築』を掲げて強化を進めてきました」

再生の1年と見られていたが、出雲駅伝、全日本大学駅伝では一時トップに立った。駅伝では必ず見せ場を作るあたり、酒井監督の手腕は磨きがかかっている。
「出雲、全日本ともたしかに見せ場は作れましたが、プラン通りというわけではありませんでした。箱根駅伝では選手層も問われることになります。ここにきて学年ごとに柱となる選手が出てきて、ようやく戦える選手層になってきました」

なかでも出雲、全日本で重要区間を任された山本修二(3年)は駅伝に強いところを見せている。
「彼はまだ発展途上ですが、チームの中心的存在であることに間違いありません。ただ、山本が成長しているのは下級生からの突き上げがあるからです。1年生の西山(和弥)が日本インカレの1万mの日本人トップになり、2年生の相澤(晃)が全日本の1区で区間賞を取っていい流れを作ったように、下級生が充実していますね。当然、山本からすれば下級生には負けたくないでしょうし、下級生同士の競争意識もあります。今年は苦労した4年生も、彼らの走りを見て刺激を受けてますし」

戦力は整いつつある。酒井監督が予測した今回の箱根駅伝の優勝タイムは昨年並みで、東洋大を含め、多くの学校にチャンスが生まれると見ている。
「前回優勝した青学大さんの総合タイムは11時間4分10秒でした。全体の戦力を見渡してみると、今回も優勝タイムが10時間台に突入することはないと見ています。ウチとしてもいい流れを作れれば、面白い展開になるはずです」

酒井監督の戦略はこうだ。
「東洋大としては往路優勝を狙っていきます。まずは2区でトップに立ち、主導権を握りたいですね。2区では神奈川大学の鈴木健吾君が強いとは思いますが、1区からうまくつなぎ、2区、3区といい流れを作りたいと思います」

そして重要になってくるのが、5区の山上りだ。かつて、東洋大には「山の神」と呼ばれた柏原竜二がいた。山上りを制した学校が総合優勝にグンと近づいたが、前回から4区の区間距離延長、それに伴って5区の距離短縮が行われたため、相対的に重要性は低くなっている。「それでも」と酒井監督は5区の重要性を説く。
「距離が短くなったとはいえ、平地では考えられないような順位変動が起きる可能性は依然あります。平気で1、2分変わってくるのは5区だけです。選手層が薄い大学にとっては、5区をうまく乗り切ればチャンスが広がります。ウチとしては、往路優勝が出来れば言うことはありませんが、少なくとも先頭から1分以内につけられれば復路につながります」

頂点を狙っている東洋大だが、今回も4連覇を狙う青学大の優位は動かないというのが酒井監督の見立てだ。
「青学大さんにはこの3年間の成功体験がありますからね。だいたい同じような流れで区間配置をしてくるんじゃないでしょうか。ただ……」

青学大の原晋監督が、復路勝負に出る可能性もあると酒井監督は警戒している。
「箱根駅伝の復路のセオリーとしては、シード権を狙うなら9区、10区に信頼できる選手を置きます。ただ、優勝するためには7区、8区に主力を置くのがポイントになります。原さんは往路を将来のことも考えて下級生でしのぎ、6区は過去2年、58分台で山を下っている小野田(勇次・3年)君で追い上げ、7区に往路の重要区間を走ると予想されている田村(和希・4年)君、8区に下田(裕太・4年)君を配置して復路勝負に打って出てくる可能性があります。走る相手にもよりますが、この3区間で4、5分をひっくり返す力はあるでしょう」

6区小野田、7区田村、8区下田となれば、前回と全く同じ配置。奇策に見えて、じつはオーソドックスな配置と見ることも出来る。このあたりの監督間の読み合いも箱根駅伝の醍醐味だ。
「ただし、優勝予想タイムを考えると、神奈川大学、東海大学にも目配りをしていく必要があります。全日本で勝った神奈川大さんは2区の鈴木君でトップに立ち、3区、4区に主力を投入して逃げ切りを図るかもしれません。3区で逃がしてしまうと、厄介ですね。出雲で優勝した東海大さんは選手層が厚いので、7区に入る前で差をつけられると厳しいです。その意味でもウチは往路でしっかり走る必要があります」

