

大人とは、いつも好奇心いっぱいで、なんでも好きなことに取り組むことができる人だろう。子どもが想像する大人のように、毎日あくせくと働き、疲れ果てて帰宅し、家ではパジャマでテレビを見ているというのは、単なる一面的な姿でしかない。本当の大人は子どものような人だと思う。自由を楽しみ、遊び、人を喜ばせることができる人。その喜びも、恍惚も、不安も、すべて自分で引き受けられる人ではないだろうか。

こちらが物心つく頃には、もう母が大のビール好きだということに気がついていた。そして、母の期待どおり、ぼくも大のビール好きに育っていった。うちではいつもサッポロの黒ラベルに決まっていた。彼女は料理がキライだったので、それはぼくにとってはまさにおふくろの味だった。二人で飲むと際限がなかった。数年前に母がこの世を去っても、毎晩黒ラベルを飲む習慣だけはいまも続いている。大人は追憶のなかに生きるのだ。
植島啓司

- 宗教人類学者。1947年東京生まれ。東大大学院(宗教学専攻)博士課程修了。シカゴ大学大学院をへてNYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授など歴任。著書『分裂病者のダンスパーティ』(リブロポート)『聖地の想像力』『偶然のチカラ』『生きるチカラ』(集英社)『心コレクション』(文藝春秋)など多数。

大人とは?という難しい質問に、戸惑いながら、ある本を参考に読んでみた。つまるところ、裏返しの意味で「我慢をしないこと」が大人と主張。また「大人の考え」「大人の都合」「大人の事情」など、大人にはファジーな言葉も多いが、常に共通するのは我慢が漂う。我慢が苦手な僕は大人ではないのか?

我が家の週末のランチは、「お好み焼き」と「サッポロ生ビール黒ラベル」に決まっている。ある雑誌が大阪の茶色い食べ物を特集「メイラードな街」と銘打っていた。「メイラード反応」とは、香ばしさだ。食べ物に含まれるアミノ酸、タンパク質と糖分が反応して褐色物質と香り成分をつくり、それがこってりとしたおいしさを呼ぶ。お好み焼き、たこ焼き、串カツなどが該当する。「サッポロ生ビール黒ラベル」は、このメイラード料理に合うニガみと深さ、コクを持っている。
坂井直樹

- ウォーターデザイン取締役/コンセプター 坂井直樹
1947年、京都市に生まれる。66年、京都市立芸術大学デザイン学科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立し刺青プリントTシャツを売り、大当たりする。73年、帰国後に株式会社ウォータースタジオを設立。87年、日産「Be-1」、89年には同じく「PAO」を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。1988年にはこれまでのカメラの概念を覆すオリンパス「O-Product」を山中俊治と発表、95年、MoMAの企画展に招待出品しその後永久保存となる。2004年デザイン会社、ウォーターデザイン社を設立。2008年4月より慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにて大学院政策・メディア研究科教授。













