風味爽快ニシテ
育てていただいた新潟の皆様に恩返しをしたい。営業、開発、宣伝のスタッフが一体となり、熱い想いをカタチにしました。
前田英一

新潟とサッポロビールとの関係は、歴史的にとても深いものがあります。サッポロビールの前身・開拓使麦酒醸造所の初代醸造技師である中川清兵衛は、新潟県与板町(現 長岡市)の生まれ。さらに、その開拓使麦酒醸造所を受け継いで札幌麦酒会社を設立した大倉喜八郎は、新潟県新発田市の生まれ。サッポロビールの生みの親と育ての親は、いずれも新潟県人だったのです。

そんなご縁から始まって現在でも新潟の多くの方々には、サッポロビールに特別な愛着を感じていただいています。いつも温かい応援をしてくださり、私たちを育てていただいている新潟の皆様に恩返しをしたい。十年ほど前から社内でそんな議論をしながら企画を温めて、ついに商品化を実現したのが新潟限定ビイル「風味爽快ニシテ」です。このビールには地元への感謝の気持ちと愛情をこめました。

商品開発には、まず日々の現場を肌で感じている新潟支社の営業スタッフの声を集約していきました。米どころ、酒どころで知られる新潟のお客様は、お酒に求めるレベルがとても高いです。魚介ではノドグロなど、野菜では枝豆などが有名ですが、そんな新鮮でおいしい食材とともに、すっきりとした淡麗な味わいの日本酒を楽しんできた伝統があります。新潟ならではのビールとは、料理の味を引き立てる爽やかさがありながら、しっかりとした旨味をもたせるべきという意見が多く占めました。開発にあたっては、こうした新潟の方々の好みを十分に反映させていったのです。

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開発コンセプトは、新潟県人・中川清兵衛が追い求めた味。新製法を導入して実現しました。

佐々木昌平

1877年(明治10年)、ドイツで醸造技術を学んだ中川清兵衛が、開拓使麦酒醸造所で初めてのビールをつくりました。その名は冷製「札幌ビール」といい、現在まで続くサッポロビールの第一号商品といえます。今回の商品開発は新潟の方々に恩返しする意味で、この冷製「札幌ビール」で追い求めた味を実現するというテーマで始まりました。ただし、当時のレシピはいまのビールと比べて味も香りもかなり重厚なものでした。そこで新潟支社の営業チームとディスカッションを重ねて、新潟のお客様の味覚に合わせながら現代風にリメイクを行う開発方針に決定。めざしたビールの味は、しっかりとした旨味、新潟の食に合う爽やかなのどごしです。

しかし、「しっかりとした旨味」と「爽やかなのどごし」を両立させるのは、実は簡単なことではありません。これらを同時に可能にするためには、二つの技術的なブレークスルーが必要でした。一つは、麦汁仕込工程において高温で煮沸せず、徐々に温度を上げることで麦芽の旨味を引き出すオールインフュージョン製法の採用。もう一つは、ビールの原料ホップの投入タイミングを適正化することで、苦みを抑えつつ香りだけを抽出する製法の導入。これらにより、爽やかですっきりとしたのどごし感をつくることに成功したのです。通常、ビールの中味をつくるのは商品開発チームなのですが、今回は工場の製造チームと何度もやりとりしながらつくりあげました。

「風味爽快ニシテ」というネーミングは、冷製「札幌ビール」を発売した当時の宣伝コピーである「風味爽快ニシテ健胃ノ効アリ」から名付けました。味覚を表した前半部分の表現は、ビールの味の方向性とちょうど一致していました。パッケージデザインも当時の意匠をモチーフにしながら、白を基調にブルーを配して爽やかな味を表現しています。

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新潟の方々に貢献したいという熱意をアピール。大きな反響をいただき、通年販売が決定しました。

尾田将文

新潟支社が発案して、新価値開発部と共同で商品開発をした「風味爽快ニシテ」。新潟への熱い想いと新潟ならではの特長が織り込まれ、しかもサッポロビール創業の魂までも感じられる、魅力あふれる商品です。ただし、お客様にコミュニケーションをするうえで課題がありました。それはサッポロビールがなぜ新潟で限定商品を出すのかという理由が、商品をパッと見ただけでは伝わりづらいという点でした。

そこで、まずは缶のラベルの裏側に、商品の由来を解説した説明文を入れて理解を促しました。さらに新聞広告やポスター、ウェブサイト、テレビ番組内の告知などで、サッポロビールの生みの親と育ての親が新潟県人であったことを強くアピールしたのです。サッポロビールの歴史は新潟なくしては語れないこと、新潟への感謝をこめて特別に醸造したビールであることなど、「風味爽快ニシテ」のブランドストーリーを熱く伝えていきました。

その反響は、当初の予想を大きく超えるものでした。2012年5月、「風味爽快ニシテ」発売を発表すると、飲食店から次々にお問い合わせをいただき、発売前に多くのお店での取扱が決まりました。発売後、スーパーや酒販店でも目立つ場所に商品を展示していただき、大々的に薦めていただきました。また観光地、駅や空港でも、新潟のお土産として多くの観光客の方々にご購入いただきました。そして最終的には、缶商品は当初目標の2倍超の本数を売り上げ、業務用樽生は販売目標を3倍超に引き上げたのです。

2012年11月から缶商品が通年発売となり、数量限定で大びん・中びんの販売も始まります。飲食店ではもちろん、ご家庭での晩酌でも楽しんでいただければ幸いです。また「風味爽快ニシテ」ギフトボックスの販売もスタートさせました。これは新潟の魅力を県内・県外へ伝える観光商材としてご活用いただきたいという思いでつくったものです。このほかにも、自然や食文化など新潟の情報を発信する取り組みを積極的に行い、さらに新潟の皆様に貢献できるよう頑張っていきます。

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