箱根駅伝を見ていて面白いのは、各大学の先輩たちが培ってきた「見えない力」が現役選手たちの能力を引き出すことである。2011年の大会で、東洋大はわずか21秒差で早稲田大学に敗れ、2位。讃えられるべき結果だったが、選手たちは大粒の涙をこぼし、そこからひとつのスローガンが生まれた。
「その1秒をけずりだせ」

東洋大の伝統は今も受け継がれていると酒井監督は話す。
「『TU』のユニフォームを着たら、東洋の走りを継承する責任も生まれます。5区を4年連続で走った柏原の走りには、駅伝を知らないみなさんにも伝わる『何か』がありました。選手は走りで思いを表現することが出来るのです」

今季、3年生で駅伝主将を務める小笹椋も、東洋大の精神をしっかりと受け継ぐひとりだ。
「鉄紺のユニフォームを着ると、簡単には諦められないという気持ちが湧いてきます。キツくて個人種目だったらやめてしまいそうな状態だったとしても、駅伝で鉄紺のユニフォームを着て、タスキをかけていたら最後まで粘るしかないですから。どうにかして1秒でも早くタスキを仲間に渡すのが責任です」

青学大の4連覇阻止に向け、1秒にこだわる東洋大は最終調整に入っている。そして酒井監督が青学大と同様、大いに警戒しているのが東海大だ。
「出雲の優勝で分かったように、鬼塚(翔太・2年)君、關(颯人・2年)君といった2年生のランナーはスピードがあります。それだけでなく、11月に行われたいろいろな競技会を見ていると、上級生が好タイムで走っていて、エース級の力だけでなく、選手層でも東海大さんが一番じゃないでしょうか」

東海大にはまだ箱根駅伝での総合優勝の経験はないが、手の届くところまで迫ってきたのは間違いない。特に今年の2年生は高校時代から実績のある選手がそろい、入学時から初制覇を期待されている。ただし、長野・佐久長聖高で佐藤悠基(東海大→現・日清食品グループ)、大迫傑(早大→現・ナイキオレゴンプロジェクト)ら日本代表選手を指導した経験もある両角速監督は、高校から大学への移行は言葉でいうほど簡単ではないと語る。
「高校生の強化の中心は5000mです。それを大学入学後の半年間で、4倍の距離にあたる20㎞にスムースに延ばせるかというと、そう簡単ではありません。特にここ数年の箱根駅伝は、優勝タイムが10時間台に突入してレベルが上がり、大学1年生にとっては適応するのにより時間が必要になりました。私は、選手によっては4年間かかってもいいと考えています。それぞれの成長に合わせて育成できればいいかな、と」

箱根駅伝は段階を踏まないと
勝てないレースだ(両角監督)。

両角監督の箱根駅伝に対するアプローチは、しなやかだ。選手に対して急激に階段を上らせるのではなく、徐々に頂点へと到達できればいいと考える。
「もちろん、今回もいい結果を狙っていきます。これは冗談ですが、今年は出雲を勝って、全日本では2位。そうすると箱根では3位かな、と(笑)。そして来年は出雲、全日本で優勝して、箱根は2位。ようやく再来年に3つ勝てればうれしいです(笑)。これは冗談としても、私は箱根駅伝で勝つためには段階を踏む必要があるのではないかと思います」

それは東海大の育成方針とも関係してくる。昨今の他大学の強化方針を見ると、ハーフマラソンに軸足を置きつつ、有力な選手がいればフルマラソンにも積極的に出場していく大学もある。一方で東海大の軸足は、トラックにある。
「選手にはそれぞれ個性があります。トラックの1500mや3000m障害に適性のある選手もいれば、ハーフマラソンが強い選手もいます。ひとつの型に嵌めるのではなく、トラックに適性があるのなら、そこで強さを発揮してくれればいいと思っているんです」

今年は東海大勢のトラックでの活躍が目立った年だった。前回の箱根駅伝で5区山上りを担当した館澤亨次(2年)は関東インカレ、日本選手権の1500mで優勝。また、鬼塚が関東インカレの5000mで日本人トップの2位に入り、部全体で見ても5000mでは13分台のランナーが20人に迫る勢いだ。
「2020年の東京オリンピックは目の前です。トラック種目で代表を狙っていける人材を育てることも重要です」

