サッポロビール株式会社
★SAPPORO
  • よくあるご質問・お問合せ
  • サイトマップ
  • マイページ
  • 会社情報
  • サッポログループ

ホーム > お店とエリア > 北海道エリア(北海道) > 北海道発 おいしい空間 第2弾 vol.2

北海道発 おいしい空間 北海道の4人の人気建築家・空間デザイナーと、飲食店経営者が、共に創り上げた空間で、北海道の食について、それぞれの想いを語り合うトークセッション。北海道の旬な経営者が続々と登場いたします。

第2弾 - 東口圭(ARCHI-K 株式会社)vol.2 Le Musée

第2弾のホスト役は、話題の人気店を次々デザインする若き建築家、archi-kの東口圭氏。第2回目のゲストは、「Le Musée(ル・ミュゼ)」のオーナーシェフ・石井誠氏。同じ歳で、共に海外での修業を経験したおふたりの対談です。

第2弾(全3回)対談ホスト ARCHI-K 株式会社 東口圭氏第2回目ゲスト 株式会社ミュゼ 石井誠氏

委ねることから生まれた美しい料理と空間。美術館という名のレストラン。

東口石井さんとは、私が初めて手がけたお店のオープニングパーティで初めて会ったんですよね。

石井ちょうど僕もお店をやろうと思っていたタイミングで。ミュゼがある今の場所(宮の森)を見てもらったら、最初は圭さん、反対したよね。

東口基礎から新築でつくり直さなければならなくて、予算面でも負担が大きいので、「円山の地下鉄駅そばの物件でも面白いお店ができるのでは?」と提案したけれど、頑なに拒否しましたよね。山でやりたいって。

石井それまで8年間、街中のビルで料理をつくってきて、自分自身、四季折々の北海道の自然を感じながら、毎日料理に向き合いたい気持ちがあったんですよ。ビルのような閉ざされた空間で料理を創作するというのが、自分の中でピンと来なくて。

東口やると決まってからは、石井さんからは細かな動線の指示はあったけれど、ほとんどのことを任せてもらいましたよね。一番お金がかかったのはトイレ。ドイツのメーカーのシンクなど、高級品を使わせてもらった。お客さんにすごく好評だったし、使って良かったと思うんですよ。印象に残るものは、やはりデザイン力のあるもの。それもこれも、任せてもらえたからできたんですけれどね。

石井僕はある程度まで信頼関係ができたら、その先は意見をしないというか。僕も表現者だからわかるんですが、本当にいいものをつくりたいのなら、その道のプロに委ねることが一番だと思うんです。圭さんが提案したもので、その時はしっくり来なくても1年後、2年後にいいなぁと思うことが、これまでの付き合いの中でよくありましたよ。ミュゼのロゴもそうですしね。今ではすごく気に入っています。

ミュゼの2階に設けたシェフズキッチン「イデア」。石井シェフが1日1組のゲストをディナーコースでもてなす特別な空間。メニュー内容はゲストのリクエストを考慮して決める。テーブルのすぐ前にはキッチンがあり、調理過程や説明を楽しみながら、味わうことができる。ディナー1万5000円~

スタッフの活躍の場を求め、空間と事業の拡大を選択。思い切った決断が道を拓く。

東口私は元々料理のことはわからなくて、若い頃はフランス料理を食べる機会もそうそうないですし。仕事の話をする前に、石井さんは「僕の料理を食べてください」と招待してくれて、本当に感動したんですよ。こんなにおいしい料理が世の中にあるのか?!っていうくらい。それから料理に対する見方、むき合い方が変わりましたね。石井さんは会話こそ少ないけれど、料理ですべて表現する。料理のセンスからインスピレーションを受け、最初のお店をデザインしましたね。この料理に応えるお店をつくりたい!という思いでやりました。

石井それをね、わずか5年で全面改装したんですよね(笑)。

東口改装というか、建物の基礎と柱、梁を生かしながら、ほとんど新築に近い状態でつくりましたね。この改装では、「イデア」というシェフズキッチンをつくる、個室をつくる、お客さん同士が合わない動きを考える、スタッフの動線を検討するという、必要な要素を整理整頓した感じですね。

石井思い入れの強い空間だったけれど、前の店の規模では、いいスタッフがいても活躍してもらえるところがなくて。売上が限られると、スタッフが5年10年いても給料を上げられない。レストランウェディングなど、事業規模が拡大していけば、給料も待遇もよくなる。ありがたいことに、辞めずに長くいるスタッフがいるので、もっとボリュームのある仕事をしてもらいたかったんですよね。僕個人としては、もっと料理の精度を上げていきたいと思っていて。弟子が多くなると仕事を任せることが多くなるので、自分ひとりで大事なお客様をもてなす空間がほしかった。

東口改装の話を聞いた時は反対したけれど、やっぱりリニューアルして良かったですね(笑)。飲食店はどうしても労働時間が長くなりがち。海外のレストランでは細かく仕事が分業化されている。働いている人は時間の余裕ができ、もっとひとつひとつの仕事に対してフォーカスできるし、向上できる。

