

銀座にある日本料理の店がある。会員制で参加するお客はむろん大人だけである。
当日のお料理のテーマは毛筆で丁寧に書かれ、まずそのお料理を想像し理解できる。
室礼のお軸や飾り物、置物は客の知識や感性に任される。そこには日本文化が凝縮されている。
毎回お料理の素材と旨さに加え、食器の歴史や文化の知識が無いと楽しめない。
食事を味わうことは、料理を口にするだけの世界ではないことを教えてくれ、大人の客は笑顔でそれらを語り合う。
本物を見分けるセンスを持つ人こそ大人である。

散歩は朝の気配が充分にあるときがふさわしい。いつの間にか夜の帰宅時間に散歩をすることに変わっていた。それは都会暮らしの私には早朝から歩く人のリズムがあわただしくて、散歩から得られる、犬を連れた知り合いとの会話や、ジョギング中の友人夫妻との笑顔の声も、雑踏に埋もれぱっと遠くへ通り過ぎてしまう。帰宅の遠回りは楽しい。ウィンドウの向こうで、オーナーが「もう食事は済んだの?」「近くで一緒に飲まない?」と手信号と身振りで話しかけてくるブランドショップからは新しいトレンドやスタイルが伝わってくる。人の少なくなった歩道を今夜は本の続きを読んで、黒ラベルで嬉しい1日のフィニッシュを予感させる散歩である。
鈴木瑠美子

- 株式会社サンデザインアトリの代表として、主にマーケティングと小売業界の企画立案、コンサルティング事業を行って39年。中でも小売業界にとって、重大な変化と革新をもたらしたVMD「ビジュアルマーケティングダイジング)はそのパイオニアである。6年前から日本人の日常のなかにある生活文化を未来に活かすため活動を始め、現在、門前仲町の日本家屋を拠点に株式会社和塾にて活動中。