今年の前半、トラックでいい流れを作れたことが、出雲駅伝の10年ぶりの優勝につながったと両角監督は話す。
「出雲は最短区間が5・8㎞、最長が最終区の10・2㎞ですから、トラックのスピードがそのまま駅伝に活かせるわけです。1区の阪口(竜平・2年)がトップに立ち、館澤、松尾(淳之介・2年)、鬼塚、三上(嵩斗・3年)、關といい流れで駅伝が出来ました。その出雲組に、全日本に向けて調整を進めてきた川端(千都・4年)、國行(麗生・4年)、湊谷(春紀・3年)が入って全日本を戦ったわけですが、最終区で川端が神奈川大の鈴木君に逆転された。川端がタスキを受けた時点で17秒差をつけていたわけですが、少なくとも1分は欲しかったですね。メンバーの中には調整が100%ではなかった選手もいたので、このあたりは箱根駅伝に向けての課題だと思っています」

トラックだけでなく、駅伝でも実力を示しつつある東海大。青学大の4連覇を阻むだけのスピードはすでに持っている。
「我々が力をつけて来られたのも、青学大さん、そして原監督の存在があったからだと思っています。その意味でありがたい存在ですし、感謝しています。もちろん、簡単に倒せる相手ではありませんが、ウチは最高の準備を進めるだけです」

今回の箱根駅伝の往路では、東海大の2年生が見せ場を作るだろう。前回は1区で区間2位だった鬼塚はラストのキレ味が武器で、前回の2区で苦戦を強いられた關は、出雲ではアンカーとして優勝のゴールテープを切った。また、出雲で区間賞を取った阪口も重要区間を任される見込みだ。ただ、両角監督は「2年生にはまだまだ甘い部分があります」と語る。
「鬼塚、關ともに全日本では力が発揮できませんでした。でも、大学の先輩である佐藤悠基や村澤(明伸・現・日清食品グループ)は駅伝では絶対に失敗しなかった。この差はどこにあるのか。まだ気持ちや生活面で弱いものがあるということです。少なくとも、先輩たちのレベルに到達しないとオリンピックには行けないよ、と話しています。彼らの『強くなりたい』という欲求が湧いてくるのを待っています」

両角監督は敢えて誘導はせず、選手の自主性を重んじる方針だが、待つのは苦しいと本音を漏らす。「監督なんて、ストレスの塊です」と笑う。

下級生だけでなく、東海大はコツコツと練習を積み上げてきた4年生の存在が、選手層を厚くしている。単独走になることが多い復路で上級生が力を出し切れば、総合優勝にまた一歩、近づくことになる。

今年の主将、春日千速には両角監督も全幅の信頼を置く。入学時から3年連続で箱根を走ってきたが、今年はケガに苦しみ、箱根駅伝に間に合わせようと懸命の努力を続けている。春日は4年生の役割をこう話す。
「箱根駅伝に対してどれだけ勝ちたいか、その気持ちは学年が上がるにつれて大きくなっていきます。特に、4年生が最後どれだけチームの士気を上げられるかは重要です。練習や生活態度で人間性を高めていくことで、下級生たちが『この4年生を勝たせたい。いい思いをさせて卒業させたい』と感じるはずなんです。少なくとも、僕はそうでした。だからこそ、そう感じてくれる4年生になれるよう、最後まで努力したいと思います」

素質ある下級生と、努力を重ねてきた上級生たち。チームを束ねる両角監督は、オリンピック選手育成という目標を掲げながら、箱根駅伝を戦う意味をこう話す。
「20㎞を走る練習を重ねることで、トラックに還元されるものもあります。しかも駅伝は人のために頑張りますから、個人種目で走っているのとは違った力が生まれてきます。そこに箱根駅伝を戦う良さがあると思います」

  • 東洋大:酒井俊幸
    Toshiyuki Sakai / TOYO UNIVERSITY
    さかい・としゆき 1976年5月23日福島県生まれ。’09年に東洋大の監督に就任。以降、箱根駅伝総合優勝を3回、出雲、全日本大学駅伝も1回ずつ制覇
  • 東海大:両角速
    Hayashi Morozumi / TOKAI UNIVERSITY
    もろずみ・はやし 1966年7月5日長野県生まれ。佐久長聖高駅伝部監督時代、多くの長距離選手を育てた手腕を認められ、’11年に東海大の監督に就任

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