石井世界のトップクラスのレストランでは、サービスの基本が、ひとりのお客様にひとりの給仕という考え方。だからこそのクオリティで料理もサービスも提供できるところがある。日本でもそういうお店はあるんですよね。

労働時間でいえば、サービス業の中ではレストランは比較的時間でくくれない部分があるんですよね。ホテルでもチェックイン、アウトが決まっているし、普通は値段と料金はセットですよ。そこは常々疑問に思っているところ。レストラン業界ってとにかくハードなんですよね。今後、考えていきたい課題ですね。

ミュゼ1階のメインダイニング。フランス語で美術館という意味の「ル・ミュゼ」は、空間のテーマが回廊。美術館を回るような感覚で、空気が回るようにデザインされている。真っ白な壁には絵画が(写真左/中)。2階には個室も用意。こちらではパーティやレストランウエディングも(写真右)


ニューヨークで働いていた東口さん。「向こうでは北海道の知名度はあまりなかったのですが、サッポロビールは有名なので、サッポロの名前は結構知られていましたよ(笑)」

世界をどうとらえるのか。着眼点と発想の転換で新たな価値を生み出す。

石井今、北海道の仕事で六次化商品の相談にのっているんですよ。地域でつくったはいいけれど、売り先がわからない商品に対して、料理人として改善点をアドバイスしたり。そんな中で思うのが、着眼点の大切さ。本来捨てる物とか人が気づかない部分にどう価値をつけるのか。料理も建築もそうだと思うんだよね。我々創造者のセンス如何じゃないですか。誰でも知っている高級食材を高くするのは誰でもできる。いいものを高く売るのも簡単。

例えば、捨ててしまうジャガイモの皮は、実は香りがあっておいしい部分。そういうところに価値を与えるのがクリエイションだと思うんですよ。かかった原価がいくらだから、建築費がいくら、料理がいくらという時代じゃもうないかもしれない。お客さんがいくらの価値を感じるか。つくり手がそこにいかに価値をつけられるのか。

東口アメリカでは檜は買えない。日本では普通に買える。建築資材に対する価値観は、国が違えば大きく違うんですよ。そんな中で、ものをどういう風に扱うか、建築も料理の世界と重なる部分は確かにあると思いますね。私は視野を狭めないことが大切だと思うんです。ニューヨークに住んでいる時、札幌も東京も距離は変わらない。同じ日本ですから。そういう見方ができるかどうかは、外に出ていた人の感覚かもしれないですね。何事も決めつけない。当たり前とは考えない発想の転換も必要だと思うんです。

言葉の壁もあるけれど、その壁を超えると、意外と大したことがなかったり(笑)。いろんな人とコミュニケーションを取れるし、もっと主張できるんですよね。世界は大きいと思ったけれど、そんなことはないんだと思うんですよ。

石井僕は21歳でフランスに行ったけれど、フランスから見るとアジアの国はどこも一緒くたなんですよね。すごいマイノリティ。ひとつの仕事を勝ち取るまで、日本の3倍、4倍がんばらないといけない。日本では当たり前に思っていた権利はそこにはなくて、あくまで勉強させていただいてる身だったから、休みもなければ、非常に厳しい環境でしたね。それを経験したことで、北海道に帰ってきた時の視点は全然違いましたよね。いろんなことに感謝するようになりましたよ。行く前は深く考えていなかった選挙権だったり、保険証があることについてもね。

僕も、世界の壁ってそんなにないなと思いますね。昔はフランス料理において、フランス人は神さまのような存在だった。今は教えを乞う時代から、日本人にしかない独自性で彼らを圧倒するくらいな、対等な立場にいるんだと実感しています。日本人の技術や感性はすばらしいですよ。僕はマイペースに腰を据えて、ここで料理をつくっていきたい。ただ、世界はどうしているのかということだけはしっかり見ていたいと思っています。

同じ歳、独立した時期も同じ頃、さらに海外で働いた経験まで共通する石井さんと東口さん。最初のミュゼをつくる時は、毎日のようにさまざまな話をしたという。東口さんは石井さんが展開するお店を3軒(ミュゼの改装含む)、デザインしている

[今日のおいしい空間] Le Musée

フランス語で美術館を意味する「ル・ミュゼ」。店名通り、食とアートが共存するフレンチレストラン。石井シェフの料理観は、一貫して北海道の土地を表現すること。既成概念にとらわれることなく、信頼する生産者が育んだ北海道の食材を使い、自由で、美しく、創造的な料理を楽しめる。

北海道札幌市中央区宮の森1条14丁目3-20
TEL/011-640-6955(要予約)
営業時間/12:00-15:00、18:00~22:00
定休日/月曜日
http://www.musee-co.com/
ランチ2,500円~(内税)、ディナー10,800円~(内税)。

[店舗設計会社] ARCHI-K

東口圭氏を中心に、店舗・事務所デザイン、住空間デザインを手がける建築デザイン事務所。単に美しいだけではない、使い勝手、使い心地の良さを兼ね備えた機能美を追求。リノベーションのデザイン力にも定評あり。素材の本質に寄り添い、その魅力を引き出した質の高い空間づくりを大切にしています。

http://www.archi-k.com/
TEL/011-530-1618

小西 由稀岩浪 睦